ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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韓国内の映画 週末の興行成績 [2月28日(金)~3月1日(日)]と、人気順位 ►「ミッドサマー」と「名もなき生涯」と、新型コロナウイルス騒ぎ

2020-03-03 23:47:32 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
▸先週の記事での韓国での週末観客動員数は、1位の韓国映画「藁にもすがる獣たち」が約22万人。10万人超えが3作品だけで、いつもと比べてやっぱり減っているなーと思いましたが、後掲の2月28日(金)~3月1日(日)の動員数はさらにガタ減りしています。10万人以上は1位「透明人間」だけ。ベスト10の8位以下はふだんだとミニシアター並みの数字です。昨日2日のの記事(→コチラ)によると、前の週末の50万5000人から28万5000人に激減したとか。平常時にはヒット作の場合週末だけでも100万人を超えることはめずらしくないのに・・・。映画館だけでなく、業種によってはそれ以上の痛手を被っているところも多いのでしょうね。

▸新型コロナのためイタリアでは国内の約半数の映画館が閉鎖されたとか。日本でも岩波ホール、早稲田松竹等が休館になっています。
 ところが私ヌルボ、昨夜TOHOシネマズ 川崎に「ミッドサマー」(18:30~の回)を観に行ったら、意外なことに240席のうち約100席も埋まっていました。この映画は韓国でも観客の3分の2は20代でしたが、日本でも若い層を中心に注目されてる、のかな? なるほど、いろいろ興味深い、というか、おもしろい。スウェーデンの奥地、明るい陽光の下で繰り広げられるホラー。グロいところエロいところ、笑える(?)ところ等々。あのポン・ジュノ監督が<2020年代に注目すべき監督20人>(→コチラ)の中にこのアリ・アスター監督を選んでいるのもよくわかります。(他の監督も・・・ってヌルボが作品を観たのは20人中7人ですけど。)

▸1日(日)はみなとみらいのkino cinemaで「名もなき生涯」を鑑賞。米・独合作の反ナチス映画で、セリフもほとんどは英語ですが、「ジョジョ・ラビット」のような疑念を抱くことはありませんでした。ヒトラーへの忠誠を拒み、自らの信念を貫いて殉じた農夫の物語ですが、史実に基づいていること、他の村人たちによる彼への<村八分>をちゃんと描いていること、そして多くの人が彼のためor自分のため「単に形だけサインすればいい」等々説得をする場面などで観客自身が「自分ならどうするか?」を考えさせられるから。少し地味で、後半は長過ぎの感もありますが、良い作品だと思いました。

▸2月27日は横浜シネマリンで「〈片隅〉たちと生きる 監督・片渕須直の仕事」を観て、「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」の監督が物語の生活史(道具等)や街の景物等の考証のほか、着物の柄についても何人ものスタッフを配して人物の動きに伴う変化を自然に見えるようにした等々の実に細かな点までこだわって制作したことがわかりました。料理でいえば、さまざまな隠し味を仕込んだということ。原作のこうの史代さんは登場しませんが、その原作自体すごく正確に描き込まれているのですね。それを片渕監督が自力で謎解きをしていく・・・。アニメに感じられる<奥行き>も、そんな背景があったのですね。

▸上記の「ミッドサマー」「名もなき人生」「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」は、いずれも一種の<非常時>を扱ったものです。(あ、戦争と祝祭は相通ずるところがあるので・・・。) その点で、現今の新型コロナウイルス騒ぎと共通する要素があります。数日前からスーパー等でトイレットペーパー等の商品がすっかり消えていることに気づきました。買い溜めとはねー、いかにもそんな<非常時>らしい現象。それにしても、73年のオイルショックの時のトイレットペーパー騒動の経験が教訓化されてないとはナサケナイねー。

▸6~15日<第15回大阪アジアン映画祭>公式サイト)。注目の韓国映画「はちどり」でさえ前売券発売日の数日後まで空席が残ってたりして「なんだかなー・・・」でしたが、まあちょっと離れてみればそんなものかもねー・・・。映画祭最終日15日の1回だけの上映で、私ヌルボ、その日は別にゼッタイの予定が入っていたのでチケットも買ってなかったのですが、コロナ騒ぎで当初の予定はその後取り消しになっちゃったのも「なんだかなー・・・」。しかし、ここにきてようやく一般劇場公開日が4月25日に決まったこともあって、かなり細かな紹介記事も出てきました。→コチラとか→コチラ等。まあ、そんな長く待つわけでもないので良しとするか。

         ★★★ NAVERの人気順位(3月3日現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】
       ※[記者・評論家による順位]とも、評点の後の( )は採点者数。初公開から1年以内の作品が対象。
        「初登場」とは、本ブログでの初登場の意。

①(2) 泣くな、トンズ2:シュクラン ババ(韓国)  9.61(147)
②(1) モンマルトルのパパ(韓国)  9.56(102)
③(-) 主戦場  9.52(1,370)
④(3) フォードvsフェラーリ  9.51(7,848)
⑤(新) 長雨(韓国)  9.51(78)
⑥(5) 2人のローマ教皇  9.35(573)
⑦(4) 映画 ひつじのショーン UFOフィーバー!  9.35(196)
⑧(7) 劇場版 ミニ特攻隊: 恐竜王 ディノ(韓国)  9.21(163)
⑨(8) ジョジョ・ラビット  9.20(1,007)
⑩(9) 娘は戦場で生まれた  9.20(154)

 ⑤「長雨」が新登場です。北朝鮮への帰国船で北朝鮮に渡った在日朝鮮人の息子イ・ウンテクのドキュメンタリーです。彼は飢餓と人権弾圧に苦しめられる中、自由を求めて脱北して韓国に移り住みますが、その脱北の過程やこれまでの韓国定着の苦労、そして市民社会活動家に変身するまでの紆余曲折を盛り込んだ作品です。原題は「장마」です。しかし、こういう北朝鮮モノは進歩系メディアも大方の評論家も無視なんだよね。上映館も韓国内でソウル乙支路3街の明宝アートシネマ(명보 아트시네마)1館だけとは何なんだ? これはぜひ観てみたい! しばらく経ってまだ上映していたらぜひ行かなくては・・・。

     【記者・評論家による順位】

①(1) 燃え立つ若い女性の肖像  9.22(9)
②(2) アイリッシュマン  9.11(9)
③(3) パラサイト 半地下の家族[寄生虫](韓国)  9.06(16)
④(4) 小さな光(韓国)   8.67(3)
⑤(5) マリッジ・ストーリー  8.50(2)
⑥(6) はちどり(韓国)  8.38(13)
⑦(7) ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語  8.00(10)
⑧(8) ペイン・アンド・グローリー  8.00(7)
⑨(9) ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド  7.90(10)
⑩(10) 1917 命をかけた伝令  7.67(9)

 順位・評点とも前週と同じです。

      ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績2月28日(金)~3月1日(日) ★★★
           SFの古典「透明人間」の現代版が1位 日本では5月公開

【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・上映館数
1(新)・・透明人間 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・2/26 ・・・・・・・・・107,410・・・・・・・153,514 ・・・・・・・・1,319 ・・・・・・・745
2(2)・・1917 命をかけた伝令・・・・・・・・・2/19 ・・・・・・・・・・75,034・・・・・・・431,903 ・・・・・・・・3,963 ・・・・・・・660
3(1)・・藁にもすがる獣たち(韓国)・・・・2/19 ・・・・・・・・・・58,711・・・・・・・507,441 ・・・・・・・・4,394 ・・・・・・・681
4(3)・・正直な候補(韓国)・・・・・・・・・・・・2/12 ・・・・・・・・・・36,419 ・・・・・1,439,036 ・・・・・・・12,118 ・・・・・・・557
5(4)・・ストーリー・オブ・マイライフ・・2/12・・・・・・・・・・29,030・・・・・・・774,921 ・・・・・・・・6,525 ・・・・・・・484
       わたしの若草物語
6(新)・・ザ・ジェントルメン ・・・・・・・・・2/26 ・・・・・・・・・・23,393・・・・・・・・49,425・・・・・・・・・・388 ・・・・・・・489
7(新)・・ハリー・ポッターと・・・・・2004/7/16 ・・・・・・・・・・15,639 ・・・・・1,805,682 ・・・・・・・11,199 ・・・・・・・・45
       アズカバンの囚人
8(9)・・ジョジョ・ラビット ・・・・・・・・・・2/05 ・・・・・・・・・・・3,233・・・・・・・105,060・・・・・・・・・・901 ・・・・・・・112
9(6)・・パラサイト 半地下の家族(韓国)・・2009/5/30 ・・・・2,789 ・・・・10,284,749 ・・・・・・・87,231 ・・・・・・・101
10(5)・・クローゼット(韓国)・・・・・・・・・2/05 ・・・・・・・・・・・2,623 ・・・・・1,265,778 ・・・・・・・10,926 ・・・・・・・144
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 1・6・7位の3作品が新登場です。
 1位「透明人間」は、アメリカのホラー&スリラー。もちろんSFの代表的古典の1つH・G・ウェルズの「透明人間」(1897)が原作で、すでに1933年ジェイムズ・ホエール監督による同名の映画化作品が作られていますが、本作はそれを現代的にアレンジしたものです。原作の主人公は、もちろん自ら透明人間になった科学者ジャック・グリフィン博士ですが、本作品ではセシリア(エリザベス・モス)という女性。彼女にはエイドリアン(オリヴァー・ジャクソン=コーエン)という富豪で天才科学者の恋人がいますが、彼は強迫観念に囚われていて、セシリアは彼の束縛に苦しめられています。ある夜セシリアが計画的に脱出を図ると、悲しみに暮れたエイドリアンは手首を切って自殺をし、莫大な財産の一部を彼女に残しますが、セシリアは彼の死に疑念を抱きます。その後不可解な出来事が続き、やがて彼女は見えない何かに脅かされ、徐々に正気を失っていきます・・・。え、エイドリアンのフルネームはエイドリアン・グリフィンなの? 韓国題は、ほぼ原題(The Invisible Man)の「인비저블맨」。日本公開は5月1日です。
 6位「ザ・ジェントルメン」は、アメリカの犯罪&アクション。ヨーロッパを掌握したその<業界>の絶対強者ミッキー・ピアソン(マシュー・マコノヒー)は、貧困家庭で生まれながらもオクスフォード大の学生時代以来築き上げたマリファナ帝国をかけて、アメリカの億万長者とのビッグディールを開始します。噂を聞いて訪ねてきた無法者ドライ・アイ(ヘンリー・ゴールディング)と、金の臭いを嗅いだ私立探偵フレッチャー(ヒュー・グラント)までゲームに割り込んできて、長い間守られてきた<業界>の秩序は徐々に崩れ始めます・・・。韓国題は「젠틀맨」。日本公開は未定? それとも年内かな?
 7位「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」は、もちろんおなじみのシリーズ中の1つ。日本でも同じ2004年に公開されています。韓国題は「해리포터와 아즈카반의 죄수」です。囚人は<罪囚(죄수)>というのがふつうなのか。

【独立・芸術映画】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・・・上映館数
1(新)・・長雨(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2/27・・・・・・・・・1,464 ・・・・・・・・・・1,790 ・・・・・・・・・・11 ・・・・・・・・・・1
2(1)・・ネヴァー・ルック・アウェイ ・・・・・・2/20・・・・・・・・・1,383 ・・・・・・・・・・8,471 ・・・・・・・・・・64 ・・・・・・・・・41
3(2)・・燃え立つ若い女性の肖像 ・・・・・・・・1/16・・・・・・・・・1,156 ・・・・・・・・141,610・・・・・・・・1,188 ・・・・・・・・・38
4(8)・・Shine シャイン・・・・・・・・・・・・・1997/1/25・・・・・・・・・・・812・・・・・・・・・18,241 ・・・・・・・・・140 ・・・・・・・・・26
5(新)・・錯乱 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2/27・・・・・・・・・・・186 ・・・・・・・・・・・538 ・・・・・・・・・・・4 ・・・・・・・・・17

 1・4・5位の3作品が新登場です。
 1位「長雨」については上述しました。
 4位「Shine シャイン」は、1995年製作のオーストラリア作品の再上映。日本でも韓国と同じ1997年に公開されました。韓国題は「샤인」です。これは観たゾ。オーストラリア&ピアノといえば、その少し前「ピアノ・レッスン」があったな。
 5位「錯乱」は、トルコ・フランス・カタール合作の犯罪&スリラー。<ヴェネチア映画祭2015>で審査員特別賞を受賞した作品です。韓国題は「더 테러리스트(ザ・テロリスト)」ですが、日本では2015年の<第28回東京国際映画祭>で「錯乱」のタイトルで上映されました。しかしその後一般劇場公開はありません。物語の舞台はテロ事件が多発するイスタンブール。警察の高官ハムザは20年以上服役していた囚人のカディルを牢獄から釈放させますが、それと引き換えにカディルはゴミ収拾の仕事とともに情報員としての任務を課せられ、テロに結びつく爆弾の部品をゴミの中から探すことを命じられます。そんな中で偶然弟のアフメットに再会しますが、野良犬を処分する仕事に就いているという弟はなぜか自分を避けているようで、カディルは不審なものを感じます・・・。