自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆インターネット選挙への布石

2006年01月13日 | ⇒メディア時評
  いよいよ「インターネット選挙」の幕開け近し、である。12日付の朝日新聞の一面トップは、海外に住む日本人に、衆院小選挙区と参院選挙区の選挙でも投票を認める公職選挙法改正案の骨格だった。投票を比例代表選挙に限っていた付則を改め、国内で最後に住民票を置いていた選挙区での投票ができるようにする。総務省は通常国会に改正法案を提出し、来年の2007年夏の参院選からの導入を目指す、という。

 海外邦人の選挙と「インターネット選挙」はどう関わるのか不思議に思う人もいるだろう。ちょっと説明しよう。海外在住の有権者に認められている在外投票は、1998年に比例代表選挙に限って導入され、世界各地にある200の在外公館での投票か、郵便による投票のどちらかを選択できる。小選挙区の投票を総務省が認めてこなかったのは、候補者が政策などの情報を海外の有権者にまで届けるのは困難と判断してきたからだ。

 ところが去年9月、最高裁判所は選挙区選挙の投票を認めていない現行法を違憲と判断した。この「在外選挙権訴訟」の違憲判決では、「通信手段の発達で候補者個人の情報を在外邦人に伝えることが著しく困難とは言えない」と指摘した。つまり、インターネットを使えば海外であろうと情報は届くと判断したのである。

 改正案では、衆参両院の比例代表選挙に限るとした付則を削る。これにより、衆院小選挙区選挙、参院選挙区選挙の投票が可能になる。現行通り、在外公館での投票と郵便投票のどちらかを選択できる。対象となる選挙区は、国内で最後に住んでいた住所地の選挙区。国内に住んだことがない場合は、本籍地のある選挙区、となる。海外在留邦人は96万人で、うち有権者は72万人だ。

 朝日新聞の記事では、公職選挙法改正案のもう一つの骨子であるインターネットの選挙利用の解禁については触れていなかったが、最高裁判決の主旨に沿えば、ネット解禁とのワンセットでなければ意味がない。水面下では、自民党ではインターネットを使った選挙運動のあり方についてかなり先行している。同党広報本部副本部長の世耕弘成氏(参議員)のブログによると、すでにワーキングチームを組織して取り組みの検討段階に入っていて、着々と布石を打っているようだ。

 「在外選挙権訴訟」の違憲判決という外からの圧力のおかげでインターネットの選挙利用が解禁され、選挙そのもののあり方も一変するだろう。選挙があるから、にわかにホームページで政策を訴えるでは、もう手遅れである。ブログなどを通じて、日ごろから有権者とコミュニケーションをはかっている候補者は断然有利だ。コアな支持者がさらにネットを介して支持の輪を広げてくれる。

 普段から支持者を獲得するために小まめにブログを更新する所作や習慣が候補者にとって必要となってくるに違いない。

⇒13日(金)朝・金沢の天気  くもり

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ★「露呈したこと」3題 | トップ | ★イタリア行 »

コメントを投稿

⇒メディア時評」カテゴリの最新記事