企業主からすれば、自分の報酬と賃金の関係は、まさに利益相反になるわけで、中小企業であっても、企業主の力は圧倒的に強く、労働者の賃金は低く押さえつけられる。
制度的に労働者が流動的に動くことは、労働者のサイドで不利に働くという思い込みもあり、また、あまり職業をかえることについて、良い評価が得られないというような、「常識」もあって、労働者は低賃金を我慢してしまう傾向がある。
企業主サイドは、文句があるなら、かわりはあるんだよと、強気である。そこまでいかなくとも、できるだけ賃金は低い方がいいと思っていて、そのように実行する。世のため人のため、働く人の賃金はできる限りあげようと思っている経営者はほとんど皆無なのだろう。
かくして、先進国の中で、日本はこの30年間、賃金は横ばいであった。他の国は例外なく賃金はあがっており、日本の賃金の横ばいは、いかに、企業側が利益を出していても賃金にはまわさないという実態を、はっきりと数字で示している。
労働者は当然怒るところだが、強い者にはまかれろ、的な考えがあるのか実に大人しい。選挙をしても、保守的な動きであって、劇的な変化を求めようとはしない。これでは賃金など上がるわけもない。労働組合が消失して、あっても事実上、経営側の別動隊のような労働組合だから労働者の要求にかなうものにはなりえない。
しかし、賃金をあげないでは、消費もふえないし、企業主サイドにもその不利益が及ぶ。限界まで、賃金を押さえ込んだ副作用が、これだけ顕著になっても、経営者側が賃金をあげないのならば、これは、最低賃金をあげるしかない。
法的に、賃金の最低線を決めるわけだから、経営側もこれには従うほかはない。これをやれば、エライことになるなどと、騒ぎ立てるが、韓国の例をみると、日本の半分ぐらいの賃金水準であったのが、今や、日本を追い越している。
日本よ、いったいどうなっているのか。労働者が大人しすぎるのも考えものということだ。