散歩から探検へ~個人・住民・市民

副題を「政治を動かすもの」から「個人・住民・市民」へと変更、地域住民/世界市民として複眼的思考で政治的事象を捉える。

欧州におけるポピュリズムの影響~EU離脱後の国家像の行方

2016年06月29日 | 国際政治
ティパーティ運動からトランプ現象へ向かった米国の政治変動は、改めてポピュリズムの二面性を明るみに出した。それは、元来、政府、大企業などの権力機構に対する民衆の反感・不信感・反抗心を示す政治的反応・行動を指している。

しかし、近年は上から大衆のエネルギーを操作するという特徴をもつ。大衆のエネルギーを自分の権力のために上から利用するという側面が特徴的なのだ。そのレトリックの中心は「敵」を明示する処にある。

『Foreign Affairs Japan Newsletter(2016/6/29)』では「ポピュリズムの台頭」、その影響としての「英国民投票」、その政治状況の中で欧州の盟主的地位に就いた独の変貌に関し、論文を掲載している。それぞれのさわりの部分を紹介する。

『欧州におけるポピュリズムの台頭~主流派政党はなぜ力を失ったか』
2016年7月号 マイケル・ブローニング F・エーベルト財団 国際政策部長

<何がポピュリズムを台頭させているか>
「英独立党」、「仏国民戦線」、「独のための選択肢」など、政権を取っていない右派政党も躍進を遂げている。中道右派と中道左派が共により中道寄りの政策へと立場を見直したために、伝統的な右派勢力と左派勢力を党から離叛させ、いまやポピュリストがこれらの勢力を取り込んでいる。

厄介なのは、欧州が直面する問題はEUの統合と協調を深化させることでしか解決できないにも関わらず、ヨーロッパの有権者たちが今までより多く、ブリュセルに主権を移譲するのを拒絶していることだ。

「コメント」 難民問題は、EUの権限が有権者の生活を直撃する事象と捉えられている。巨大な官僚機構による支配を有権者に感じさせる処が問題だ。

『変貌した独外交~「保護する責任」と「自制する責任」のバランス』
2016年7月号 フランク=ヴァルター・シュタインマイアー 独外相
<変化への適応と自制の間>
独が国際舞台で新たな役割を果たすことを望んだのではなく、世界が大きく変化するなか、安定を保ち続けた独が中心に浮上しただけだ。いまや独は欧州最大の経済国家に見合う国際的責任を果たそうと試みている。

コソボとアフガンへの軍事的関与は「戦争」という言葉が禁句だった国にとって、歴史的な一歩を刻むものだ。独が既定路線を見直したのは、欧州の安定と米国との同盟を真剣に受け止めたからだ。それでも独は過去を踏まえて慎重に考える。

変化に適応しながらも、自制や配慮を重視する信条と外交を重視することに変わりはない。過去を必要以上に償おうとするのではない。むしろ、過去を踏まえて慎重に考える国家として、独は歴史の教訓を現在の課題へのアプローチに生かそうとしている。

「コメント」 慎重な言い方の中にも独が自らの位置を自覚し、責任を果たそうとする姿勢が良くわかる。

『EUの存続と解体を左右する英国の今後~EU離脱の余波を考える』
2016年8月号予定 ジョン・マコーミック インディアナ大学教授
<予期せぬ結末>
6月24日、イギリス市民は国民投票を通じて52%対48%の僅差ながらも、大方の予想を覆してEUからの離脱を選択した。たった一度のパワフルな投票が、欧州P/Jを解体へ向かわせる動きを誘発するかもしれない。

キャメロンが国民投票の実施を求めた意図は、保守党内部での政治抗争を終わらせ、ナショナリスト政党であるイギリス独立党の台頭を抑え込むことにあった。そして国民投票を通じてイギリスとEUの関係をどのように改革していくかを有権者に描かせることもその狙いだった。

その結果は、英国のEU懐疑論者が想定した以上だった。今や英国の有権者の多くが割り切れぬ思いを抱いている。だが、英国の離脱は疑問視もされている。国民投票は政治的助言であり、英国議会の法制化によって、離脱は現実になる。

今回の国民投票が欧州P/Jを解体の動きへ誘発する可能性はある。一方、ブレグジットの政治・経済・社会コストが英国にとって非常に大きく、他国がEUからの離脱を問う国民投票の実施を躊躇する可能性もある。

「コメント」 政党間での意見調整がなされないままに、国民投票をしても、有権者がその将来を思い描くことはできない相談だ。

      
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