地中海クルーズの船が、イタリア西海岸で座礁したというニュースが、駆け巡ってている。出港後3時間で、事故を起こした。どうも船長の不可解なパフォーマンスが遠因らしいが、事故処理もお粗末のようだ。映画「タイタニック」で沈みゆく船の上で、楽団員とともに船と運命を共にする、男らしい船長の最後とは似ても似つかぬ、言い訳に走るこの船の船長は、情けない。
昨年の夏、30年ぶりくらいになろうか、私もクルーズをした。ギリシャのエーゲ海クルーズ(4泊5日)だ。大きな船(ルイスマジェスタ号)で3000人は乗ろうかという豪華客船だ。バーもカジノも、劇場も、プールもショッピングエリアも、エステも付いている。
救命胴着着脱訓練
こんな巨大船なのに、クラス分けが厳格でなく、3つあるレストランはどれも一般客利用可で一、二等の区別がない。この船では出港後すぐ救命胴着の着脱訓練を甲板で行った。船室でグズグズしていたら、はやく参加しろと再三の要請があった。これだけはかなりきっちりやっていた。
アテネのピレウス港で乗船したが、ホテルからのタクシーの運転手に船名を告げたら船の前に横付けしてくれた。港にはたくさんの船が泊まっており、もし自分で探せとなったらかなりウロウロするだろうと思う。
昼間からビール
失敗談。乗船手続きをする行列に並んでいたら、フリードリンクサービスの申し込みの勧誘がきた。すべてのレストラン、バーでの飲み物が24時間、飲み放題だという。5日間で一万円くらいだったので、一日2000円、これは良い。これくらいは軽く越すだろうと、早速申し込んだ。これで乗船中は財布を気にせず、飲み放題だ、楽勝と張り切って申し込んだ。
ところが乗船2日目中間明細を見て驚いた。二日間でやっと2000円位で、半分にも行っていない。こまめに飲んだとは思うが、ビールやワインではとても元は取れない。鯨飲するくらいの人でないととても無理である。明細の単価を見てすぐ戦意喪失した。
ジャグジーとプール
寄港地に接岸
荷物運びと足の不自由な人などを乗せる車
しかし船旅は快適である。快いエンジンの振動音、青い海、潮風、照りつける太陽、冷たいビール、楽団の音楽、デッキでの読書、昼寝、ここにはすべてリラックスの条件が揃っていた。
ミコノス島の小さな教会:ギリシャ正教はこういう小さな教会が多い
クサダシ(エフェソス)の港
寄港地はミコノス島、クサダシ、パトモス島、ロドス島、クレタ島、サントリーニ島、とそれぞれ特徴はあったが、知人から予め借りて読んでいた塩野七生の「ロドス島攻防記」のイメージが重なり、ロドス島が興味深かった。アントニオになった気分で、司令官宅跡を歩くと、当時のままの城壁が迎えてくれるようで、気分がいい。病院跡でも,往時の戦士の治療を思い、入り込んだ回廊をめぐった。
病院跡 廊下部分
町にあるさかな市場
この島の料理がうまいと聞いていたので、街角のレストランのイスに腰をかけ、頼んでみた。量が多い。足下に猫が来る。二匹も。この分も入っているのだろうか。でも美味しかったので、満腹になったけど、とうとう猫まで魚は回らなかった。
旅は非日常を味わうのが目的だと言われるが、日頃と違う景色、日頃と違う人間関係、日頃と違う風土、料理、など、船旅は慌ただしくなく、これらが味わえる。
ツアーで参加している団体客の一組の夫婦、一人旅をしている広島の未亡人等と話しを交わせた。
(この人たちとは、年末名古屋で同窓会を催した。)
街中の雑踏、屋台
ざくろジュースで一休み
しかし「ロドス島攻防記」で感じたのだが、旅のもう一つの欲求は、新しいものに出会うというだけでなく、頭に描いたイメージをなぞってみたい、というのもあるのではないか。昔、映画館から出てくる時に、主人公になりきって肩で風を切っていたが、頭の中は、映画のシーンが踊っていた。絵葉書やガイドブックで見た景色を目の前で確認する、紹介された料理を味わってみる、というのも旅の楽しみ方なのだろう。
役者を3日やったらやめられない、と言われるが、イメージの世界に生きるある種の快感、素晴らしい小説に没頭するのと同じような感覚ではなかろうか。
サントリーニ島
ロバタクシー 坂道を必死に登る
とにあれ私のエーゲ海クルーズは、事故もなく無事終了し、ピレウス港に帰着し、イタリアのような、悲惨な非日常経験はしなかった。
5日目は早朝から下船準備に追われ、ほとんど船旅の気分は味わえなかった。
最後に自分の荷物を受け取り、下船終了
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