自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆食ありて~野点の風景

2008年04月14日 | ⇒トピック往来

 奥能登・珠洲市に古民家レストランと銘打っている店がある。確かに築110年という古民家には土蔵があり、その座敷で土地の郷土料理を味わう。過日訪れると、中庭で野点が催されていて、ご相伴にあずかった。

  花曇(はなぐもり)の天気の中、その野点の光景に見とれてしまった。モクレンの木の下でのお点前。モクレンの花の白さ、毛せんの赤がまぶしいのである。そして抹茶の緑を心ゆくまで堪能した。母親が点て、半東(はんとう)を長男がつとめる。聞けば、一家全員が茶の湯の心得がある。しかも、それぞれ流派が異なる。それでも家族でさりげなく野点ができる。「もてなしの文化」がこの家族にある。

  茶の湯をたしなむ人が心がける言葉に、「茶は常なり」というのがある。茶の湯というものは日常の暮らしからかけはなれたものではなく、まして世間の常識を超えないという心がけだ。だから派手な服装は控え、礼節を重んじ、相和すことを重んじる。そんな凛(りん)とした雰囲気が感じられる野点だった。

  茶の湯の後は、座敷に上がって花見弁当をいただく。メバルの姿焼きがメインデッシュ。焼きたての香ばしさが食欲を誘う。たけのこご飯、海藻(ギバサ)の味噌汁。このギバサはホンダワラ科アカモクのこと。この海藻のぬるぬる成分は、抗がん作用をもつとされるフコイダンという食物繊維。これだけでもなんと贅沢な食事かと思う。

  帰り際、ふと見ると玄関に珠洲焼のレリーフが飾ってあった。この家の主(あるじ)の作品という。テーマは「月の砂漠」。風紋のあしらい、月光に写るキャラバンの姿が印象深い。古民家レストランというよりミュージアム。「入場料」はしめて2000円、満足度は高い。

 ⇒14日(月)朝・金沢の天気   はれ


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