自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★オイルは暴騰す

2011年03月04日 | ⇒トピック往来
 金沢市内で良く使うガソリンスタンドで3日、レギュラーが店頭価格143円をつけた。今月に入って市内でガソリン1㍑当たり140円台が相場となった。昨年末は120円台だったので、一気に20円も上がったことになる。今回のガソリンの値上がりは分かりやすい。「中東産油国の政情混乱」だ。問題は、これが一時的な現象なのだろうか、さらに値上がりするのではないか、ということだ。

 3月2日のニューヨーク・マーカンタイル取引所では、原油先物相場の国際的な指標の米国産標準油種(WTI)4月渡しの終値が1バレル=102.23ドルと、2年5ヵ月ぶりに100㌦の大台を突破したと報じられた。

 世界の原油産出国はロシア、サウジアラビア、アメリカ、イラン、中国、カナダ、メキシコ、UAE、イラク・クエートの順(外務省資料)になる。さらに、日本の原油輸入先は、サウジアラビア、UAE、カタール、イラン、ロシアの順(資源エネルギー庁)で、中東への依存率は85%だ。今回の反政府デモの動きは、チュニジアからエジプト、そしてリビアに波及している。

 日本はリビアから原油を輸入していないが、問題はサウジアラビアだ。そのサウジは、アブドラ国王が高齢で病気療養中、さらに大卒者の6割が職に就けないという「不満の火種」を内在している。仮に政情混乱がサウジに波及し、中東からの原油供給不安がさらに強まれば、WTIの価格は2008年7月に記録した過去最高値(1バレル=147㌦)を超えるのは確実との見方も出てくる。このときのガソリンの高騰は、アメリカのリーマン・ショックで行き場を失った投機マネーが先物取引市場に向かい原油価格を吊り上げた。当時の店頭価格は金沢市内で180円だったと記憶している。いまのガソリン価格の上昇は序の口なのだろう。

 政情混乱と投機マネー。国際的な金融緩和で投機マネーが先物取引市場に流れ込むという構造は続くだろう。しかも、ガソリン需要は春先から夏場にかけて高まり、価格が上昇する傾向にある。ガソリン価格を下げる要素は何一つない。

 円高(1㌦=80円台)が続く日本でこの価格である。ちなみに、このブログではガソリン価格について何度か取り上げている。それを拾うと、2005年10月31日付「1㍑当たり122円」、2009年1月1日付「1㍑当たり99円」。そしてきょう2011年3月4日付が「1㍑当たり143円」と。

 ガソリン価格は常に乱高下し、世界の政情を映す。その価格が高騰すれば、原油生産シェア世界1位(12.9%)の隣国・ロシアは経済力をつけるという構造に変わりない。

⇒4日(金)朝・金沢の天気  ゆき 
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☆この横着モノ

2011年03月03日 | ⇒トピック往来
 大学入試の公正性がハイテクで損なわれるということは断じてあってはならない。京都大など4大学の入試問題が試験時間中にインターネットの質問掲示板「ヤフー知恵袋」に投稿された事件が世間を騒がせている。警視庁などは、投稿に使われたNTTドコモの携帯電話の契約者を山形県新庄市在住の人物と特定し、その息子(19歳)の強制捜査(逮捕)に踏み切るだろうと、マスメディアは一斉に報じている。

 京都大学側が2月28日に京都府警に被害届を提出し、さらに世間の注目を集めた。おそらく大学側は対応できないと判断したのだろう。京都府警もネットを使った犯罪にはチカラを入れていて、生活安全部のハイテク犯罪対策室が対応を担っている。その罪は、偽計業務妨害罪。つまり、偽計を用いて人の業務を妨害した、というもの。3年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられる。

 ところが、世間の関心は一方で別なところにある。監視員がいる中で、どうやってケイタイを使って投稿できたのか、という技術的な驚きだ。これまで、入試に関しては、集団カンニングや裏口入学、替え玉受験など入試の公正性をめぐる事件があった。今回のように、偽計業務妨害罪という刑法犯の特定にまで至るというケースは初めてだろう。

 過去の替え玉受験問題(1991年の明治大学の入学試験)では、有印私文書偽造など3人が逮捕されているが、これは大人が絡んだ事件だったから逮捕に至ったのだ。今回は世間を騒がせたものの、19歳の悪知恵である。もし、当の本人がゲーム感覚でしたことで、これほど大事(おおごと)なるとは思ってもいなかったと反省しているのであれば、警察が「この横着モノ。世間を騒がせたらいかん」と一喝しておきゅうを据えるだけで済む話ではないか。逮捕して、断罪して、それで世間がすっきりするのだろうか。むしろ、少年の出来心に対して寛容性がなくなった日本社会のあり様が返って問われることになりはしないか。この方がむしろ後味が悪い。

 もちろん、この事件の背後に協力者として大人が絡んでいる、あるいは未成年であっても他との共謀性があれば別の話になる。

⇒3日(木)朝・金沢の天気   ゆき
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