遅いことは猫でもやる

まずは昔メールした内容をひっぱってきて練習...
更新は猫以下の頻度です。

お知らせ

Twitter で更新情報が観られます。やってる方はこちらからフォローどうぞ。
http://twitter.com/gaiki_jp

さすが!直木賞作品

2017-09-01 07:50:58 | 


浅井まかて「恋歌」講談社文庫

2014年の直木賞の受賞作である。幕末から明治にかけて名を馳せた歌人中島歌子の恋を描いた作品だが、この作家の描写力は中々のものである。

単なる恋物語だけではなく、武家一族の行動形態、歴史物としても読み応えがある。舞台は江戸から水戸へ移るが商家から武家へと変わった環境の違い、性格の違いが見事に描かれている。また幕末の水戸藩の内紛が無理なく取り上げられ、この物語の説得力を増す。

幕末、激動のこの時代に学問を奨励していた水戸藩から名を残す人材がでなかったのは、この内紛があったからなのか、と納得できる。

中島歌子は樋口一葉の師として有名だが、本作品はもうひとりの弟子三宅花圃が師の身辺を整理する中で、師の来し方を知る、と言うかたちでストーリーが展開する。この構成力もなかなかのものである。直木賞の中でもレベルの高いものではあるまいか。

「まかて」という不思議な名前とともにこの作品は後々まで残る気がする。