ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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韓国内の映画の興行成績 [7月23日(金)~7月25日(日)]と人気順位 ▶先行上映で9位リュ・スンワン監督「モガディシュ」に注目 ▶やっぱり多い「銀魂」ファン ▶「MZ世代」という新語ググってみて!

2021-07-30 23:54:58 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
▶このところPCが不調で1つの記事を書くのに倍くらいかかる上、阿部和重さんの新刊「ブラック・チェンバー・ミュージック」に丸一日没頭してしまったのでますます遅くなってしまいました。(→コチラ参照)
▶今回は初登場の韓国映画でとくに注目は「モガデシュ」です。タイトルのモガディシュとはソマリアの首都。ソマリアはエチオピアの東の<アフリカの角>とよばれる海に突き出た半島の海に面した大部分を占めている国です。1969年のクーデター以後独裁を進めてきたシアド・バーレは反政府勢力の攻勢により91年に追放されますが、その後も諸勢力間の内乱が続き、泥沼化した状況になっていました。
 当時韓国は国連非加盟国で、加盟問題は外交上の大きな懸案事項でしたが、北朝鮮は「南北朝鮮の同時加盟は分断を固定化させる」として単一の国号での加盟を主張して反対してきました。結局は北朝鮮は国際情勢の変化を味方とする韓国に対抗しきれないと判断し、結局91年9月18日南北朝鮮は同時加盟に至ります。
 本作の時代設定はその91年の、国連同時加盟の前のようです。あらすじを読んで内心「ありゃ、またか」と思ったのは内戦のとばっちりで通信も途絶えて孤立状態となった現地の韓国大使館員と家族たちがじっと耐えている中、北朝鮮大使館の一行が韓国大使館にやってきて助けを求める・・・というくだりを読んだ時。どうも近年「南北が協力しあって云々」という筋立ての作品が多いようなのは韓国の進歩系の人に多い北朝鮮への片思い的感情の表れではなかろうかと思われる(北朝鮮側の人物を演じる俳優も例外なくイケメンだし・・・)ので、本作もそうかと・・・。
 その後も内乱が続く中、現地の難民の飢餓が国際的な課題となり、国連は彼らへの食糧援助活動と共にそのため必要な安全な環境を作るための軍事的介入を行った・・・というのが93年のモガディシュの戦闘でした。派遣されたアメリカ軍兵士の遺体が住民に引きずり回されるという悲惨な映像等は日本のTVでも伝えられました。
 戦争を描いた作品を評価する要(かなめ)は戦争を<正義vs悪>に単純化しないこと。そして兵士を英雄化しないこと、敵方も人間として見ることだと思いますが、そこらへんどうなのか? モガディシュの戦闘を描いた映画といえばリドリー・スコット監督の「ブラックホーク・ダウン」(2002)ですが残念ながら未見です。ある人のレビューに「この映画のテーマは愛国心でも軍隊賛美でも反戦でもなく、自らの信念で戦う「戦士」ですね」とありましたが・・・。) なお、韓国の評論家の寸評を見ると「あちこちよそ見する代わりに、生存のための脱出という目標一つのために飛ぶ矢だ。淡泊な目標設定のおかげで時代を貫通する質問の深さは浅い方だ」と、これはわかりやすいかも。また「朝鮮半島以外で可能であった南と北の一時的な統一」というのは「やっぱりね」です。「ベテラン」等々の実績のあるリュ・スンワン監督作品で主演はキム・ユンソク。長々と書きましたが、まずは観なくちゃ。いずれ日本でも公開されるとみてよさそう?
 韓国映画でもうひとつ。<第25回富川国際ファンタスティック映画祭>の<コリアンファンタスティック長編コンペティション>で作品賞等4冠に輝いた「アクションヒーロー」は、内容は今ひとつわからないのですが、韓国で今政治にも影響を及ぼし始めている進歩・保守関係なく不公正は許せないとよばれる20~30代の若い世代を主人公にした作品とのことです。個人的には観てみたいけど独立系で上映館も少ないようだし日本では観られるかどうか・・・。

         ★★★ NAVERの人気順位(7月27日現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】
  ※[記者・評論家による順位]とも、評点の後の( )は採点者数。初公開から1年以内の作品が対象。
        「初登場」とは、本ブログでの初登場の意。

①(新) 銀魂 THE FINAL(日本)  9.67(125)
②(新) 人生の価値  9.52(21)
③(5) CCTV(韓国)  9.41(39)
④(-) ドリーム・ファクトリー  9.36(47)
⑤(新) おらおらでひとりいぐも(日本)  9.36(11)
⑥(新) ボス・ベイビー ファミリー・ミッション  9.35(1,094)
⑦(3) 劇場版「鬼滅の刃」無限列車編(日本)  9.28(12,714)
⑧(4) クルエラ  9.24(7,058)
⑨(6) 今度はうまくいくだろう(韓国)  9.09(80)
⑩(7) あの夏のルカ  9.06(869)
 ①②⑤⑥の4作品が新登場です。
 ①「銀魂 THE FINAL」は韓国でも人気で、もちろん実写版の2作も公開されています。いや、それ以前にコミック全77巻が2001~20年刊行されてきたのです。※右画像は第77巻の韓国版。ナルト、コナン、クレヨンしんちゃん等々も皆同様。ちなみに私ヌルボは銀魂関係とはコミックも映画も無縁。設定からついていけなくて。ここらへんは世代の差でしょうね。韓国題は「은혼 더 파이널」です。
 ②「人生の価値」(仮)はアメリカのドラマ。2015年のアカデミー作品賞受賞作「スポットライト 世紀のスクープ」はアメリカの新聞記者たちがカトリック教会の神父が過去30年もの間多数の児童に性的虐待を行っていた事実を暴いた実話に基づく作品でした。本作はその製作スタッフたちによる、やはり実話をベースにしたドラマです。9.11テロの犠牲者補償基金の運営を引き受けることになった交渉担当の弁護士ケン(マイケル・キートン)は、25ヵ月で80%の遺族の同意を得なければなりません。ひとつの事件でたがいに異なる補償金。残された人たちのための話し合いが始まります・・・。韓国題は「워스(Worth)」ですが、原題「What Is Life Worth」をふつうに訳して仮題としました。
 ⑤「おらおらでひとりいぐも」は若竹千佐子の芥川賞受賞作で、私ヌルボの好きな田中裕子主演作ですが、未見のまま。韓国では上映館も20館前後で、レビューも多くはありませんが、いずれも好意的な内容です。韓国題は「나는 나대로 혼자서 간다」です。
 ⑥「ボス・ベイビー ファミリー・ミッション」については後述します。

     【記者・評論家による順位】

①(1) Mank/マンク  8.14(7)
②(2) ノマドランド  8.00(8)
③(新) あの日のように抱きしめて  7.80(5)
④(4) イントロダクション(韓国)  7.67(3)
⑤(新) モガディシュ(韓国)  7.22(9)
⑥(7) 輝く瞬間(韓国)  6.83(6)
⑥(7) イン・ザ・ハイツ  6.83(6)
⑧(9) 一人暮らしの人々(韓国)  6.71(7)
⑨(10) ブラック・ウィドウ  6.70(10)
⑩(-) 花束みたいな恋をした(日本)  6.67(3)

 ③と⑤の2作品が新登場です。
 ③「あの日のように抱きしめて」が新登場です。2014年制作のドイツのドラマ&サスペンスで、日本では15年公開。韓国でも16年の茂朱(ムジュ)山奥映画祭で上映されましたが、一般劇場公開は今回が初めてです。韓国題は原題「Phoenix」そのままの「피닉스」です。
 ⑤「モガディシュ」については後述します。

 ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績7月16日(金)~7月18日(日) ★★★
         「ボス・ベイビー ファミリー・ミッション」が初登場1位

【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・上映館数
1(新)・・ボス・ベイビー・・・・・・・・・・・・・・7/21 ・・・・256,858・・・・・・・・356,270・・・・・・3,264・・・・・1,343
       ファミリー・ミッション
2(1)・・ブラック・ウィドウ・・・・・・・・・・・7/07 ・・・・251,376 ・・・・・2,582,045・・・・・26,286 ・・・・1,300
3(2)・・ランジョン(韓国・タイ)・・・・・・・7/14 ・・・・・99,262・・・・・・・・769,536・・・・・・7,994・・・・・・・836
4(3)・・エスケープ・ルーム・・・・・・・・・・・7/14 ・・・・・78,599 ・・・・・・・188,654・・・・・・1,878・・・・・・・571
       :トーナメント・オブ・チャンピオンズ
5(4)・・クルエラ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5/26 ・・・・・22,824 ・・・・・1,958,907・・・・・19,019 ・・・・・・350
6(新)・・アイス・ロード・・・・・・・・・・・・・・7/21 ・・・・・14,691 ・・・・・・・・21,273 ・・・・・・・・205・・・・・・・344
7(13)・・銀魂 THE FINAL(日本) ・・・・・7/22・・・・・・・7,821 ・・・・・・・・17,781 ・・・・・・・・172・・・・・・・153
8(新)・・ズーム/見えない参加者・・・・・7/21・・・・・・・6,670 ・・・・・・・・10,954 ・・・・・・・・102・・・・・・・147
9(新)・・モガディシュ(韓国) ・・・・・・・・・7/28・・・・・・・6,627 ・・・・・・・・・9,575 ・・・・・・・・・88・・・・・・・・38
10(5)・・非通知着信(韓国)・・・・・・・・・・・6/23・・・・・・・5,035 ・・・・・・・949,015・・・・・・9,059・・・・・・・162
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 「ボス・ベイビー ファミリー・ミッション」が初登場1位ですが、先行上映の期待作「モガディシュ」が少ない上映館ながらも9位。次週は1位ほぼ確定でしょう。
 1・6・7・8・9位の5作品が新登場です。
 1位「ボス・ベイビー ファミリー・ミッション」は、2017年のアメリカのアニメ「ボス・ベイビー」の続編です。ベイビー株式会社のCEOになったボス・ベイビーことテッドは最高レベルのレジェンド。ところがまだ子供だと思っていた兄ティムの末娘ティナがいつの間にかベイビー株式会社の役員になっていたことが明らかになります。そればかりか、ティナは先進的な思考を持つニュー・ボス・ベイビーとして会社のトップに・・・。彼女の指示で再びベイビーに戻ったテッドと兄のティムに課せられたのは世界を救うためのミッション。ところが与えられた時間はわずか48時間。はたして無事完遂することができるでしょうか・・・? 韓国題は「보스 베이비 2」。日本公開は今年冬とのことです。
 6位「アイス・ロード」(仮)はアメリカの:アドベンチャー。物語の舞台はカナダの、アメリカと国境を接しているマニトバ州。ダイヤモンド鉱山の爆発事故のため26人の鉱夫たち坑道に生き埋めになります。彼らを救出する唯一の方法は、制限時間内に解氷が差し迫ったアイスロードを横断して救助用パイプを運搬することだけ。氷点下50度に達する極限の寒さと雪嵐が潜んでいる<白い地獄>ウィニペグ湖の上、非常に困難なミッションの遂行者として鉱山会社から依頼を受けた腕利きのトラック運転手マイク(リーアム・ニーソン)は大型トレーラー3台と救助チームを率いて予測不可能危険が潜んでいるアイスロードすなわち凍結した湖をトラックで突っ切らなくてはなりません。与えられた時間はわずか30時間。 必ず救わなければならない・・・! 韓国題は「아이스 로드」。日本では6月25日からNETFLIXで配信されています。
 7位「銀魂 THE FINA」については上述しました。
 8位「ズーム/見えない参加者」はイギリスのホラー。Zoomを用いて交霊会をした6人の男女が不可解な現象に襲われる・・・という設定には「交霊会」までが新型コロナの影響を受けるか!とちょっと驚きました。韓国題は「호스트: 접속금지(ホスト: 接続禁止)」。日本では公開は1月に公開されています。
 9位「モガディシュ」は、リュ・スンワン監督の期待作の先行上映。記事冒頭で記したように韓国が国連加盟のために東奔西走していた時期の1991年のソマリアを舞台にしたアクション&ドラマ。モロッコのオールロケで完成したとのことです。首都モガディシュで一触即発の内戦が起き、現地韓国大使館の職員と家族は通信も途絶えて孤立状態に置かれ、銃弾や砲弾が飛び交う中でただ生き残るために一日一日を耐え忍んでいました。そんなある日の夜、北朝鮮大使館の一行が助けを要請して韓国大使館の門を叩くのですが・・・。共に目的はひとつ。モガディシュからの脱出です・・・。原題は「모가디슈」です。

【独立・芸術映画】
順位・・・・題名 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・・累積収入・・・上映館数
1(新)・・ズーム/見えない参加者 ・・・・・・・・7/21・・・・・・・6,670・・・・・・・・10,954・・・・・・・・・・102・・・・・・・147
2(17)・・あの日のように抱きしめて・・・・・・7/22・・・・・・・2,125 ・・・・・・・・・3,332・・・・・・・・・・・28・・・・・・・・48
3(新)・・アクションヒーロー(韓国) ・・・・・・7/21・・・・・・・2,085 ・・・・・・・・・4,440・・・・・・・・・・・36・・・・・・・102
4(1)・・オフィーリア 奪われた王国・・・・・7/14 ・・・・・・・1,853・・・・・・・・12,439・・・・・・・・・・111・・・・・・・・61
5(新)・・人生の価値・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7/21 ・・・・・・・1,568 ・・・・・・・・・2,147・・・・・・・・・・・19・・・・・・・・65

 4位以外の4作品が新登場です。
 1位「ズーム/見えない参加者」、2位「あの日のように抱きしめて」、5位「人生の価値」については上述しました。
 3位「アクションヒーロー」は韓国のアクション&コメディ。7月7日~17日開かれた<第25回富川国際ファンタスティック映画祭>の<コリアンファンタスティック長編コンペティション>に招待されて作品賞・俳優賞(イ・ソキョン)等の4賞を受賞した作品です。夢はアクション俳優、現実は公務員志望の大学生ジュソン(イ・ソキョンン)が偶然「入試不正を告発するぞ」という内容の脅迫手紙を発見し、アクション映画を撮って悪党をひっ捕まえることに…。本作についての宣伝・情報記事によると、韓国で今政治にも影響を及ぼし始めている進歩・保守関係なく不公正は許せないとよばれる20~30代の若い世代を主人公にした(初めての?)映画という点を強調しているようです。原題は「액션히어로」です。