自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆韓国のGIAHS候補地を行く-中

2013年08月27日 | ⇒トレンド探査
 26日午前、済州グランドホテルで「国際ワークショップ」が開催され、武内和彦国連大学上級副学長・サスティナビリティと平和研究所長が基調講演。続いて、事例発表が行われ、日本から能登、佐渡、阿蘇、国東の取り組みをそれぞれの自治体担当者が、中国の取り組みについて中国科学院の研究者、新たに申請する韓国の2件のGIAHSサイトについても研究者が紹介した。

        アジアから世界に広がるGIAHSの意義

 「Traditional Agriculture and Development of GIAHS(伝統的農業とGIAHSの発展)」。武内氏の基調講演のテーマは示唆に富んでいた。「今後もアジアでのGIAHS認定地が増える見通しで、韓国からは2サイトの認定を申請中である。GIAHSの持続性には、1つには生態系の機能の強化や、生計を保障するためのグリーン・エコノミーの創出など災害などにも柔軟に対応できる『リジリエンス』の強化、2つには地域と都市部の住民による多様な主体の参加による『新たなコモンズ』の設立、3つめとして6次産業化による農産品の付加価値向上やグリーン・ツーリズム、生計の多様化を推進する『ニュービジネスモデル』の創出が不可欠」と強調した。

 GIAHSの今後の展開について、「ユネスコの世界遺産をヨーロッパがリードしてきたように、多様で長い歴史を持つ農業のあるアジアを中心にGIAHSをリードしていくべきだ。GIAHSにおけるアジアのリーダーシップを確保するためにも、自然環境や農業の起源が共通する日中韓の三カ国間の緊密な連携を期待したい。今後はアフリカや中南米、欧米など、他の地域に認定を拡大することが、バランスのとれた発展に不可欠である」とアジアから世界に広がるGIAHSの意義を訴えた。

 午後からは「日中韓農業遺産保全および活用のための連携協力方案の模索」と題した討論会(座長:ユン・ウォングン韓国農漁村遺産学会会長)が開かれた。この中で、中国科学院地理科学資源研究所の閔庆文教授は「3ヵ国の有機的なネットワークでGIAHSの牽引が必要」と述べ、永田明国連大学サスティナビリティと平和研究所コーディネーターは「日中韓3ヵ国が突出するとGIAHS全体の価値低下を招くことになりかねない。アフリカや欧米などへGIAHS参加の呼びかけなどバランスが必要だ」と述べた。

 討論会では地域住民の関わりもテーマとなった。韓国農漁村研究院の朴潤鎬博士は「農業遺産を保全発展させるためには地域住民の主体性が必要、先発の事例に学びたい」と発言。会場からの意見でも、NGOなどの関わりについて質問が出た。座長から指名を受けた中村浩二金沢大学特任教授が、能登ではNPOや地域団体が伝統行事や森林の保全に関わっていることなどを説明した。また、地域のGIAHSを維持発展させるためには人材養成が必要と説明し、「能登里山里海マイスター」育成プログラムの取り組みを紹介。国際的な関わりとして、フィリピンのイフガオ棚田にも足を運び、共通点や相違点を学ぶ交流を行っていると述べた。

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