ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

①韓国文学②韓国漫画③韓国のメディア観察④韓国語いろいろ⑤韓国映画⑥韓国の歴史・社会⑦韓国・朝鮮関係の本⑧韓国旅行の記録

韓国内の映画 週末の興行成績 [12月13日(金)~12月15日(日)]と、人気順位 ►初めて観た「キューポラのある街」の続編 北朝鮮帰国事業の問題は60年後の現在にまで続いている!

2019-12-18 23:48:39 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
▸テレビをあまり見ないので、どの程度報道されたか、またどれほど関心を持たれているかもよくわかりませんが、今年は北朝鮮帰国事業つまり9万3千人を超える在日朝鮮人と日本人妻等の北朝鮮への「帰国」が始まった1959年からちょうど60年になります。そしてその第1次船が新潟港を出港したのが12月14日でした。
 先週の土曜はその12月14日。私ヌルボは初めて拓殖大学文京キャンパスに行って、<北朝鮮に自由を! 人権映画祭>で上映の「キューポラのある街」(1962)「未成年 続・キューポラのある街」(1965)を観てきました。
 「キューポラのある街」を最初に観たのは思い出せないほど昔なので、ただ感動したことと在日の友だちが北朝鮮に行ったこと以外はほとんど記憶ナシ。今観ると、いろんなところに時代が感じられます。吉永小百合(当時18歳)が演じるジュンは中学3年生。ソフトボール部員で好機に外野越えの長打を打つと、弟タカユキの友だちサンキチが「何と申しましょうか、打ちも打ったりと申しますが・・・」と、小西得郎の物真似。(今何歳以上がわかるのだろう?) 中3は修学旅行が近づいていて、持っていくお小遣いは何円が上限かを学級会で生徒だけで決めていました。(今こんな学校あるの? ジュンの父親・辰五郎(東野英治郎)は酒を飲んでは「〽意地に強いが情けにゃ弱い」(かな?)などと広沢虎蔵の浪花節をうなったりしてますが、職人気質とはいってもどうしようもないほどの堅物の上、首を切られた彼のもとに組合の尽力で「金がもらえることになった」と言われても「俺はアカは俺はアカは嫌えだ!」と受け取らず。またタカユキに対して「おめえ、チョーセン人(=サンキチ)とつきあってるのか?」(怒)とあからさまな朝鮮人蔑視。そのサンキチは学芸会だかで「にんじん」の主人公を演じていたら、観客の子供たちの間から「チョーセンニンジン!」という声が次々に上がります。今の映画では考えられないことでしょう。※サンキチは父(浜村純)が朝鮮人で母(菅井きん)が日本人。家族たちは「帰国」し、その母が1人日本に残ります。

「未成年 続・キューポラのある街」は初めて観ました。いや、今までその存在を知りませんでした。DVDはなく、レア物のVHSがあるだけとのことです。この作品の問題は、その公開年が1965年ということ。原作者の早船ちよが原作小説を刊行したのが1961年ですが、帰国運動のピークは61年までの3年間で、その時までに7万人以上つまり全帰国者の8割以上が北朝鮮に渡り、62年になるともう激減しています。最初から日本に残るという人だけでなく、北朝鮮の実情がわかって渡航をやめた人もいたのでは・・・。さらに65年となると、主人公のジュンも定時制高校に通いながら工場で働いていますが、厳しい社会の現実を前に悩む場面が目につきます。帰国運動関係では、北朝鮮でサンキチの父が病に倒れ云々の知らせがあり、やはり自分も北朝鮮に行くべきかと悩むサンキチの母にジュンは強く北朝鮮に行くことを勧めます。「2度と帰って来れないかもしれない・・・。私はやっぱり日本に住んでいたいんだよ・・・」と泣きながらも北朝鮮行きを決意するサンキチ母は、ジュンに「私のことを思い出しておくれね」と言い残します。この時点で、当初総聯などが言っていた「3年経ったら里帰りできる」という言葉は反故にされています。何年も経った後、ジュンはこの時のサンキチ母とのやりとりをどう思い返しているのか、ということをふと考えてしまいました。映画では、この会話の後のジュンの表情になにか不安が兆しているように思えました。(あと知恵?)
 日本人妻など随伴家族の日本人は6730人。拉致被害者の人たちに比べると関心はかなり低いのでは? 「自分の意思で行ったんだから」といった冷たい言葉を投げつける人もいたようです。何と言っても責任を負うべきは北朝鮮政府と朝鮮総聯ですが、かの国の実情がよくわからないのに希望を持たせる報道をしたメディアはもちろん、(ジュンのように)善意で後押しをした多くの人々も反省すべきことはありそうです。
 今多くの人に認識してほしいことは、帰国事業の問題は60年経った今も継続しているということです。北朝鮮政府も朝鮮総聯も謝罪どころか<罪の上塗り>を重ねているばかりです。かつて北朝鮮に渡った在日朝鮮人やその家族でその後脱北して日本で暮らしている人は約200人いるそうです。うち何人かの話を聞いたことがありますが、その人たちの中の相当数は大きなマスク等で顔がわからないようにしています。北朝鮮側の人間からの危険な「働きかけ」等を警戒してのことです。何十年も前の正確な情報もない中での決断が人生全体を台無しにしてしまう・・・。国や民族の問題を云々する前に、93,340人の個々の生命と人生、そして人権の問題として考えたいものです。
 ★映画の内容とは関係ありませんが、司会の方も映画の中でも「キューポラ」のアクセントを「キュー」の方に置いていました。高➘低です。今一般には低➚高の平板なイントネーションがふつうでは? ある記事によると「日本国語大辞典」でも後者になっているそうです。川口の人はどちらなんでしょうね。

▸青龍映画賞と並んで韓国の2大映画祭とされている大鐘賞ですが、今年11月13日開催予定だった第56回大鐘賞授賞式は来年2月に延期されることになりました。その公表は11月5日。例のGSOMIAの件に限らず、韓国の場合(日本の尺度では)ギリギリでの変更やキャンセル等は決してめずらしいことでもないようですが、一応理由としては韓国映画評論家協会賞(同じ11月13日)、青龍映画賞(11月21日)と開催が接近しすぎていること、そしてアメリカのアカデミー賞のように毎年1月1日~12月31日に公開される映画を対象とするため・・・とのことですが、どうもそれ以外のいろいろがありそうな感じもしないではない?

         ★★★ NAVERの人気順位(12月17日現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】
       ※[記者・評論家による順位]とも、評点の後の( )は採点者数。初公開から1年以内の作品が対象。
        「初登場」とは、本ブログでの初登場の意。

①(新) オモン[おっかさん](韓国)  10.00(11)
②(1) 梨泰院[イテウォン](韓国)  9.85(26)
③(2) 劇場版 燃え上がるな バスター -ブラック・アソールトの帰還(韓国)  9.71(56)
④(3) ヘロニモ(韓・米)  9.62(198)
⑤(4) フォードvsフェラーリ  9.56(4,512)
⑥(-) バブル・ファミリー(韓国)  9.56(112)
⑦(8) 主戦場  9.49(1,001)
⑧(9) スーパーディスコ(韓国)  9.47(32)
⑨(-) オフィシャル・シークレッツ  9.38(74)
⑩(7) アンカー(韓国)  9.36(14)

 ①「オモン[おっかさん]」が新登場です。韓国のドラマで原題は「어멍(オモン)」なのですが、これは辞書にない単語。済州島の方言で「おっかさん」といった意味なのだそうです。その済州の美しい風景の背景に一生を海女として生きてきた母スクチャ(ムン・ヒギョン)と、母の心のうちを知らない世間知らずの息子ユル(オ・ソンウク)の物語です。シナリオ作家デビューを夢見るユルは、ある日母が末期ガンだという事実を知らされます。ところがスクチャはすべての治療を拒否して、ひたすら海女の仕事物質を続けています。そんな母を見るのがつらくて、ユルは夢をあきらめて伝手をたよりに就職することにします。そして傷ついた気持で大酒を飲んで家に帰ったその日の夜、ユルの母は突然襲いかかってきた痛みに耐えられず、酔って寝ている息子を夜中に起こしますが・・・。

     【記者・評論家による順位】

①(1) アイリッシュマン  9.11(9)
②(2) パラサイト 半地下の家族[寄生虫](韓国)  9.06(16)
③(3) マリッジ・ストーリー  8.50(2)
④(4) ハチドリ(韓国)  8.38(13)
⑤(5) モーリス 4K  8.00(5)
⑥(6) 象は静かに座っている  7.67(3)
⑦(7) ジョーカー  7.64(11)
⑧(8) フォードvsフェラーリ  7.63(8)
⑨(新) われわれを引き裂くもの(韓国)  7.50(2)
⑩(9) 台北ストーリー  7.40(5)

 ⑨「われわれを引き裂くもの」が新登場です。ドキュメンタリー「危路工団(Factory Complex)」により2015年ヴェネツィア・ビエンナーレで銀獅子賞を受賞したイム・スンフン監督のドキュメンタリーです。イム・フンスン監督は視覚芸術家であるとともに映画監督で、美術と映画というジャンルを解体すると同時に拡張する試みを続けてきました。本作も、映画に先立って同じタイトルの展覧会を国立現代美術館ソウル館で2017年11月~18年4月で催しました。(→コチラ参照。) 内容は、日本の統治期から光復後の済州島四・山事件、そして朝鮮戦争を経て現代への歴史の中で、とくに光を当てられることのなかった女性の生活を通して歴史を捉え直そうというもの。具体的には、次の3人の女性の人生をたどります。[1]チョン・ジョンファ(鄭靖和.1900~91)=三一独立運動後上海に亡命した義父と夫を追って1920年上海に亡命した後、臨時政府の内輪仕事を一手に引き受けて独立運動の資金を提供していた。(→参考) [2]キム・ドンイル(金東日.1932〜2017)=抗日運動家の娘。済州島四・三事件当時、武装隊と共に漢拏山(ハルラサン)に籠るが捕らえられ光州刑務所へ。出所後木浦の叔父宅に身を寄せていた時に朝鮮戦争が始まると再び拘束されるが、その後密航船で大阪に渡った後、東京都江戸川区で弁当屋として暮らす。(→参考) [3] コ・ゲヨン(1932〜2018)=朝鮮戦争勃発直後、智異山(チリサン)に父・兄・弟を探しに行き、そこで3年間パルチザンとして活動した。(弟だけ生き残った。) その後光州で長く寝具店を営んできた。(→参考) 3人とも、屈曲した歴史に対して強い意志で対抗したという共通点があります。原題は「우리를 갈라놓는 것들」です。

      ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績12月13日(金)~12月15日(日) ★★★
           「アナと雪の女王2」 4週連続1位で1千2百万人を突破

【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・・累積収入・・上映館数
1(1)・・アナと雪の女王2 ・・・・・・・・・・・11/21・・・・・・・・・895,487・・・・・12,078,168 ・・・・・・100,886・・・・・・1,616
2(新)・・ジュマンジ/ネクスト・レベル・・12/11 ・・・・・・600,955 ・・・・・・・802,609 ・・・・・・・・6,769・・・・・・1,189
3(2)・・フォードvsフェラーリ ・・・・・・・12/04・・・・・・・・・243,288 ・・・・・・・878,098 ・・・・・・・・7,757 ・・・・・・・786
4(3)・・ナイブズ・アウト ・・・・・・・・・・・・12/04・・・・・・・・・122,948 ・・・・・・・448,225 ・・・・・・・・3,772 ・・・・・・・527
       /名探偵と刃の館の秘密
5(4)・・手際のいい彼女(韓国)・・・・・・・・12/04 ・・・・・・・・・・67,944・・・・・・・427,779 ・・・・・・・・3,301 ・・・・・・・584
6(新)・・失われた殺人の記憶(韓国)・・・12/11 ・・・・・・・・・・43,647・・・・・・・・74,841・・・・・・・・・・626 ・・・・・・・546
7(新)・・カウントダウン ・・・・・・・・・・・・12/12 ・・・・・・・・・・40,910 ・・・・・・・53,239・・・・・・・・・・445 ・・・・・・・210
8(5)・・ラスト・クリスマス ・・・・・・・・・・12/05 ・・・・・・・・・・31,413 ・・・・・・229,107 ・・・・・・・・1,898 ・・・・・・・357
9(6)・・ブラックマネー(韓国)・・・・・・・・11/13・・・・・・・・・・・14,750・・・・・2,470,153 ・・・・・・・20,802 ・・・・・・・217
10(新)・・始動(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・12/18・・・・・・・・・・・12,434 ・・・・・・・49,354・・・・・・・・・・342 ・・・・・・・・20
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 「アナと雪の女王2」が1,200万人を超えて今のところ歴代の外国映画の第4位。第3位の「アラジン」は1,255万人。早晩逆転するでしょう。
 今回の新登場は2・6・7・10位の4作品です。
 2位「ジュマンジ/ネクスト・レベル」は、日本でも2日遅れの12月13日から公開されています。韓国題は「쥬만지: 넥스트 레벨」です。
 6位「失われた殺人の記憶」は、韓国のスリラー&アクション。原題は「아내를 죽였다(妻を殺した)」なのですが、今年の<第32回東京国際映画祭>で上映された時の邦題にしておきました。友人と酒を飲んで酔いつぶれたジョンホ(イ・シオン)は、二日酔いのまま目を覚ました翌朝、別居中の妻ミヨン(ワン・ジヘ)が殺害されたという衝撃的な事実を知らされます。その瞬間、彼は自分の服に付着した血痕と、血の付いたナイフを発見します。最も有力な容疑者とされた彼は、警察の目を避けて逃げます。しかしアリバイを証明したくても昨夜の記憶はすべて消えた状態。自分を信じることができない最悪の状況でジョンホは、最後の夜の自分の足どりをたどり始めます・・・。
 7位「カウントダウン」は、アメリカのホラー。主役は、何人もの登場人物というより、ひとつのアプリといった方がよさそう。それは「あなたの余命を予測します」というアプリで、その名が<カウントダウン>なのです。最初に登場する女性は、なんと「余命は3時間」と表示を見て、当然すごく動揺し、酔っ払った恋人の車に乗って帰ることを拒否します。その結果・・・私ヌルボが思い出したのは、以前読んだ外国の笑い話。占い師から「おまえのロバがオナラを3回したら死ぬぞ」と言われた男、2回目のオナラの後に尻の穴を石でふさごうとした時にロバがオナラをして、男は飛び出した石に当たって死んだ」というもの。続いてこのアプリの犠牲になった者が何人も・・・。はたして食い止めることができるでしょうか・・・。韓国題は「카운트다운」。日本公開は未定のようです。
 10位「始動」は、韓国のドラマ。「学校も嫌い、家も嫌い、勉強はもーっと嫌い」とテギル(パク・ジョンミン)は1日1度はオンマ[母](ヨム・ジョンア)に反抗します。親友のサンピル(チョン・ヘイン)がすぐにでもお金を稼ぎたいと社会に飛び込むと、テギルもつられて家を飛び出します。そしてたまたま見つけた中華料理店で人並み外れた力の料理長コソギ兄貴(マ・ドンソク)に出会います。強烈な最初の挨拶を交わしてすぐ人生最大の敵となったコソギ兄貴とテギル。世の中で恐ろしいことはなかったテギルは、その店で想像もできなかったことと出会い、現実の世界を味わうことになります・・・。原題は「시동」です。

【独立・芸術映画】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・・・上映館数
1(新)・・失われた殺人の記憶(韓国)・・・・・12/11・・・・・・・・43,647・・・・・・・・・74,841 ・・・・・・・・・626 ・・・・・・・・・546
2(2)・・真実(日・仏)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12/05・・・・・・・・・4,779・・・・・・・・・26,212 ・・・・・・・・・194 ・・・・・・・・・・56
3(4)・・ローマ法王フランシスコ ・・・・・・・11/21・・・・・・・・・3,995・・・・・・・・・28,957 ・・・・・・・・・213 ・・・・・・・・・・22
4(3)・・ユニへ(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・・・11/14・・・・・・・・・3,575・・・・・・・・108,889 ・・・・・・・・・866 ・・・・・・・・・・50
5(27)・・死霊船 メアリー号の呪い・・・・・12/11 ・・・・・・・・2,285・・・・・・・・・・4,356・・・・・・・・・・32・・・・・・・・・・148

 1位と5位の2作品が新登場です。
 1位「失われた殺人の記憶」については上述しました。
 5位「死霊船 メアリー号の呪い」は、アメリカのホラー。観光客を相手にレジャー旅行業をしているデビッド(ゲイリー・オールドマン)は、何かに憑かれたように娘と同じ名前を持つメアリーという船を買います。疑わしそうな目の妻サラ(エミリー・モーティマー)と違って、彼は心をときめかせて2人の娘と船員を乗せ、最初の航海に出ます。ところが乗船した彼らはだんだん奇妙な話し方と行動を始めます。そしてメアリー号にまつわる隠された真実が徐々に明らかになり、この家族の命を脅かす正体とぶつかることになります・・・。韓国題は「매리(メアリー)」だけですが、1月3日からヒューマントラストシネマ渋谷で行われる<未体験ゾーンの映画たち 2020>の中で上映予定があり、そのタイトルにしておきました。
コメント (3)
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