ひたすら回る
トルコの伝統的な踊りで、ベリーダンスと並び有名なSEMAを見に行った。
SEMAは白いフレアースカートと、帽子が特徴的な舞踏だ。よくある民族舞踊の一
種だろうと、あまり期待はせずに郊外の会場につく。会場は100人くらいの観客
席に囲まれた舞台が真ん中にある。15人ほどのフランス人の一団がカメラのフ
ラッシュを焚き、談笑をしている。少々賑やかであった。
入り口のカーテンが閉まり、照明が暗くなり、黒衣の6人のイスラム僧侶と5人の
伴奏者が入場。暗い内10分ほどイスラムの祈り(呪文のように聞こえた)が唱
えられ、たて笛(尺八のような音)が演奏された後、6人の僧はひざまづき、床に頭をす
りつける。立ち上がり舞台上を3周。主宰者を除き、5人は黒衣を脱ぎ捨て、号令
のもと回転を始める。ひたすら回る。年配者に混じって、一人十代と思われる若
者がいる。足取りはしっかりしている。右手の掌は上に向け、左手は下に向けて
ひたすら回る。天の恵みを右手で受け、左手で地上に施す意だそうだ。皆恍惚の
表情で回る。回る回るひたすら回る。間に中断して五回ほどに分けてまわった。
同じように見えるが、5回それぞれに意味があるのだそうだ。
回転は太陽系、地球自身、電子、陽子、と同じである。この世のあらゆるものは回転している。意識しようとしまいと。セマーも回転し宇宙と同一化を図る。頭上の帽子は墓石を、白衣は死体を包む白い布を表し、腕を従事に組み数字の1を表し、アッラーの唯一性を現す。セマーゼン(旋舞者)は太陽系の地球のごとく、自身回転しながら舞台上を何周かする。聖メブラーナの考えによれば、①人間が真理に目覚め偉大な創造の神の奴隷であることを認める。②人間が創造された時の秩序と偉大さを目撃し神の力に心を撃たれる③人間が知性を愛のために犠牲にする。神との一体化、神の奴隷となる。④人間が運命を認め、創造された時の任務に戻る。この段階ではセマーゼン長も参加する。⑤コーランの「神の顔はどこにでもある」という章を朗読し、すべての人の魂の平安、自国の無事の為の祈り。以上の五段階でセマーは構成されている。
会場
ここで、SEMAが演ぜられる
伴奏は笛2管、卓上琴、マンドリン風の弦、マリンバ。歌も唄われる。全体は約
40分間で終了。よく目が回らないものだと思う。神秘的、厳かな雰囲気で、陽
気なフランス人たちも、音一つ立てず、静かに味わっていた。これは民族舞踊と
いうより、宗教儀式、或いは神前で奉納する巫女さんの舞の趣であった。
全員が退場してから再び2名が戻ってきて、照明も明るくして、「写真をどうぞ」
と踊ってみせた。今までの厳かな雰囲気が少し和んだ。
これは観光の一種ではなく、伊勢神宮参拝のようなものだ。
ひたすら神に祈るイスラムの教えの一端を味わえたような気分になった。
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