風月庵だより

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老老介護記 レビー小体型認知症

2019-03-22 20:52:42 | Weblog

3月22日(金)晴れ【老老介護記 レビー小体型認知症】

昨日のお中日は、多くの方々が、お参りに見えて、お墓は花でいっぱいになりました。
今日は、あまり来客はなさそうですから、昨年分筆した境内に関しての書類を、市役所に提出に行ってきました。住職というお役は、実に事務的な仕事が多く、法務局に出向くことも多いです。住職になるまでは、分筆やら地目やらの言葉さえ知らずに過ごしてきましたので、まことに「住職という職業」、と自覚いたします。

さて、夕方は、母のところに面会に行ってきました。2日前はお寺に帰っていましたが、お中日は忙しいですから、また施設にお世話になっています。

母の幻聴は、時々前からもありました。よく聞こえる歌の一つは「大黒様は誰だろう/国をつくりて/世の人を/助けたまいし/神様よ」という歌詞です。それから「青葉茂れるさくらいの……」という楠木正成の歌等等ですが、いつも聞こえるので、この音楽をとめてもらえないか、と言ってはいました。
この現象について、歳をとるとそんなものか、と私は安直に思っていました。そのうち、夜中に5人位の男たちが来て、タバコを吸っていくので困る、と言うようなことを、言うようになりました。あきらかな幻覚なので、困ったと思いましたが、どうしてよいかわからないので、観音様が描かれた色紙をベッドの近くに置いたり、お守りのようなものを置いたりしてみました。

そんなある日、施設に会いに行きましたら、「天皇陛下と皇后陛下がお見えになったのだよ」と母は、とても興奮した様子で、言うではありませんか。「そんなことないでしょう」と、私は即座に打ち消しました。
「本当なんだよ。本物だよ。」「まさか」と私。「おしのびで来てくれたんだよ」とまで言うのです。

実は、即位30周年の式典があり、テレビ中継があったようで、それを見て、現実とテレビの映像が混じってしまったのです。ここで私は、はじめて、インターネットで、「幻覚と幻聴」と入れて、調べる気になりました。

初めて「レビー小体型認知症」という症例を知りました。「アルツハイマー型認知症」と違って、記憶はしっかりとしているということです。「アルツハイマー型」の人の場合は、娘が面会に行っても「どなたですか。私のお母さんですか」というようになってしまうそうですが、母の場合は、記憶はしっかりとしています。

まだ治療法がわからないようですが、アルツハイマー型の薬でも、進行を遅らせることはできるようなことが書かれた情報もありました。それで、認知症を扱っている病院に見てもらおうか、どうしようかと思いましたが、その薬の副作用をみますと、「幻覚作用」と書かれていました。結局、病院で診てもらっても治らないと思い、このまま見守るしかない、と、諦めました。

しかし、この一週間ほど、幻覚のことも、年中聞こえていたという歌のことも、一切言いませんので、幻聴も聞こえなくなったのかもしれません。もしくは波があるのでしょうか。
レビー小体というある一種のたんぱく質ができて、それが脳の中に入り込んで、脳の機能を狂わせるようなことが書いてありましたが、小休止なのでしょうか。

とにかく様子を見守るしかない、と思います。今日は、施設のテレビを一緒に見ていましたら、本木雅弘さんがインタビューに応じている画面でした。すると、思いがけず「この人は、樹木希林の娘と結婚している人だよ」と、私に教えてくれました。なんと、なかなか記憶はしっかりしているようです。天皇陛下の時とは違い、会いに来た、と言われなかったし、よかったです。

なんといっても102歳です。仕事でも持っていれば別ですが、料理もせず、掃除もせず、なにもしていなくては、いろいろな機能が衰えるのはやむを得ないと思いますが、退屈、という感覚はなさそうですので、救われています。「起きているより、眠っていた方が楽」と言って、時を過ごしています。私が、面会に行くと「早く帰って寝な。寝なければ体をこわすよ。」と心配しています。時々、お寺に帰ってきますが、やはり自分のベッドが一番よいのではないでしょうか。しかし、毎晩、7回から10回くらい、起きなくてはならず、昼間は目いっぱい忙しいので、まことに申し訳ないのですが、施設に預かっていただかなくては、共倒れになってしまいます。

老いて、生きることは、なかなか本人も大変でしょう。老いた私自身も大変です。兄も風邪でダウンしていますので、面会には行ってもらえません。老老介護も、いつも問題に対処しつつ、なんとか、乗り越えています。老老介護で苦しんでいる皆さんも、どうか、お体お大切になさってくださいますように。

(102歳)

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