自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★「失われゆくモノ」に見出す新たな芸術価値

2021年08月16日 | ⇒トピック往来

   あと3週間で「奥能登国際芸術祭2020+」(9月4日-10月24日)が石川県珠洲市で開幕する。16の国と地域から53組の芸術家たちが参加する。ローカルメディアによると、現場ではすでにアーティスト・イン・レジデンスによる作品づくりが市民も巻き込んで盛り上がっている。

   自身も開幕の日から現地に赴き芸術の秋を堪能することにしている。楽しみにしているのは「大蔵ざらえプロジェクト」。能登半島の先端に位置する珠洲市は古来より陸や海の交易が盛んだった。珠洲にもたらされた当時の貴重な文物は、時代とともに使われる機会が減り、多くが家の蔵に保管されたままになり忘れ去れたものも数多くある。市民の協力を得て蔵ざらえした文物をアーティストと専門家が関わり、博物館と劇場が一体化した劇場型民俗博物館「スズ・シアター・ミュージアム」が新たに開設される。芸術祭の総合ディレクター、北川フラム氏のアイデアで、「失われゆくモノから新たな社会共通資本をつくろう」と新たなアートの可能性を創造する。

          大蔵ざらえで回収された文物は日用品のほか、農具や漁具、膳や椀、キリコ灯籠、屏風や掛け軸など、まさに行き場のなくなったモノが美術や民俗、人類学、歴史学などに分類される。さらに、アーティストたちの手が施されることによって、現在から数百年余り昔への時間の旅、そして海を越えてつながる各地の風景を感じさせる旅へと誘ってくれること楽しみにしている。「スズ・シアター・ミュージアム」そのものも廃校となった小学校を活用している。

   ただ心配しているのは、このところ続いている地震だ。14日午後10時38分ごろ、能登半島の先端東側を震源とするマグニチュード4.1の地震が発生し、珠洲市で震度3の揺れを観測している。この地域では7月に地震活動が活発になり、7月11日には最大震度4が観測されている(15日付・ウエザーニュース公式ホームページ)。アーティストが丹精込めて制作した作品群に被害が及ぶのではないかと、芸術祭ファンの一人として気がかりではある。

(※写真は「海揚がりの珠洲焼」。珠洲は室町時代にかけて中世日本を代表する焼き物の産地だった。各地へ船で運ぶ際に船が難破。海底に眠っていた壺やかめが漁船の底引き網に引っ掛かり、幻の古陶が時を超えて揚がってくることがある=「奥能登国際芸術祭2020+」公式ホームページより)

⇒16日(月)午前・金沢の天気     くもり


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