相場英雄「共震」小学館文庫2013年刊
「ガラパゴス」で派遣労働者の実態を克明に描き、アベノミクスと称される経済政策、労働政策の現場での状況を捉えた著者の眼は確かだ。この本の舞台は震災復興に苦悩する東北である。
ミステリーの形は取っているが、社会的背景を克明に、丹念に描くという姿勢は、リアリティを増して迫ってくる。もはやフィクションとノンフィクションとの境がわからなくなるほどだ。
松本清張並の社会派ミステリーと呼んでもおかしくないと思う。謎解きはそれほどでもないが、事件構成、警察と新聞記者との関わり方、組織の動き方などの背景描写が優れているので、傑作だと言って良いと思う。
何より、5年を経て徐々に忘れられようとしている、東北大震災の復興現場の状況が見えてくる。お薦めしたい一冊だ。
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