ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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韓国内の映画 Daumの人気順位 と 週末の興行成績 [1月8日(金)~1月10日(日)]

2016-01-12 23:41:17 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
 1つ前のキネ旬ムック「韓国映画で学ぶ韓国の社会と歴史」についての記事(→コチラ)にも目を通して下さいマセ。

 昨年ちょうど100本の映画を(映画館で)観た私ヌルボですが、今年はまだ全然観ていません。昨年も最初に観たのは1月23日でした。一昨年は1月28日が最初。どうもこの時期、ちょっと忙しいのと、どうも観たい映画がなぜか少ないような・・・。
 観たい映画がとくにない場合どうするか? どうするかもなにも、観に行かないに決まってるでしょ、というのがふつうのジョーシキ人。ところが映画オタクの場合はいろいろ情報を集めては観に行く映画を無理やり(?)決めて出かけます。
 私ヌルボの情報源は、新聞の映画評(→毎日朝日日経読売)、「週刊文春」のシネマチャート(→コチラ)、<ぴあ映画生活>の「クチコミ満足度ランキング」(→コチラ)、そして<こんな映画は見ちゃいけない>(→コチラ)や<三角絞めでつかまえて>(→コチラ)等々のブログです。
 これらをあれこれ見ていると、なんか「これは観たい! 観るゾ!」という気になる作品が見つかってしまうのです。上映館を調べると、何ヵ月か前に近所のシネマジャック&ベティでやっていたことに気づいたりしたことも過去何度か・・・。それでもキネカ大森とか新百合丘とか下高井戸まで足を運んだりして・・・。ハハハ(泣笑)。

 1月16日から「殺されたミンジュ」が始まりますが、キム・ギドク監督作品はどうも抵抗感があるというか、観に行く時には覚悟みたいなものが必要なんですよねー。何日も経ってから「仕方ないから行くか」という感じ。
 まあ近場(桜木町)で「ブリッジ・オブ・スパイ」でも観てこようかな?

「朝鮮日報」1月8日掲載の「封切映画 ぴったり10字評」 (ハングル文も訳文も10字です。)
 「ユース」
  老い、希望と諦めの共存★★★★
 「アーロと少年」
  20年の技術の集約体 ★★★☆
 「捕まえたら生きる」
  この映画、救うのは大変 ★★
 「ヘイトフル・エイト」
  貯水池の犬たち、西部へ ★★★★
 「私を忘れないで」
  記憶には値しない映画 ★★☆
 「ポイントブレイク」
  原作監督は怒り心頭か ★★
 「捕まえたら生きる」は韓国のアクション・コメディ。高校生4人組にカツアゲをくらった2人のドジ刑事がその4人組を捕まえるべく、追撃を始めるのですが・・・。タイトルの訳は他のサイトにならいましたが、「捕まえないと助からない」と訳した方がよさそう。他の5作品は下の記事中で紹介しています。なお、「貯水池の犬」とはタランティーノ監督の「レザボア・ドッグス」の訳。その意味については→コチラ参照。

           ★★★ Daumの人気順位(1月12日現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】

①悪い国(韓国)  9.2(121)
②内部者たち:ジ・オリジナル(韓国)  9.2(553)
③JSA(韓国)  8.9(366)
④ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ  8.9(47)
⑤ラブ・アクチュアリー  8.9(666)
⑥エターナル・サンシャイン  8.8(521)
⑦トーク・トゥ・ハー  8.8(55)
⑧ピアノの森(日本)  8.7(152)
⑨内部者たち(韓国)  8.4(2716)
⑩フランス組曲  8.4(3)

 新登場の作品はありません。

     【専門家による順位】

①ヘイトフル・エイト  8.6(5)
②シチズン・フォー  8.2(5)
③今は正しいがその時は間違いだ(韓国)  8.2(4)
④ボーダーライン  7.8(6)
⑤ザ・ロブスター  7.6(6)
⑥アスファルト  7.5(4)
⑦リトルプリンス 星の王子さまと私  7.3(3)
⑧スター・ウォーズ/フォースの覚醒  7.2(7)
⑨ユース  7.0(7)
⑩海街diary(日本)  7.0(6)

 ①と⑨の2作品が新登場です。
 ①「ヘイトフル・エイト」については後述します。
 ⑨「ユース」(仮)は、イタリアのソレンティーノ監督によるヒューマンドラマで、2015年のカンヌ国際映画祭コンペティション部門の上映作。80歳を迎えて表舞台から退いたイギリス人の作曲家で元・指揮者のフレッド(マイケル・ケイン)は、親友の映画監督ミック、娘のレナと共にアルプスの高級リゾートホテルにやってきます。最後の脚本執筆に取り組むミックに対し、フレッドはそんな意欲はないようすで淡々と日々を過ごしています。そんなある日、エリザベス女王の使者という男が現れてフレッドの代表作を女王のために披露してほしいと持ちかけるのですが・・・。韓国題は「유스」。日本公開は4月16日です。

         ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績[1月8日(金)~1月10日(日)] ★★★
         700万人超えの「ヒマラヤ」に代わりディズニーのアニメ「アーロと少年」が1位に

【全体】

順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・週末観客動員数・・・累計観客動員数・・・累積収入・・・上映館数
1(新)・・アーロと少年 ・・・・・・・・・・・1/07 ・・・・・・・・・・・458,809 ・・・・・・・・・533,369・・・・・・・・・・4,004 ・・・・・・・・788
2(2)・・内部者たち ・・・・・・・・・・・・・12/31・・・・・・・・・・・384,467・・・・・・・・1,530,106・・・・・・・・・12,560・・・・・・・・・811
       :ジ・オリジナル(韓国)
3(1)・・ヒマラヤ(韓国) ・・・・・・・・・・12/16 ・・・・・・・・・・・374,927・・・・・・・・7,080,991・・・・・・・・・55,022・・・・・・・・・670
4(新)・・私を忘れないで(韓国)・・・1/07 ・・・・・・・・・・・231,118・・・・・・・・・・301,792・・・・・・・・・・2,452・・・・・・・・・556
5(3)・・HEROCK/シャーロック ・・1/02・・・・・・・・・・・・217,604・・・・・・・・1,160,137・・・・・・・・・・9,090・・・・・・・・・574
       忌まわしき花嫁
6(新)・・X-ミッション・・・・・・・・・・・・・1/07 ・・・・・・・・・・・152,857 ・・・・・・・・・187,171・・・・・・・・・・1,495・・・・・・・・・406
7(27)・・映画クレヨンしんちゃん・・1/07 ・・・・・・・・・・・・96,994・・・・・・・・・・116,835・・・・・・・・・・・・876・・・・・・・・・396
       オラの引越し物語~サボテン大襲撃~(日本)
8(5)・・モンスター・ホテル2・・・・・・12/24 ・・・・・・・・・・・・61,425 ・・・・・・・・1,452,317・・・・・・・・・10,642・・・・・・・・・342
9(新)・・ヘイトフル・エイト・・・・・・・・1/07・・・・・・・・・・・・・53,037 ・・・・・・・・・・・65,305・・・・・・・・・・・・551・・・・・・・・・162
10(4)・・スター・ウォーズ・・・・・・・・12/17 ・・・・・・・・・・・・48,395 ・・・・・・・・3,232,210 ・・・・・・・・・28,007・・・・・・・・・261
       /フォースの覚醒
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 「ヒマラヤ」は700万人を超えました。800万人はなんとか超えそうな感じですが・・・。
 今回の新登場は1・4・6・7・9位の5作品です。
 1位「アーロと少年」は、ディズニーのファンタジー・アニメ。
もし2億5千万年前、隕石が衝突していなければ恐竜は絶滅しなかったはず。そんな仮定に基づいた物語。そこでは、文明と言葉を持つ恐竜たちが、言葉を持たない人間たちと共存しています。
タイトルのアーロは体こそ大きいが臆病な恐竜の名前。そのアーロが人間の少年スポットと出会い、
冒険を繰り広げます。韓国題は「굿 다이노」日本公開は3月12日です。
 4位「私を忘れないで」は、え、カズオ・イシグロ?と思ってしまいましたが、チョン・ウソンとキム・ハヌル共演によるロマンスです。ソグォン(チョン・ウソン)は、交通事故で過去10年間の記憶を失い、家族や友人どころか自分のこともよくわからない状態。ある日病院でそんな彼を見て涙を流す見知らぬ女性と出会います。ソグォンはその女性チニョン(キム・ハヌル)と共に過ごして新たな幸せを感じ、チニョンもまた幸せを感じます。しかし、少しずつソグォンの過去の記憶が戻し始めると、チニョンは心が揺らぎ始めます。記憶が全て戻った時、はたしてソグォンが自分を求めてくれるかどうか・・・。原題は「나를 잊지 말아요」です。
 6位「X-ミッション」は、キアヌ・リーブス主演の「ハートブルー」(1991)をリメイクしたクライム・アクション。FBI捜査官のジョニー・ユタ(ルーク・ブレイシー)が、ボーディ(エドガー・ラミレス)をリーダーとするエクストリーム・スポーツ(サーフィンやスカイダイビング)仲間(実は犯罪者集団)に加わって潜入捜査をすることになりますが・・・。韓国題は「포인트 브레이크」。日本公開は2月20日です。
 7位「映画クレヨンしんちゃん オラの引越し物語~サボテン大襲撃~」は、
日本では昨年4月公開。「初めて春日部を離れ、なんとメキシコに移り住む」ということで、私ヌルボ、韓国版しんちゃんのチャング(짱구)はどこに住んでいるのかちょっと調べたところ、떡잎마을つまり<双葉村>であることが判明しました。それにしてもタイトルが長い! 韓国題も「짱구는 못말려 극장판: 나의 이사 이야기 선인장 대습격」です。
 9位「ヘイトフル・エイト」は、アメリカのサスペンス。あのタランティーノ監督による密室ミステリーです。舞台は真冬の山のロッジ。そこで殺人事件が発生するのですが、そこに閉じ込められた男女8人が何かワケありで、全員嘘をついていた? 彼らの話や身振り等から事件の真相が次第に明らかになっていきます・・・。韓国題は「헤이트풀8」です。日本公開は2月27日。これはおもしろそうなフンイキ。

【多様性映画】

順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(新)・・ユース・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1/07 ・・・・・・・・・・・・14,046・・・・・・・・・・・・19,266 ・・・・・・・・・・・・152 ・・・・・・・・・64
2(1)・・海街diary(日本) ・・・・・・・・・・・・・・・・・12/17 ・・・・・・・・・・・・・4,297・・・・・・・・・・・・70,201 ・・・・・・・・・・・・565 ・・・・・・・・・37
3(5)・・ラスト・タンゴ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12/24・・・・・・・・・・・・・・・985・・・・・・・・・・・・・5,145 ・・・・・・・・・・・・・40 ・・・・・・・・・18
4(3)・・エターナル・サンシャイン・・・・2005/11/10・・・・・・・・・・・・・・・949 ・・・・・・・・・・490,043・・・・・・・・・・・3,729 ・・・・・・・・・・9
5(6)・・トーク・トゥ・ハー・・・・・・・・・・・・2005/11/10・・・・・・・・・・・・・・・618・・・・・・・・・・・・・5,328・・・・・・・・・・・・・・40 ・・・・・・・・・12

 1位「ユース」が新登場ですが、これについては上述しました。

キネ旬ムック「韓国映画で学ぶ韓国の社会と歴史」は、たしかに現代韓国の社会と歴史が学べる

2016-01-12 10:10:33 | 韓国映画(&その他の映画)

 <韓流時代劇ムックで学ぶ朝鮮王朝の歴史>(→コチラ)という記事を書いてからもう5年ちょっと経ちました。
 そこで紹介した3冊のムックは、その後必ずしも毎年新版が出ているわけでもありませんが、韓国ドラマファンの固定層は相当いるし、とりあえずは同じようなムック等が出なくなることはなさそうです。
 一方、韓国映画の現在はというと、2000年頃からの5、6年間の熱気が影をひそめてそのまま10年経ってしまった、という感があります。
 そんな中、キネマ旬報社が「韓国映画で学ぶ韓国の社会と歴史」というムックを最近刊行(12月28日発売)したことは、韓国映画ファンとしてうれしいことです。(はたしてキネ旬は採算が取れると見込んでいるのでしょうか??)

 そこでさっそく購入して目を通してみました。
 構成は、大きく<歴史><社会>に分けられています。

 <歴史>といっても、古代からではなく、1910年からの近現代史に限っています。
 [Ⅰ 1910~45年]=日本の統治期、[Ⅱ 1945~62年]=李承晩の独裁政権とその崩壊、[Ⅲ 1962~79年]=朴正煕の独裁政権、[Ⅳ 1979~93年]=全斗煥・盧泰愚政権と民主化闘争、[Ⅴ 1993~2015年]=民主主義体制 ・・・という時代区分は妥当なところでしょうが、金泳三の文民政権がスタートした1993年よりも第六共和国発足の1987年の方がいいのでは? もしかして政治的立場によって違う? 

 注意を要することは、各映画作品はそれが作られた年とは関係なく、そこに描かれている時代の順に配置されているという点。
 したがって、一番最初に紹介されているのは「爆裂野球団」(2002年公開)です。(下左画像)
     
 そして済州島4・3事件を扱った「チスル」(2013年公開)は1948年となっています。(上右画像)

 次に<社会>についての記事は10のテーマに分け、映画を通じて現代韓国の社会問題や社会の変貌等を論じています。
 「南北問題」「家族」「恋愛」「スポーツ」そして「やくざ」も含めてほぼふつうに思いつきそうなテーマが大半ですが、中で個人的に興味をもったのは「鉄道」の項目。(下画像) そういう切り口もあるのですね。

 この本の執筆者は、韓流関係・映画関係のライターや編集者、翻訳家、映画研究者(崔盛旭さんや鄭樺さん)といった人たちです。西村嘉夫さん、下川正晴さんといった韓国映画ではおなじみの方も・・・。以前北朝鮮拉致問題関係の集会でお見かけした東京新聞・五味洋治編集委員は「南北問題」について書かれています。
 こうした顔ぶれからも見当がつくように、書名通り「現代韓国の社会と歴史が学べる」ムックでした。
 少し残念なのは、とくに近現代に重点を置いた分、時代劇等の名作が載っていないこと。また<歴史>の部の掲載作品は21世紀に入ってからの作品が大半で、ヌルボが好きな1970~80年代では「鯨とり」(1984年公開)の1作しか入っていません。韓国映画史上でも画期的な作品「風の丘を越えて/西便制」(1993年年公開)が載っていないのも悲しい・・・。

 最後にとても興味深かったのが、巻末に載っているこの本の監修者・執筆者・編集者計34人による<極私的韓国映画ベスト3>
 いやー、ずいぶん分散しています! 2人以上があげている作品は以下の12作品でした。1位=3点、2位=2点、3位=1点と換算して人数・点数の多いものから並べてみました。
 オアシス(4人・9点)・殺人の追憶(4人・9点)・八月のクリスマス(3人・8点)・サニー 永遠の仲間たち(3人・7点)・猟奇的な彼女(3人・6点)・ベテラン(3人・6点)・息もできない(3人・5点)・ほえる犬は噛まない(3人・5点)・子猫をお願い(2人・6点)・悪い男(2人・5点)・ペパーミント・キャンディー(2人・4点)・ディープ・ブルー・ナイト(2人・3点)
 こうしてみると、とくに意外なものはないですね。私ヌルボが2010年に書いた<★韓国映画ベスト20★>(→コチラ)の12位までと比べると、5作品が重なっています。ま、そんなとこでしょう。
 34人の中で、個人的に注目したのは次のお二方のベスト3。
      
 鄭琮樺(チョン・ジョンファ)さんは、昨年11~12月の<韓国映画1934-1959創造と開花>で「君と僕」「迷夢」等々についてとても詳しいトークをされた映画史研究者です。その方が「馬鹿たちの行進」を2位にしている点が「わが意を得たり」といったところです。(ヌルボのペスト20では20位。) また下川正晴さんは1980年代の佳作を観たことが韓国映画がすきになったという点、またそれらがアン・ソンギの主演作品であるという点もヌルボとまさに同じで共感を覚えました。
 ※現在書店で発売中の「正論」2月号に、「幻の朝鮮映画「授業料」と小学生作文にみる日本統治下のリアル」と題した下川正晴さんの記事が載っています。「嫌韓」色の濃い記事が多い「正論」ですが、これは一読に値する記事です。