自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★司法の断罪を超える「遺骨の存在」

2021年07月05日 | ⇒ニュース走査

   地下鉄サリン事件から25年が経つものの、「オウム真理教」は過去の話ではない。今でも元教祖、麻原彰晃に帰依している宗教団体の一つが金沢市内にあり、近くの人たちが監視行動を続けている=写真=。何度か近くを通ったことがあるが、麻原の教えがそのまま脈々と伝わっているのかと思うと背筋が寒くなる。あす6日は松本元死刑囚の刑が2018年7月6日に執行されて丸3年となる。さらに不気味さを予感させるニュースがきょう報じられた。

   死刑が執行されたオウム真理教の教祖・麻原彰晃こと松本智津夫元死刑囚の遺骨を次女に引き渡すとした決定が確定した。松本元死刑囚の遺骨の引き渡しを巡っては家族の間で争いになり、昨年9月、東京家裁が遺骨と遺髪を次女に引き渡すと決定し、東京高裁もこれを支持した。これに対し、四女側は「松本元死刑囚が執行直前に遺骨などの引き取り先を四女に指名した」と主張していた。四女らは特別抗告していたが、最高裁は今月2日付で退ける決定をした。これにより、松本元死刑囚の遺骨は次女に引き渡すとした決定が確定した(7月5日付・テレビ朝日ニュースWeb版)。

   遺骨をめぐる家族の争いはこれまで何度かニュースになっていた。2018年7月12日付・毎日新聞Web版によると、四女の代理人弁護士は7月11日に司法記者クラブで会見し、元死刑囚の遺骨を受け入れ、太平洋の不特定地点で船から散骨したいとの意向を明らかにしていた。これに対し、2021年3月10日付・朝日新聞Web版によると、東京家裁は、次女は面会を繰り返していて次女側との関係が「最も親和的」と判断し、東京高裁も支持した。今回、司法判断が確定したことについて、次女の代理人弁護士は「父を家族として静かに悼みたいということに尽きる」とした上で「次女はオウム真理教や後継団体とは一切関係がなく、父の遺骨が宗教的、政治的に利用されることを決して望んでいません。この審判でも主張してきました」と述べた(7月5日付・朝日新聞Web版)。

   おそらくこのニュースを喜んでいるのは信者たちだろう。まさに「仏舎利」が出来たようなものだ。信者たちは次女の自宅にある方向に向かって、イニシエーション(修行)を繰り返し、「聖地」化するのではないか。では、どうすれば「聖地」化を防ぐことができるか。裁判での四女の主張はまさにこのことだと想像する。以下の事例を念頭に置いているのではないだろうか。

   ニューヨークの同時多発テロ(2001年9月11日)の首謀者とされたオサマ・ビン・ラディンに対する斬首作戦が2011年5月2日、アメリカ軍特殊部隊によってパキスタンで実行された。アラビア海で待機していた空母カール・ビンソンに遺体は移され、海に水葬された。また、第二次大戦後、極東軍事裁判(東京裁判)で死刑判決を受けた東條英機ら7人のA級戦犯の遺骨はアメリカ軍によって、上空から太平洋に散骨された。

   「最も親和的」とする司法判断はまるで性善説のようだ。「死刑をもって断罪」は法の次元であって、遺骨があれば宗教はそれを超える。不可解な信仰とテロが復活しないことを祈る。

⇒5日(月)夜・金沢の天気      あめ時々くもり       


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