蕎麦前で憩う

お蕎麦屋さんで蕎麦前をいただきながら憩いの一時を過ごさせていただきました。

『長生庵@築地』さんの「アスパラの天婦羅」

2013-05-10 23:56:13 | 東京23区(中央区)

東京での仕事が早く終わったので、築地場外市場の一番奥まった奥にひっそりと佇んでいる『長生庵』さんへ行ってみることにしました。この『長生庵』さんは、観光客や蕎麦を食べに来るお客さんのためのお店というよりも、築地で働く市場関係者の方々が一仕事終えた後にビールを飲みながら食事をするお店ということもあり、日本酒や築地市場の新鮮素材を使った料理が充実しているお蕎麦屋さんです。

お店に到着し、まずは亀の元気な姿を眺めてから暖簾をくぐると、何となく気まずい雰囲気です。
「暖簾は出ているけど、まずいのかな?。」と思っていると、「すみません。予約で満席となっていて、1時間なら大丈夫なんですが・・・。」とのこと、1時間か・・・。まぁ、多くの場合、飲んで食べてだいたい1時間程度なので大丈夫だろうと思い、「大丈夫です。」と返事をして席に着きます。

時間に余裕が無いのでビールも大瓶ではなく小瓶でお願いします。
すると、「時間がなくて申し訳ないので・・・。」と言われながら「鮪の刺身」をいただいてしまいます。どちらかというとこちらが無理をさせているのに、「申し訳ないので・・・。」なんて言われてしまうとこちらが恐縮してしまいます。


さて、くどいようですが、時間が無いので料理も一度にお願いしてしまいます。
「何をいただこうか?。」と思いながらメニューを開くと、大きなメニューの見開き2ページに渡ってビッシリと一品料理が書かれていて、その多さに驚かされてしまいます。

「う~ん、どうしよう?。」と迷いながら、とりあえず「出汁巻き玉子(もりつゆ味)」と興味津々の「アスパラのおひたし」をお願いします。そして、新鮮な素材を使った料理を求めてやって来たので、評判の良い天婦羅をいただくことにしますが、天婦羅だけでも種類が多くやはりここでも迷ってしまいます。

しばし迷った結果、「キスと野菜の天ぷらそば」(今日のキスは大分県産とのことです。)というお勧め料理に目が止まったので、「(メニューには無い)キスと野菜の天婦羅って単品でお願いできますか?。」と聞いてみると、「最後に蕎麦を食べるなら、(キスと野菜の天ぷらそばで)天婦羅を先に出して、最後に蕎麦を出すことも出来るけど・・・。まぁ、蕎麦食べなくてもいいけど。」と提案されます。

お蕎麦屋さんで「蕎麦食べなくてもいいけど。」と言われたのは初めてですが、結局、「キスが品切れで・・・。」とのことでしたので、「アスパラのおひたし」をキャンセルして「アスパラの天婦羅」をお願いすることにしました。
なお、もちろん最後に蕎麦はいただきます。

また、「出汁巻き玉子(もりつゆ味)」と「アスパラの天婦羅」という、時間の掛かりそうな物を頼んでしまったように思うので、すぐに出てきそうな「京都産 冷奴(寄せ豆腐 薬味5種)」を追加でお願いします。


迷っている時間も多く、料理を選ぶだけで時間を要してしまったことから、サービスでいただいた「鮪の刺身」に手を付ける前にビールが無くなってしまいました。小瓶だし・・・。

ということで、今度は日本酒を選ぶために再びメニューを広げると、これもまた驚くほど種類が多く、目の前にある冷蔵庫を見ても銘酒がズラリと並んでいます。そして、これまたあれこれ迷いましたが、「5月の日本酒メニュー」という限定酒の中から「白岳仙 特別純米生酒」という福井県の地酒をいただくことにしました。

お酒を頼むと、すぐ近くで日本酒を冷蔵庫に詰めていた女の子(女性?)が厨房に向って「私がやります!。」と応えていたので、日本酒担当なのかな?と思いましたが、この子がまた凄い子で・・・。

まずは冷蔵庫から出されたグラスと受け皿がテーブルの上に置かれ、そのグラスと受け皿になみなみと「白岳仙 特別純米生酒」が注がれます。そして、ようやくサービスでいただいた鮪の刺身に手を付け始めると、時間が掛かるかと思った「出汁巻き玉子」が登場します。

「出汁巻き玉子」をお願いする時、「ハーフにも出来ますが・・・。」と言われてハーフサイズをお願いしましたが、「これでハーフ?。」と思ってしまうほどの大きさです。そして、写真を撮ろうとしたら「アスパラの天婦羅」も続いて登場してしまい、結局、玉子焼と天婦羅を待つ間に食べようと思ってお願いした冷奴は、その役目を果たすこと無く、普通に一つの料理になってしまいました。


柔らかい旨味の感じられる「白岳仙 特別純米生酒」を飲みながらいただいた「出汁巻き玉子」は、甘さは控えめですが、出汁のしっかり効いた食べ応えのある「出汁巻き玉子」でした。また、「アスパラの天婦羅」は塩でいただきましたが、こちらも素材が良いのかしっかりした歯応えがなかなか好印象で、スッキリした爽やかなお酒との相性が良さそうな美味しい天婦羅でした。

今日は築地場外市場のお蕎麦屋さんということで海鮮の天婦羅をいただく予定でしたが、「野菜も悪くないじゃん!。」という感じで、時間があれば食べたことの無い「新しょうがの天婦羅」もいただきたいところではありますが、今回は残念ながらパスすることにします。


「白岳仙 特別純米生酒」が無くなり、時計を見ると「のんびりは出来ないけど、もう1杯大丈夫かな?。」という残り時間だったことから、美味しいと思っている福島県の地酒「飛露喜 特別純米」を先程の女の子にお願いすると、冷蔵庫の中をごそごそと探してくれましたが見つからず、「すみません。品切れのようです。」とのこと。

まぁ、仕方の無いことなので別の物を頼みますが、「お勧めは?。」と聞いてみると「どんな感じが好みですか?。」と返ってきたので、「生貯蔵原酒。日本酒度+4~5くらい。」と伝えると、神奈川県の地酒「相模灘 純米吟醸 無濾過」を勧められたので、いただくことしました。

今回初めて口にした地元神奈川県の「相模灘 純米吟醸 無濾過」ですが、日本酒独特の豊潤な旨味と透明感のある爽やかさのバランスが心地良いお酒で、「へぇ~、こんな酒が神奈川にあるんだ!。」と新たな発見です。

この後、時間が過ぎるのも忘れてしまい、この女の子と日本酒の話で盛り上がってしまいましたが、単に知識として「知っている」ということではなく、「好き」で実際に「飲んでいる」という印象で、お酒を注ぐときにラベルをちゃんと見せたり、お客さんの好みに合わせてお酒を選べるなど、日本酒ソムリエのような女の子でした。

お酒の話をしながら時計を見ると、「(残り時間が)ヤバイ!。まだ冷奴に手を付けてないし、蕎麦も食べてない。」ということで、「京都産 冷奴(寄せ豆腐 薬味5種)」に手を付けますが、豆腐とはいえそこそこ量があります。
そもそも、これもハーフサイズを頼んだんですが、これで本当にハーフサイズなんでしょうか?。

この「京都産 冷奴」には薬味が5種類付いていますが、豆腐そのものが十分美味しいので、薬味は味見をしただけで使用せず、豆腐にもり汁(蕎麦汁)を少々付けただけで美味しくいただきました。


さて、「食べなくてもいいけど。」と言われた蕎麦ですが、まずは甘辛のバランスが絶妙の蕎麦汁がとても良い感じで、また、カツオ出汁が明確に感じられるものの、自己主張しない落ち着いた味わいがとても美味しいです。
麺はやや硬めかな?という印象ですが、細麺で食べ易く、相性の良い蕎麦汁と併せて美味しくいただきました。


今日は予約のお客さんが入っているとのことで、蕎麦前と蕎麦をいただく時間が限られていましたが、それでも1時間という時間であり、普通のお蕎麦屋さんなら十分な時間と思います。

しかし、今日訪れた『長生庵』さんは品数も多く、築地市場の新鮮な素材を使用したあれも食べたいこれも食べたいと目移りしてしまうオリジナル料理がズラリと並んでいて、選ぶだけでも時間がかかり、おまけに量も多く、更にはお店の方々が気さくな方々ばかり(場所柄か?)で、カウンター席ではなく一番端っこの席にいるにも関わらず色々話をする機会も多く、最後はバタバタと慌ててしまったアッと言う間の1時間でした。

また、仕事を終えた金曜日の夜に訪れるお蕎麦屋さんは、1週間分の疲れを癒す憩いの一時を過させてくれますが、今日訪れた『長生庵』さんは、「1週間分の疲れを癒してくれる」というより「来週1週間分の鋭気を与えてくれる」といった、元気付けてくれる温かい雰囲気の感じられるお蕎麦屋さんでした。

ごちそうさまでした。

そうそう、お店の外に亀が一匹。
インターネットで調べたところ、「亀吉」という男らしい名前だそうですが、実はメスなんだそうです。
そんな愛らしい亀にも出会える蕎麦屋さんでした。