mukan's blog

つれづれなるままに ひぐらしPCにむかいて

モンゴルの陽が上る

2015-11-05 19:45:02 | 日記

 今日の午前中、浦和で開かれた「モンゴル文化交流会」に出席して、モンゴルの動物と鳥の話を聞いてきた。講師は、TUM-ECOTOURの主宰者・トウメンさん。モンゴルの南ゴビ地方に住む50歳くらいの男性。TUM-ECOTOURというのは彼が2000年に立ち上げた、モンゴルの鳥と動物をみて歩くネイチャーガイドの会社。11月に手賀沼で毎年開かれるJBFジャパン・バード・フェスティバルに参加する機会に、埼玉野鳥の会の旧知の面々に頼まれてモンゴルの鳥と動物の紹介をする催しに顔を出したというわけ。

 

 トウメンさんとこの会社のツアーガイドをしているゴビ地方在住の日本人ネイチャーガイドのSさんと、その両者の奥さんの4人がモンゴルから来日した。トウメンさんが話をし、アラサーのSさんが通訳をする。とはいえ話しぶりからSさんもモンゴルの鳥や動物に通暁している様子がうかがわれる。雇用者と被雇用者というよりも、同じチームのメンバーという風情。

 

 「モンゴル国スペシャルガイド」という在日モンゴル大使館発行のパンフレットとトウメンさんの会社の案内パンフレット「EXPERIENCE OUR BIRD & MAMMAL WATCHING TOURS」の、写真満載の2冊を配ってくれている。話はその2冊のパンフレットの内容をパワーポイントで映写しながら、トウメンさんが進め、Sさんが通訳する。モンゴルという国を大きく4分割して、それぞれの地域的特徴と動物・植物・鳥の紹介は、細部にわたって知悉していることをうかがわせて、面白い。

 

 さいたま野鳥の会の人たちがここ6年くらいモンゴルへの鳥観の旅をしていて、トウメンさんと顔見知りである。そのせいもあって話しは概念的ではなく、個別の情況を組み込んで、なかなか興味深い。オーストラリアへ行ったばかりであるのに、モンゴルも行ってみたいと思う。鳥観だけではないのだ。やはりその土地の暮らしを見てくるという雰囲気を湛えている。ツアーを企画するトウメンさんもそれを意識して組み立てているのかもしれない。

 

 最後に設けられた質疑応答にもいくつもの質問が出る。一度行ったことのある人が、「私はスズメかなと思ったがまっ黒なのがいた。トウメンさんに聞いたらクロスズメだと言ったが、あれはどういう名の鳥なのか」と問う。トウメンさんは「あれは煙突から出てきてまっ黒になっていた。ジョークですよ」と答えて大笑い。近代化の急激に進む都市部には煤煙で黒くなった雀が多いともいう。

 

 あるいはまた、「モンゴルは高層建築がどんどんできて、インフラの方が後を追っかけているように見える。どうなのか」という問い。トウメンさんは「まだ発展途上国。確かにおっしゃる通りの状況ですから、(滅多にないが、もし大きな)地震でもあったら、ゲルに住んでいる人たちが安全ということにもなる」と、いかにも途上国の苦衷を語るような場面もあった。

 

 他方で、遊牧移動生活をするモンゴルの人たちは、自分の住居であるゲルを誰でも(必要な人たちが)使えるように開けておき、いくらかの食糧も残しておくという伝統があるそうだ。それが果たして、今後どうなるか、聞いていて私は、心配になるが、「近代化」に向き合ってこれからのモンゴルがどう変わっていくか、大変興味を魅かれた。

 

 トウメンさんの会社には12人のネイチャーガイドが顔写真付きでパンフレットに紹介されている。アメリカ担当、欧州担当、オーストラリア担当、日本担当、中国担当等々、世界各地を相手に、鳥と動物を見る好事家相手に売り込みをかける態勢を整えているようだ。12人のうちの4人ほどがトウメンさんの子どもたちというのも、聞いて分かった。海外に留学して仕事のベースをつくってきたことも含めて、近代に突入しつつある「家族経営」的で面白い。これも、ウランバートルではなく、ゴビという地方の(伝統的生活様式の良さを残しているから)保っている特性なのかもしれない。

 

 モンゴルは、私の子どもの頃は「青い狼」などのジンギスカンの物語りでイメージされてきた国である。お尻に同じ蒙古斑をもって生まれるということや、日本語はモンゴル語族だということを教わって、それだけで親密感を抱いて来た。蒙古襲来などが二度もあったのに、なんとか撃退したこともあって、あまり悪い感情を抱いていない。大相撲で活躍するモンゴル勢も好感が持てる。

 

 トウメンさんはゴビ地方の湿地に博物館を立てたいと考えているという。日本の手賀沼の水質改良がどのように行われたかにも学び、山階鳥類研究所の態勢がどのように構成されているかも考察して行きたいと話していた。こういう前向きの「活力」はこれからという途上国の勢いには相応しい。ぜひとも、伝統的なセンスを廃れさせないで、新しい時代を構築していけるように頑張ってほしいと思った。