自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★北は「崖っぷち外交」に戻ったのか

2019年05月05日 | ⇒ニュース走査

   北朝鮮はきのう(4日)午前9時6分ごろ、東部の元山(ウォンサン)から東の日本海に向けて飛翔体を発射、70㌔から200㌔飛んで落下した。同時発射ではなく21分間の連続だった。日本の国内メディアによると、アメリカの軍事専門家らは、短距離の弾道ミサイルだとの見方を示した。飛翔体が弾道ミサイルならば、北朝鮮に弾道ミサイル発射を禁じた国連安全保障理事会決議に違反する可能性がある。韓国軍は当初「短距離ミサイル」と発表していたが、その後「短距離の発射体」と表現を改めている。

   メディアの報道を視聴する限り、「北は我慢できなくなったのか」との印象を持ってしまう。去年2018年4月27日、板門店で開催された南北首脳会談では文在寅大統領と金正恩委員長との間で「完全な非核化」が明記された。同年6月12日の第1回米朝首脳会談の共同声明では「Reaffirming the April 27, 2018 Panmunjom Declaration, the DPRK commits to work toward complete denuclearization of the Korean Peninsula.(2018年4月27日の板門店宣言を再確認し、北朝鮮は朝鮮半島の完全な非核化に向け取り組む)」の文言を入れた。ことし2月28日のハノイでの第2回米朝首脳会談では、トランプ大統領が先に席を立って会談は決裂した。一切妥協しないトランプ氏の姿勢が明らかになった。おそらく金氏にとって会談は屈辱的だったのだろう。

      韓国「中央日報」日本語版(4日付)によると、北の対外宣伝メディアを引用して「(米国の行動は)南側に対北制裁・圧力政策に歩調を合わせろという強迫であり、極めて悪質だ」とアメリカに対する北の非難を紹介し、5日付では「(金委員長が)4日、朝鮮東海上で行われた最前線・東部前線防御部隊の火力打撃訓練を指導した」と伝え、今回の発射と関連づけている。ジレンマに陥った金氏がトランプ氏に放ったメッセージなのだ。「何とかしろ」と。

   一方のトランプ氏は余裕だ。きのうのツイッターで発射の件を投稿している=写真=。"I believe that Kim Jong-Un fully realises the great economic potential of North Korea and will do nothing to interfere or end it" (金正恩は北朝鮮のすばらしい経済的可能性を十分に認識しており、それを妨害したり終わりにすることはないと信じている)。北は経済的な見返りと引き換えに非核化には必ず応じると読んでいる。

    今回の飛翔体が弾道ミサイルならば、2017年11月29日以来だ。その後、韓国、そしてアメリカと交渉を進めてきた金氏だが、ここで弾道ミサイルを発射したとなるとさらに国際世論的にも自らを追いつめることになる。かつての崖っぷち外交、あるいはチキンレースに戻ったのか。百戦錬磨のトランプ氏と向き合うにはまだ遠い。

⇒5日(祝)午後・金沢の天気      はれ

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