mukan's blog

つれづれなるままに ひぐらしPCにむかいて

ルーズベルト・ゲーム

2015-11-16 07:50:48 | 日記

 昨日のワールド・ベースボール・クラシックの日本×ベネズエラ戦はまさにルーズベルト・ゲームであった。

 

 ベネズエラが初回に先行する。その裏、日本が同点に追いつく。ベネズエラは2点を追加して引き離す。日本は1点を加えて迫るが、ついに8回まで追いつけない。そして8回裏、満塁策を取ったベネズエラに中田が2塁打をうって逆転、1点先行する。9回表をしのげば日本の勝利となる場面で、楽天の松井裕が登場する。アナウンサーは盛んに「抑えの切り札、10代で最高のセーブ」と「期待」をむき出しにして祈るような言葉を重ねる。ところが追い込んでは打たれ、満塁にしてしまう。そうして適時打、2点を入れられ「5×4」、逆転されてしまった。9回裏のベネズエラの抑えの投手は、手元に食い込むものすごいスピードボールを投げる。これで終わりかと思ったら、連打で1アウト2,3塁。やはり満塁策をとる。そこでよもやの暴投で、3塁走者が還って同点。ふたたび満塁策。そして8回裏の攻撃のときにピンチ・ランナーとして交代した中村晃(ソフトバンク)が打席に立つ。その後ろには、8回に逆転打を打った中田が待っている。追い込まれはするが、3ボール2ストライクに持ち込む。ベネズエラの外野手も内野の守りに着くように、前に押し出して来る。中村の打った球はその狭い隙間を抜けて飛んで、みごとに再逆転のサヨナラとなった。

 

 こういう1点差を繰り返し行うシーソーゲームを「ルーズベルト・ゲーム」と呼ぶということを、池井戸潤の同名の小説で知った。力が拮抗しているチーム同士のゲームのときに見られる、という。確かに、ベネズエラの最後に登場した投手は、「満塁策」をとった場面で四球を出すわけにいかない。つい力が入りすぎて暴投になって同点にされたとみえる。ふたたびの満塁策のときには、中村の選球眼も冴えていたのであろう。そうして最後の一球は、きわどい球で押し出しとなるよりは打てるものなら打ってみよと思ったかどうかは知らないが、真ん中の速いストライク。バットを短く持った中村がみごとにはじき返して、幸運にも守りの間を抜けた。

 

 ルーズベルト・ゲームを見る目というのは、敵も味方もない、腕の競い合いと運を味方につける技の見事さに注がれる。「舞台」の全体を丸ごと楽しむ楽しみ方がいつしか身に備わる。観ている側も鍛えられるのである。ほかのグループのゲーム進行も同時に報道されるからわかるのだが、プエリトルコ×台湾戦もキューバ×イタリア戦もいずれも最終回に加点してゲームが決まっている。日本10×2アメリカ戦のような大味な試合と違う。アメリカは手を抜いているというか、メジャーに登る手前のマイナーの選手たちで構成されているというから、こんなゲームになるのだろうかと思ってしまう。