能登半島の風光明媚は、リアス式海岸と呼ばれる、谷が沈降してできた入り江が見所となっている。ところによっては、別名で溺れ谷(おぼれだに、 drowned valley)ともいうそうだ。
リアス式海岸の伝説
海と谷が複雑に入り組んだリアス式海岸は歴史的な伝説も生んだ。たとえば「義経の舟隠し」という名所が能登半島には3ヵ所もある。鎌倉幕府からの追手を逃れて奥州(東北)に落ちのびる際、天候が荒れ、能登の入り江の奥深くに48隻の舟を隠したとされる。写真・上は、松本清張の推理小説「ゼロの焦点」(1961年映画化)の舞台となった「ヤセの断崖」の近くにある「義経の舟隠し」である。
そうしたリアス式海岸を悪用したのが、北朝鮮による拉致事件だった。1977年9月19日、東京都三鷹市役所で警備員をしていた久米裕さん(当時52歳)は、能登の宇出津海岸から北朝鮮に拉致されてた。久米さんを能登に連れていった在日朝鮮人が、入り江にいた北朝鮮の工作員に引き渡したとされる。複雑に入り組んだリアス式海岸は工作員の絶好の隠れ場所となっていたのだ。
写真・下は、珠洲市内のバスに貼ってあった「拉致・日本は見すてない」のポスター。
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