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マハはいいなあ

2016-01-28 01:49:41 | 


原田マハ「翼をください」上下 角川文庫2009年刊

ノンフィクションのようでもあり、フィクションのようでもある。第二次大戦直前、世界初、長距離世界一周飛行を成し遂げた日本チームがいた。国産(三菱重工業製)の飛行機で全て日本人で、民間新聞社の創立記念事業として企画された。当時はまだ飛行機が未発達の時代である。緯度の高い、飛行距離の短い北回りではリンドバークはじめ地球一周飛行はできていたが、赤道をめぐる長距離ではまだ実現していなかった。

他方軍事的には飛行機の重要性が着目されはじめ、その性能向上が欧米列強、日本でも検討され始めていた時代である。このころアメリカの女流飛行家が、世界一周飛行の最終行程で突如行方不明になるという事故があった。この飛行家と日本人世界一周とを結びつけたストーリーは面白い。前に読んだこの著者の「旅屋おかえり」でホロリとさせられたが、今回の物語は綿密に調査がされていて、闇雲な抒情描写ではない。主人公は、この世界一周チームに選抜されたカメラマンであるが、アメリカ人女流飛行家のようでもある。

ここらに絡んで、日本海軍の至宝山本五十六次官や飛行機設計者本庄季郎氏などが彩りとして登場する。

この飛行機の存在は、第二次大戦後駐留軍によって記録から抹消されかかったが、新聞社の社史や、三菱重工業の技術史資料から存在が明らかになったらしい。戦後長らく日本は飛行機の製造は禁止されており、YS11もその影響で市場タイミングを失して売れなかったが、この技術の流れはつい最近のMRJに引き継がれた。

こうしてみると時代背景を映してなかなか興味深い小説である。マハの親しみの湧く距離感がとても良い具合な小説である。

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