ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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韓国内の映画 NAVER映画の人気順位 と 週末の興行成績 [5月31日(金)~6月2日(日)]

2019-06-05 17:52:01 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
▸私ヌルボ、ほとんどの映画は出演俳優と関係なくまず作品内容、そしてある程度監督で観る映画を決めています。しかし1日に観たブルク13で観た「さよならくちびる」は俳優で決めました。門脇麦小松菜奈です。その主演2人が演じるインディーズの女性デュオとマネージャーの青年(成田凌)の3人の解散前の全国ツアーの物語ですが、いろんな見方が可能な作品。三角関係、青春の成長物語、女性同士の友情(?)、音楽の力等々。人間関係と個々の内面が濃密である反面、描き方は(不親切なくらいに)淡々としていて、そのあたりで評価が分かれるかも・・・。小松菜奈は門脇麦の3学年下で23歳か。演技力の成長が感じられました。

▸5月31日発行の「週刊金曜日」(1234号)。四方田犬彦さんの連載「犬が王様を見て、何が悪い?」を興味深く読みました。<韓国映画のナショナリズム自己陶酔は、これでいいのか?>というタイトルで、今の韓国映画、とくに「金子文子と朴烈」を批判したものです。この一文は、4月5日発行の同誌(1227号)で次のように書いたことに対して説明を求める読者の声にこたえたものです。
 (タプコル公園で見た全斗煥の裁判を要求する集会で)「・・・一人の若い女性が、なんと「不逞鮮人」と大書したゼッケンをしていた。たぶん『金子文子と朴烈』という国策反日映画の真似をしての、軽いコスプレ感覚なのだろう。ちょっとわたしには付いていけない感覚だが、本人はニコニコしている。」
 ・・・と、とくに「週刊金曜日」の愛読者にしてみればおそらく「裏切られた感じ」の記事内容で、疑問や抗議も当然でしょう。
 で、1234号の記事を見ると、まず<クッポン映画>という言葉の紹介。「国」と「ヒロポン」の合成語で、「観客を過剰なナショナリズムへ誘い、陶酔感を体験させることを目的としたフィルムのことらしい」と説明しているのはまあよいとして、例として「バトル・オーシャン 海上決戦(鳴梁)」「鬼郷」「軍艦島」をあげているのはちょっと疑問。<クッポン映画>はふつう「ノーザン・リミット・ライン 南北海戦(延坪海戦)」「仁川上陸作戦」等、保守陣営側の立場の作品を指す言葉なので、「鬼郷」は入らないと思います。韓国サイトで確認すると「軍艦島」は「国際市場で逢いましょう」等と共にクッポン映画になってました。(「鬼郷」も史実に基づいているか非常に大きな疑問はあるが・・・。)
 そして問題の「金子文子と朴烈」については四方田さんは以下の点を批判しています。
  ①原題が「朴烈」だけで金子文子の名前はない。
  ②金子文子は「現代韓国のフェミニストが理想とする女性像が具現化されている。しかも彼女は根本のところで韓国人男性に付き従う。」
  ③時代考証がデタラメさはキリがない。
  ④「登場人物のほとんどは朝鮮人の善玉と日本人の悪玉に分けられているだけ。」
  ⑤「何よりも致命的なのは、テロリズムとは何かという真剣で今日的な問いかけが、まったく見当たらないことだ。」

 ・・・いやあ、四方田さんの本はこれまで映画関係以外にもいろいろ読んで勉強させていただきましたが、この記事については同感した部分は2割程度かも。上記②の「彼女は根本のところで韓国人男性に付き従う」というのは誤解だろうし、「朝鮮人の善玉と日本人の悪玉」というほど単純化されてもいないし、そもそも国家を否定するアナーキストが主人公のクッポン国策映画なんてありえないでしょう。
 また⑤についてはこの映画に限ったものでもありません。同じイ・ジュンイク監督の「空と風と星の詩人 尹東柱の生涯」についても「尹が(風評にすぎない)生体実験の犠牲になった」と主張していることを批判していますが、⑤と同様韓国の成立期からの教育やメディア等によって形成されてきた国民の<一般常識>の問題でしょう。
 まあ、一般論としては私ヌルボも<韓国のナショナリズム自己陶酔>は全然とは思いませんがね。
 もしかして、「週刊金曜日」誌上でさらに論議が続くかな?

         ★★★ NAVERの人気順位(6月4日現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】
       ※[記者・評論家による順位]とも、評点の後の( )は採点者数。初公開から1年以内の作品が対象。
        「初登場」とは、本ブログでの初登場の意。

①(2) オーバー・ゼア(韓国)  9.67(12)
②(3) 痛いほど愛する(韓国)  9.64(140)
③(4) 僕のヒーローアカデミア THE MOVIE
       ~2人の英雄~(日本)  9.62(134)
④(6) カペナウム  9.60(2,762)
⑤(7) 大人になれば(韓国)  9.59(145)
⑥(-) ボヒとノギャン(韓国)  9.50(46)
⑦(9) アラジン  9.48(7,581)
⑧(8) 教会のお兄さん(韓国)  9.44(1,034)
⑨(-) ソウニの膝(韓国)  9.44(18)
⑩(-) カウンターズ(韓国)  9.41(216)

 新登場の⑥⑨を含めて韓国映画が7作品になりました。
 ⑥「ボヒとノギャン」は、韓国のドラマ。なぜか母親に女の子のような名前をつけられた中学生ボヒ(アン・ジホ)は気の小さい少年です。一方同じ日の同じ時間に生まれた親友のノギャン(キム・ジュア)は怖いもの知らずの女の子。男は強くなければダメだという現実の中、ボヒは当然のように学校ではからかわれたりしています。ある日、ボヒはお母さんに彼氏ができたことを知り、同時に自分のお父さんが死んでいなかったことを知ることになります。お母さんに対する反発から、ノギョンとお父さんをお父さんを探しに行くことに決めたボヒでしたが、いとこのお姉さんやそのボーイフレンド、あるいはお父さんの友人等々、突然いろんな人々が押し寄せ始めて、お父さん探しは思ったほど簡単ではないことがわかります・・・。はたしてお父さんがこの世に存在するのか、私はどこから来たのだろうか? さらには自分が本当に欲していることは何なのか、といったことを考えることに。そんなボヒの成長の物語です。なお、主演のアン・ジホは本作の演技により第44回(2018)ソウル独立映画祭で独立スター賞を受賞しました。原題は「보희와 녹양」です。
 ⑨「ソウニの膝」は、韓国のドラマ。第43回(2017)ソウル独立映画祭長編部門特別招待作です。主人公は地方の高校バスケ部の女子ソウニ(パク・セウン)。バスケットボールの才能はありませんが、好きな心だけはいっぱい! ところが、そのバスケ部が部員不足で廃部の危機に。成績も良くないし、友人関係もあんまり・・・といった状況で、けっこう仲のいい友人ユジン(パク・アイン)と同級の男子ヨンシク(パク・ソンウ)が一緒に入部してきて、ソウニは夢に向かって再スタートを開始するのですが・・・。と、スポーツ成長ドラマなのですが、ポイントは、スポーツ少女の話でもスポコン物ではなく、「実力不足でもも、応援してくれる人かいなくても屈せずに好きな気持ちだけで走り抜ける」というソウンの主体的な姿が見どころ」ということ。原題は「소은이의 무릎」です。

     【記者・評論家による順位】

①(-) 寄生虫[パラサイト](韓国)  9.06(16)
②(1) 顔たち、ところどころ  8.86(7)
③(2) 万引き家族(日本)  8.13(8)
④(-) アニエスによるヴァルダ  8.00(6)
⑤(4) ストライキ前夜(韓国)  7.71(7)
⑥(6) アベンジャーズ/エンドゲーム  7.62(13)
⑦(7) キム君(韓国)  7.57(7)
⑧(8) サスペリア  7.40(5)
⑨(10) カペナウム  7.33(9)
⑩(-) ノン・フィクション  7.17(6)

 ①④の2作品が新登場です。
 ①「寄生虫[パラサイト]」についてはは後述します。
 ④「アニエスによるヴァルダ」(仮)が新登場です。3月29日アニエス・ヴァルダ監督が癌のため90歳で亡くなりました。2月のベルリン映画祭に際し、ヴァルダ監督は新作ドキュメンタリーを携えて出席したとのことです。その作品がまさにこれ! 過去65年間の彼女の作品を通じて、感動を共にした観客に愛と喜びを伝えます・・・。韓国題は「아녜스가 말하는 바르다」です。日本公開は、あるとは思いますが・・・。私ヌルボ、ヴァルダ監督作品は多く観てきたわけではありませんが、とくに強く印象に残っているのは日本初公開の時期徳島で観た「幸福」と、昨年観た「顔たち、ところどころ」です。

      ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績5月31日(金)~6月2日(日) ★★★
           タイムリーなパルムドール受賞 「寄生虫[パラサイト]」土・日は1日の観客約100万

【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・・累積収入・・・上映館数
1(新)・・寄生虫[パラサイト](韓国) ・・・5/30 ・・・・・・・・2,788,961 ・・・・・3,366,916・・・・・・・・29,185 ・・・・・・1,947
2(1)・・アラジン ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5/23 ・・・・・・・・・737,059 ・・・・・2,150,034・・・・・・・・18,017・・・・・・・・994
3(22)・・ゴジラ キング・オブ・モンスターズ・・5/29・・181,135・・・・・・・301,252・・・・・・・・・2,596・・・・・・・・620
4(2)・・悪人伝(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・5/15 ・・・・・・・・・159,427・・・・・・3,280,877・・・・・・・・28,445・・・・・・・・620
5(新)・・0.0MHz(韓国) ・・・・・・・・・・・・・・5/29 ・・・・・・・・・・62,658 ・・・・・・・107,081 ・・・・・・・・・・846・・・・・・・・409
6(4)・・アベンジャーズ/エンドゲーム・・4/24・・・・・・・・33,239・・・・・13,843,987・・・・・・・121,348・・・・・・・・173
7(3)・・ガールコップス(韓国)・・・・・・・・5/09 ・・・・・・・・・・11,864・・・・・・1,618,621・・・・・・・・13,743・・・・・・・・213
8(新)・・ピーター・パン ・・・・・・・・・・・・・5/30 ・・・・・・・・・・・9,274 ・・・・・・・・・9,582 ・・・・・・・・・・・72・・・・・・・・129
       ネバーブックを求めて
9(9)・・教会のお兄さん(韓国)・・・・・・・・5/16 ・・・・・・・・・・・7,516 ・・・・・・・・65,399 ・・・・・・・・・・541・・・・・・・・・77
10(5)・・幼い依頼人(韓国)・・・・・・・・・・・5/22 ・・・・・・・・・・・7,071 ・・・・・・・194,186・・・・・・・・・1,605・・・・・・・・172
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 今回の新登場は1・3・5・8位の4作品です。
 1位「寄生虫{パラサイト}」は、ポン・ジュノ監督の話題の新作ですが、同時代的人間ドラマであるとともに、コメディ、犯罪ドラマ等々の要素もあります。基本構図は対照的な2家族。ギテク(ソン・ガンホ)の家族は全員が無職で、明日の生活もままならない状態。料金未納で家族全員の携帯電話が切られたりもしています。住んでいる所は低家賃の代表というべき半地下。それでも家族仲良く暮らしています。もう1つの家族は、グローバルIT企業を経営しているパク社長(イ・ソンギュン)の一家。コチラは丘の上にある有名な建築家が建てたという邸宅に住まいしています。
 ある日、ギテクの長男のギウ(チェ・ウシク)が名門大学生の友人の口利きで久しぶりに高収入の家庭教師の仕事が入って来ます。その先がパク社長の家でした。家族皆の期待の中、ギウがパク社長邸に着くと、若くて美しい奥様ヨンギョ(チョ・ヨジョン)が迎えてくれました。しかし、こうして始まった2家族の出会いの後に、収拾のつかない事件が待っていたのです・・・。<共生>を望んでいたのにうまくいかず、<寄生>の境遇に追い込まれた人々。そんな現代の格差社会に焦点をあてた作品です。韓国題は「기생충」です。
 3位「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」は、もちろん日本でも5月31日から公開されています。韓国題は「고질라: 킹 오브 몬스터」です。私ヌルボ、キングギドラにとくに思い入れがないのは、「ゴジラ」(1954)に続く「空の大怪獣ラドン」(1956)、「大怪獣バラン」(1958)あたりは小学生の頃観たものの、モスラやキングギドラの登場は中学生になってからだったので観てないという事情によるものです。
 5位「0.0MHz」は、韓国のホラー。<0.0MHz>は超常現象の謎を分析するサークル。そのメンバーたち男女5人が霊を呼ぶ周波数を証明するためにある所で見つけた廃屋で実験を始めます。胸の真ん中に棒針を差し込んだ人形を金だらいに入れて水を張ります。他の領域帯の周波数を持った存在が接近するとラジオノイズが変化を起こすという仕掛けです。そして塩を振って霊が怨から出られないようにした後、霊を呼び出す呪文を唱えます。「ここで死んだ人は出てきてお掛けください・・・」。それが恐怖の始まりでした・・・。原題はもちろんそのまま「0.0MHz」です。
 8位「ピーター・パン ネバーブックを求めて」(仮)は、アイルランドのアニメ。夏至の日はネバーランドで1日だけのお祭りが開かれます。ところが、楽しく過ごそうとしていたピーターパンとその友人たちの前に永遠のライバル、フック船長が登場します。ネバーランドの知られていない危険な秘密が書かれた魔法の本ネバーブックを手に入れたフック船長は、ピーター・パンとウェンディ一たちを危険な状況に追い込み始めます。はたしてピーターパンは、大きな危険にさらされたネバーランドを救うことができるでしょうか・・・? 韓国題は「피터팬: 후크 선장과 결투의 날(ピーターパン:フック船長と決闘の日)」です。

【独立・芸術映画】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・・・上映館数
1(1)・・教会のお兄さん(韓国) ・・・・・・・・・5/16・・・・・・・・・・7,516 ・・・・・・・・65,399 ・・・・・・・・・・541 ・・・・・・・・・77
2(新)・・her/世界でひとつの彼女・・2014/5/22・・・・・・・・・3,165 ・・・・・・・361,619・・・・・・・・・2,945 ・・・・・・・・・59
3(9)・・ディリリとパリの時間旅行・・・・・5/29・・・・・・・・・・2,358 ・・・・・・・・・4,641 ・・・・・・・・・・・38 ・・・・・・・・・36
4(新)・・となりのトトロ(日本)・・・・2001/7/28・・・・・・・・・・1,140 ・・・・・・・・・1,743 ・・・・・・・・・・・17 ・・・・・・・・・・4
5(2)・・サスペリア・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5/16 ・・・・・・・・・・・793 ・・・・・・・・30,890・・・・・・・・・・・283 ・・・・・・・・・19

 2・3・4位の3作品が新登場です。
 2位「her/世界でひとつの彼女」は、スパイク・ジョーンズ監督による未来物ラブ・ストーリーの再上映。韓国題は「그녀」です。
 3位「ディリリとパリの時間旅行」は、「夜のとばりの物語」等で知られるフランスのミッシェル・オスロ監督によるアニメ。物語の舞台は19世紀末から20世紀初頭、新たな芸術や科学技術が花開いた<ベル・エポック>と呼ばれた頃のパリ。そこで少女が狙われる誘拐事件が発生します。主人公のディリリはニューカレドニアからやってきた女の子。彼女はパリで出会った最初の友人オレルとともに、この誘拐事件の謎を解いていきます。エッフェル塔など美しいパリの景物を背景に、ディリリたちはキュリー夫人やパスツール、ピカソ、マティス、モネ、ロートレック、プルースト、サラ・ベルナール等の協力を得て事件解決に取り組みます・・・。この作品、その当時の文化の華やかな面ばかりでなく、影の部分、とくに女性にとって受難の時代であったことに関心を向けている点に注目。韓国題は「파리의 딜릴리(パリのディリリ)」。日本では8月下旬から全国公開されます。あ、もう→公式サイトができてますよ。近所のシネマ・ジャック&ベティでも上映されるゾ、これは観に行かなくっちゃ。
 4位「となりのトトロ」は、他の宮崎駿監督作品とともに韓国でも根強い人気。韓国題は「이웃집 토토로」です。
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