
桜の名所、横浜・大岡川の桜並木で桜の写真撮影を行い、撮影終了後、昼食を取るために横浜市中区・伊勢佐木モール6丁目にある明治38年創業の老舗蕎麦屋『そば処・出嶋屋本店』さんへ行ってみました。
お店は人通りの多い伊勢佐木モールにあり、時間に関わらず常時混雑しているというイメージのお店でしたが、やはり14時という時間はお蕎麦屋さんにとってマッタリした時間なのか、2人掛け、4人掛け合わせて10席程あるテーブル席はパラパラと埋まっている程度でした。

そして、ピリッとした緊張感が感じられるものの、「昼酒OK」という気さくで馴染みやすい雰囲気の漂う店内で、4人掛けテーブル席に着いて瓶ビールと「厚焼玉子」と、玉子焼よりも高価な「板わさ」をお願いします。

それにしても・・・。
何にしようか迷った割にはいつもと変わり映えしない注文で、「飽きない?。」と言われてしまいそうですが、同じ料理でも、お店によって味も形も異なるので食べ比べるのも楽しいものです。
ということで、簡単に言ってしまえばただの蒲鉾ですが、盛り合わせだったり、山葵漬けが添えられていたり、細工されていたりと、あれこれ工夫されていることの多い「板わさ」がまず運ばれてきます。
今日の「板わさ」は、小田原・鈴廣さんの白い蒲鉾と、黄色い玉子焼、濃い緑色の葉物の海苔巻、そして赤いカニカマと、「彩」の考えられた4種盛りになっていて、山葵漬けが添えられているなど「一品料理」というより「酒の肴」という言葉が似合いそうな一品です。
なお、蒲鉾には小田原・鈴廣さんの物が使用されているということで、歯応えの良い美味しい蒲鉾でした。

続いて、正直、大きな期待を抱いていなかった「厚焼玉子」。
しかしこの玉子焼、箸で一切れつまんで持ち上げてみると、切り口から美味しそうな湯気が立ち上るホンワカフカフカの玉子焼で、しっかりした甘さの感じられる実に美味しい玉子焼です。
なお、玉子焼は先にいただいた「板わさ」にも付いていましたが、歯応えも味わいも、そして温かさも異なる玉子焼で、「板わさに付いているから・・・。」と思うことなくいただいて正解だったと思える一品です。

美味しい玉子焼に気分を良くしたことから、お酒と料理を追加してもう少しのんびりさせてもらおうと思い、再びメニューを眺めると、日本酒は、福島県の「飛露喜」(今日は品切れでした。)、茨城県の「来福」、長野県の「水尾」といったこだわりの感じられる充実したラインナップです。
そんな素晴らしいラインナップの中から、飲んだことのない茨城県の地酒「来福」(らいふく)をお願いし、併せて「野菜の天麩羅盛合」をお願いすることにしました。

初めていただく「来福」は、スッキリサッパリした味わいでありながら後味はやや辛口かな?という感じの日本酒で、納得の1本です。
また、塩か天汁かを注文時に聞かれた「野菜の天麩羅盛合」(お願いしたのは「塩」)は、初めから塩が振り掛けられていて、「足りなかったら言ってください。」とのことでしたが適当な塩加減でした。
なお、天婦羅は好みの分かれるところと思いますが、カラッと仕上がっている天婦羅ではなく、柔らかい(?)食感の天婦羅でしたが、食材の味わいがしっかり感じられる天婦羅でした。

さて、長野県の地酒「特別純米酒・水尾」に心が動いたものの、それよりも店内に張り紙されている「桜ゼリー付き・桜切りそば」の文字が気になってしまい、お酒のおかわりはせず蕎麦をいただくことにします。
お願いした「桜ゼリー付き・桜切りそば」ですが・・・。
過去にいただいた「桜切りそば」の多くはほんのりピンク色に染まっていましたが、今日いただいた「桜切りそば」は普通の蕎麦と変わらない見た目です。しかし、蕎麦汁を付けずに蕎麦だけをいただいてみると、桜の風味がしっかり感じられる蕎麦で、満足感の高い蕎麦でした。

そして「桜ゼリー」。
ピンク色した桜の香り漂うゼリーを想像しましたが、桜の花が中に入っている透明のゼリーで、春を感じながらサッパリ美味しくいただきました。
今日、蕎麦前と蕎麦をいただいた『そば処・出嶋屋本店』さんは、小奇麗でお洒落なお蕎麦屋さんでは無いかもしれませんが、BGMの代わりにTVが付いていたり、お品書きの張り紙が店内のあちこちに貼られていたり、小学生の頃に溜り場となっていた駄菓子屋さんにいたようなちょっと無愛想で怖そうなおばちゃん(すみません)がいるなど、なんだか昭和時代にタイムスリップしたかのようなお蕎麦屋さんでした。
そして、季節を味わうことの出来る「変わりそば」に力を入れていたり、焼酎や日本酒の品揃えがマニアックだったり、更にはどの料理もみんな美味しかったりと、蕎麦を食べに来たお客さんにもお酒を飲みに来たお客さんにも満足してもらえる庶民のためのお蕎麦屋さんでした。
ごちそうさまでした。
