一国の長が戦地を訪れ外交を展開するという、EUのリアリズムを感じさせるニュースだ。BBCニュースWeb版(16日付)は「Ukraine war: EU leaders back immediate candidate status for Kyiv」の見出しで、ロシア軍がウクライナへの侵攻を強める中、フランスとドイツ、イタリア、ルーマニアの4ヵ国の首脳がウクライナの首都キーウに列車で入り、戦闘が行われた近郊の街を訪れて被害の説明を受け、その後、ゼレンスキー大統領と会談したとの記事を掲載している。
この訪問で、フランスのマクロン大統領は、EUはウクライナがロシアに勝利するまで支持すると強調。ドイツのショルツ首相は「ウクライナはヨーロッパの家族に属している」と述べた。ゼレンスキー大統領はEUの団結を訴えた。「Ukrainian President Volodymyr Zelensky described Russia's continuing aggression as a war "against the united Europe", adding that the "most effective weapon" was unity.」
今回の訪問は、EUがウクライナにEU候補の地位を与えるかどうかについて勧告を行う1日前に行われた。その後、今月23日と24日のEU27ヵ国の首脳会議で加盟について議論する。さらに、G7サミットとNATO首脳会議など国際会議が立て続けに開かれる。EUを主導する3ヵ国の首脳がそろってウクライナを訪問することで、EUとして結束して支援する姿勢を示す狙いがあったのだろう。現場を見て交渉するリアルな外交だ。
岸田総理も先月23日の日米首脳会談で、来年日本で開催されるG7サミットを広島市で開催することの同意をバイデン氏から取り付けたと語った。「唯一の戦争被爆国である日本の総理大臣として、私は広島ほど平和へのコミットメントを示すのにふさわしい場所はないと考えている」(共同記者会見)と語った。これも実にリアルな外交だ。
岸田氏は今月下旬にドイツで開かれるG7サミットに出席し、その後、スペインで開かれるNATOの首脳会議に日本の総理として初めて出席する。この際、仏独伊首脳と価値観を共有するためにもウクライナを事前に訪れてはどうか。岸田総理にとって、ヒロシマとウクライナは平和へのコミットメントに欠かせないものになるだろう。
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