mukan's blog

つれづれなるままに ひぐらしPCにむかいて

哀しい戦争

2016-09-20 19:20:33 | 日記
 
 ザザ・ウルシャゼ監督の映画『みかんの丘』(エストニア・グルジア合作、2013年)を観た。グルジアの西部、アブハジアの紛争地が舞台。アブハジアはグルジアの一地方だが、南オセチアやアジャリアとともに、「退避してください」という勧告が、日本の外務省から出されている。独立をめぐってグルジアとロシアが争っている。
 
 そのアブハジアのみかん栽培をしている二人のエストニア人のところに、敵対する二人の男が救助され、看護を受ける。そのけが人二人の敵対関係と索敵にやってくるロシア軍とグルジア軍の部隊とのやりとりとその間に浮かび上がる「戦争」と「愛国」、「憎しみ」と「敵対」。それらが「死」と「生」の拮抗を引き寄せて向き合う人たちの間で変わりはじめる「かんけい」を描きとっている。
 
 エストニアに家族は還ってしまっている二人の年寄りが、「なぜエストニアに還らないんだ」と敵対する負傷兵に問われる。みかん畑をもつ一人が答える応え方には、人が自然に手を入れる根源が垣間見える。またもう一人が応える答えには、人がその心の中に育む土地への愛憎が込められている。それに触発されて、2人の負傷兵の心もちがわかりはじめる。坦々と、かつ、見事な描きとりだと感心した。
 
 そうしてとどのつまり、戦争は哀しいという思いに行き着く。これには、攻めるも守るも、戦争の正義を口にする人たちには、必ず通過してもらいたい原点とも言える情景である。私たち庶民は、みかんの丘を、ただただ手入れしつづけるしかない。私たち年寄りは覚悟をすることができる。でも若い人たちはどうするであろう。そう考えている自分が、また、哀しい。