mukan's blog

つれづれなるままに ひぐらしPCにむかいて

終えてみれば簡単なこと

2024-06-05 08:19:58 | 日記
 小部屋のスウィッチが壊れた。といっても、スウィッチのカバーが取れただけで、カバーの下の剥き出しになった「ON/OFF」の部分が壊れたわけではないから、灯りを点ける機能には障りがない。とは言え、カバーのないそれは、毎回目で見て押してやらねばならないし、壁に埋め込んだ配線が目に見える。内臓が見えているようで、感じが悪い。
 でもどうすればいいのだろう。業者に依頼すると、これだけで「出張費」一万円ほどを取られる。ケチだなあと自分の性分が思い浮かんだ。でもこんなの自分で直せるに違いない、とも思った。
 そうだ、DIYで聞いていようと思い当たったのは、何日も経ってから。ちょうどというか、もうひとつ、廊下のスウィッチカバーも、壊れた。小部屋よりはよく使う。何しろ築35年ほどになる。ぼちぼち家自体が老化しているのだ。私の身体と同じだね。
 DIYの「リフォーム」商品売り場に行くと、「電化製品」へいけという。
 あとで考えると、開店してすぐということが幸いしたと思う。客が少ないし、店員は商品棚を調えるのに姿を現している。一人の女性スタッフに、取れたカバーを見せて、どうすればいいかを訊ねる。すぐ部品を置いてある箇処に行き、壊れたカバーの裏側を拡大鏡でみて、品を選んでいる。
 我が家のスウィッチは東芝製品。もうこの部品はつくっていない。もし取り替えるなら、パナソニック製品ならあるが・・・、といくつもサイズの型式の違う棚の前で説明する。
 もちろん、それで構わない。壁に取り付ける金属製の下枠。それに被せるプラスティック製のカバーと外枠。ばらすと4つになる部品を二揃い買い求めて帰った。一揃い520円(消費税込み)。スタッフは
「もし開封していなければ返品できますから、レシートを持ってきて下さい」
 と丁寧につけ加えた。
 4つの部品に分かれるとわかっただけで、古いスウィッチを取り外す仕掛けがわかる。先ず金属製の下枠があうかどうか。壁の奥にあるネジの受け口の位置と下枠に開けてある穴の位置があうかどうかを確かめる。ピタリだ。日本工業規格というのだろうか、何処の社の製品でもこれが統一されているなら、融通が利く。たぶんスタッフが拡大鏡で調べていたのは、このサイズだろうと思う。
 なるほど、なるほどと思いながら、プラスティックの外枠とカバーを取り付けようとするが、壁に埋め込まれた「ON/OFF」の本体部分を何処に固定していいのかワカラナイ。そうか、東芝製とパナソニック製では、そこも違うに相違ない。棚にもう一つ並んでいた、アレが要るのだと気づいた。
 翌日それを求めに、ふたたびDIYに足を運んだ。やはり朝一番。今度は男のスタッフがいて、やはり同じ棚に案内してくれる。
「これですがね。でも自分でやるんですか?」
 と、心配顔。
「電気工事士の資格をもってないといけないんでしょ」
 と言いつつ、昨日買い求めた下枠も見せる。
「そうです。おすすめはしません」
 といい、下枠を見て、
「えっ、これ、もう買ってるんですか」
 と驚いた声を上げ、たぶん、これを買い求めている人なら、心配はないと思ったのではないだろうか。つまり、昨日品揃えしてくれたスタッフの知恵知識が、私のもののように受けとられ、今日のスタッフの懸念を取り払ったように感じた。
 買い求めた品を持って帰り、先ず台所にある配電盤の小部屋に通じる元スウィッチをOFFにする。これも、いくつもあるスウィッチのひとつひとつに、「和室1」とか「洋室1」という表示が付いている。そういうことを意識したのも、はじめてではなかったか。
 そうして、取り替えに取りかかる。すでに設えていた下枠を外し、「ON/OFF」スウィッチへの配線を外す。私は昔ながらに、電線の先っぽをクルクルと巻いてネジ止めするように考えていたが、全く違った。突き刺してある電線を抜く。これが、なかなかしっかりと食いついて離れない。あっ、これは力じゃない。部屋が暗くなっているから、ヘッドランプをもってきて、頭に付ける。差し込み口の脇に赤い色の凸部がある。これかなと、十字ドライバーの前で押さえて線を引くと軽く取れた。太くしっかりした電線の先っぽがみえる。うまくしてあるじゃないか。なるほど、こういう仕掛けなんだと、ひとつ発見したような気分。
 二本を外し、二本を付ける。その「ON/OFF」スウィッチの凸部と、下枠の金具に開けられた穴とを見て、合わせて差し込む。これには軽く力が必要であったが、巧く収まったから、私の想定が合っていたと思う。
 その後に下枠の本体を壁にネジ止めして固定し、その後にスウィッチカバーを「ON/OFF」スウィッチの端にある凸部・凹部と、カバーの、それと対応する部分とを差し込む。その上で、スウィッチカバーを蔽うようにプラスティックの外カバー枠を取り付け、下枠に固定する。最後に外枠全体のカバーを、軽く押さえると、パチンと収まって完了した。
 それと同じ手順と要領で、廊下のスウィッチも取り替えたところへ、買い物に行っていたカミサンが帰ってきた。へえ、いいじゃないと言い、
「いくらかかった?」
 と訊ねる。
 レシートを計算する。2つで1460円(税込み)だから、1つ730円か。いいじゃない、と私もうれしい。
 でも私がうれしいのは、安く上がったからではない。はて、何処へ頼めば修繕できるだろうと、皆目闇の中であった直し方が、自分で直すというよりも、仕組みを解いて一つひとつ了解して、なんだか設計製造職人の知恵知識を辿り返して、それぞれの工程に秘められた合理性を、ワタシの合理性と付き合わせて、腑に落としたという、今回修繕の全行程が「わが身のコトになった」感触が、うれしいのだと思っていた。
 近代の、他人(ひと)に預けていた、人類史的知恵が我がものとして意識された悦びってところかな。終えてみれば簡単なこと。我が無意識(の合理性)と社会的合理性とが符節を合わせたってことか。久々の、自己肯定感が人類史とマッチした。

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