以下は、『現代政治学入門(Ⅱ政治意識)』(有斐閣 1965)から要約。政治に関わる人たちが、何を、どう考えているのか、その思考プロセスに迫る方法論を示している。出版された年月から考えれば、この理論は今から50年以上も前のことである。しかし、人間と政治との関係を考えるうえで、色褪せることはない。
簡単に言えば、
人は「関係づけの枠組」(Frame of Rerence)を設定し、情報をその中に取り込んで判断する。
政治状況は基本的にオリジナルなものであり、枠組に入り切らない情報に接すると激しい「不協和」(dissonance)を生ずる。その心理的ストレスから逃れ、論理的一貫性と心理的平衡を保つために、「疑似論理」(pseudo-logic)によって理由付けを行う。
「関係づけの枠組」(Frame of Rerence)
人々が政治事象、特定の政治問題に対してもつ認識・評価・態度を総称して「政治意識」と呼ぶ。「政治意識」は何よりも、不完全情報下で政治的決定を行う際に、外部からの情報を処理する基本的な「関係づけの枠組」(Frame of Rerence)を提供する。
日常生活においても多くの決定に迫られるが、特に政治の世界において著しい。しかし、情報そのものは稀少資源であり、その獲得には金と時間がかかる。従って、判断の基礎になる情報は不十分であるのが常である。
絶えず変動する、不確実な政治状況のなかで、自ら下す決定に責任を負い、選択行動に一貫性と統一性を与え、不確実性に伴うリスクと不安に耐えていくには、複雑な現実界を単純なイメージに短絡し、その固定観念にあてはめて、自己の決定に合理性を与えている。
その基本的な状況判断の推理構造は、次のようである。
「 」内は言語象徴によって表現された「濃縮イメージ」である。
1)認識…現在、状況は「 」の一部である。
2)評価…一般に、私は「 」に賛成である。
3)態度…故に、私の態度は「 」である。
政治状況は個性的、複雑、流動的、不確実であるため、「濃縮イメージ」の固定性と早晩「ズレ」を生じざるを得ない。
「不協和」(dissonance)
「実験心理学」では次の知見が得られている。人間の認知構造の特色は、極めて狭小な枠組内で外部情報を処理し、絶えず論理的一貫性を保持しようとする傾向を内在させている。
そのため、その枠内で処理できない外部情報が投入されると激しい心理的ストレスを生じ、その心理的な「不協和」から逃れ、論理的一貫性と心理的平衡を回復しようとする内的反応を生じる。
これに対して様々な論理的・心理的操作で対応される。
1)その情報を否定する
2)「関係づけの枠組」の改革を最小限度にとどめ、新しい情報を取り組む
これらにより、不協和を相殺する。これには「疑似論理」(pseudo-logic)とも言うべき、サイコ・ロジックが用いられる。
「疑似論理」(pseudo-logic)の例示
1)ステレオタイプ的思考
a.善玉・悪玉論理(二値論理) 局外者を巻き込む拡大主義
AはBが好き BはCを支持 故にAはCの味方
b.陰謀説 失敗、認識の誤りを「実はXの陰謀だった」
2)組織人的思考
機構、組織内で活動する人が外部の状況化に直面し、上から強権によって打開
a.本質顕示的思考 本質は存在に先行する
本然の姿をの顕示を妨げている攪乱要因を除けば、本然の姿が顕れる
3)状況的思考
a.投機的決断主義 やってみなければわからない
固定イメージによる判断の誤りを回避、主体的決断を重視
→結果責任に対するろ倫理のコントロールを欠く
b.日本的、肚による認識
最悪事態に対する心構え→死の予感による純粋状況
4)弁証法的思考 政治の本質は矛盾の克服 毛沢東『矛盾論』
革命集団における目標と状況のズレによる非一貫性を正当化
→極限は二重思考(ジョージ・オーウェル)
簡単に言えば、
人は「関係づけの枠組」(Frame of Rerence)を設定し、情報をその中に取り込んで判断する。
政治状況は基本的にオリジナルなものであり、枠組に入り切らない情報に接すると激しい「不協和」(dissonance)を生ずる。その心理的ストレスから逃れ、論理的一貫性と心理的平衡を保つために、「疑似論理」(pseudo-logic)によって理由付けを行う。
「関係づけの枠組」(Frame of Rerence)
人々が政治事象、特定の政治問題に対してもつ認識・評価・態度を総称して「政治意識」と呼ぶ。「政治意識」は何よりも、不完全情報下で政治的決定を行う際に、外部からの情報を処理する基本的な「関係づけの枠組」(Frame of Rerence)を提供する。
日常生活においても多くの決定に迫られるが、特に政治の世界において著しい。しかし、情報そのものは稀少資源であり、その獲得には金と時間がかかる。従って、判断の基礎になる情報は不十分であるのが常である。
絶えず変動する、不確実な政治状況のなかで、自ら下す決定に責任を負い、選択行動に一貫性と統一性を与え、不確実性に伴うリスクと不安に耐えていくには、複雑な現実界を単純なイメージに短絡し、その固定観念にあてはめて、自己の決定に合理性を与えている。
その基本的な状況判断の推理構造は、次のようである。
「 」内は言語象徴によって表現された「濃縮イメージ」である。
1)認識…現在、状況は「 」の一部である。
2)評価…一般に、私は「 」に賛成である。
3)態度…故に、私の態度は「 」である。
政治状況は個性的、複雑、流動的、不確実であるため、「濃縮イメージ」の固定性と早晩「ズレ」を生じざるを得ない。
「不協和」(dissonance)
「実験心理学」では次の知見が得られている。人間の認知構造の特色は、極めて狭小な枠組内で外部情報を処理し、絶えず論理的一貫性を保持しようとする傾向を内在させている。
そのため、その枠内で処理できない外部情報が投入されると激しい心理的ストレスを生じ、その心理的な「不協和」から逃れ、論理的一貫性と心理的平衡を回復しようとする内的反応を生じる。
これに対して様々な論理的・心理的操作で対応される。
1)その情報を否定する
2)「関係づけの枠組」の改革を最小限度にとどめ、新しい情報を取り組む
これらにより、不協和を相殺する。これには「疑似論理」(pseudo-logic)とも言うべき、サイコ・ロジックが用いられる。
「疑似論理」(pseudo-logic)の例示
1)ステレオタイプ的思考
a.善玉・悪玉論理(二値論理) 局外者を巻き込む拡大主義
AはBが好き BはCを支持 故にAはCの味方
b.陰謀説 失敗、認識の誤りを「実はXの陰謀だった」
2)組織人的思考
機構、組織内で活動する人が外部の状況化に直面し、上から強権によって打開
a.本質顕示的思考 本質は存在に先行する
本然の姿をの顕示を妨げている攪乱要因を除けば、本然の姿が顕れる
3)状況的思考
a.投機的決断主義 やってみなければわからない
固定イメージによる判断の誤りを回避、主体的決断を重視
→結果責任に対するろ倫理のコントロールを欠く
b.日本的、肚による認識
最悪事態に対する心構え→死の予感による純粋状況
4)弁証法的思考 政治の本質は矛盾の克服 毛沢東『矛盾論』
革命集団における目標と状況のズレによる非一貫性を正当化
→極限は二重思考(ジョージ・オーウェル)