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ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

①韓国文学②韓国漫画③韓国のメディア観察④韓国語いろいろ⑤韓国映画⑥韓国の歴史・社会⑦韓国・朝鮮関係の本⑧韓国旅行の記録

高校生にすすめる本360冊(1998年版&増補) [5]

2013-09-01 16:13:41 | 高校生にすすめる本360冊

 今回は、伝記・日本語&読書関係の教養書・古典です。
 キョーレツな個性の持ち主の伝記が多いと思われるかも・・・。しかし、伝記になるような人物はたいていそういう人ではないかなー。逆に、品行方正で良識をわきまえていて、人と争ったり人に迷惑をかけたりしない人物の伝記なんておもしろくなさそうではないですか。

☆印はとくに推奨。×印は品切れまたは絶版中の本(多すぎる!) △は絶版・品切れでも単行本なら出ている本。
105杉森久英天才と狂人の間河出文庫105~112=伝記。105は今は忘れ去られた島田清次郎という<天才>小説家、106は大正期の婦人運動家で、大震災の直後夫のアナーキスト大杉栄とともに官憲に虐殺された伊藤野枝、107は歌人与謝野晶子の生涯。106と107の、強烈な個性と波瀾に満ちた生き方にはただただ唖然。カワユサばかり求め安定を望む現代ギャルがますますくだらなくみえてくる。女生徒諸君必読。108、純粋でひたむきな光太郎の愛がなぜ智恵子の心をむしばんだのか? 読みやすい本。109は近代日本経済の礎を築いた大人物渋沢栄一の伝記。読む側まで熱くなる。110は著者の母がモデル。本好きの主人公が読んだ本を通して、大正~敗戦の時代と、その中を生きた無名の知的な女性の人生を描く。111は、単なる美術史のわくを越えて、社会との関わりの中で女性のあり方を考える深い問題提起を含む。112は、学校ではあまり<評価>されなかったものの、自分のやりたいことを追求しつづけてミキサー、ナイフ職人、動物写真家、ソムリエ等のエキスパートになった人たちの青春時代。学校がすべてではない。
113=なぜ生命の危険を冒し、つらい思いをしてまで登山家たちは山に挑むのか? 栄光と悲劇は紙一重、という例は多い。
114・115=日本語と日本文化の奥深さを知るために。115はさまざまなことわざ、言葉遊び等とその背景。伝説・民話、そして雑学にも詳しくなれる。古人の知恵とユーモアには敬服。
116・117=教養とは単に物事を知っているだけのことではない。これらを読めばわかるはず。森本さんの本はどれも深い内容をとてもわかりやすい言葉で書いてくれている。
118~128=日本の古典。現代語でも難解な「源氏物語」や、おじみの「枕草子」だけが古典だと思い込むのは不幸というもの。以下の作品はどれも原文でそのまま読めるはず。118はバラエティに富む説話の数々。弟分の「宇治拾遺物語」(角川文庫)もよろしく。119は美文による絵画的描写がいい。120、時を越えて人情といったものが相通じる思いがする。たとえば鬼瓦を見て上京中の武士がなく。「国で待つ妻を思い出した」というわけだ(笑)。121は戦国時代の歌謡集。現代にも通じる感覚。声に出して読んでみて。-「世間(よのなか)は霰(あられ)よなう 笹の葉の上の さらさらさっと降るよなう」。122は「源氏物語」に先立つ作品で、レッキとした貴族文学だが、音楽を素材にした、スケールの大きい、SFの要素もある物語。原文が難しい古典は現代語訳でけっこう。それなら「徒然草」も全部読める。236段の狛犬の話など何度読んでもおかしい。123こそ高校生向きのテキスト。ぬゎんと、原文で読んで意味がすいすいわかる! おまけにおもしろい!! なぜ岩波は復刊しないんだ!? 私は探しに探して大阪の古本屋で大枚千二百円払って買ったんだぞっ! 124はこれこそグロの極致! 芝居よりも映画よりも怖い! 心底怖い!! 125はパロディ精神に溢れた江戸時代の庶民向け読み物である黄表紙の集成。金があり余って困る話の「莫切自根金生木」(きるなのねからかねのなるき=回文!)など本当に笑える。126も、読むとつい笑い声が出てしまう。電車内で読むときには気をつけよう。127は江戸時代人のユーモアと反骨精神に共感。
128=「うれひつゝ岡にのぼれば花いばら」-蕪村の句には現代人の感覚に通じるものがある。「北寿老仙をいたむ」等の詩も心をうつ。蕪村は絵もすばらしい。いつも溜め息が出る。

106
瀬戸内晴美美は乱調にあり角川文庫

107
田辺聖子千すじの黒髪文春文庫
108駒尺喜美高村光太郎のフェミニズム朝日文庫
109城山三郎雄気堂々新潮文庫
110林真理子本を読む女新潮文庫
×
111
若桑みどり女性画家列伝岩波新書
112立花隆青春漂流講談社文庫
113ウィンパーアルプス登攀記講談社学芸文庫

114
池田弥三郎日本故事物語河出文庫
115金田一春彦ことばの歳時記新潮文庫
×
116
准陰生読書こぼればなし岩波新書
117森本哲郎ことばへの旅角川文庫
118
今昔物語集角川文庫

119

平家物語角川文庫

120

能狂言岩波文庫

121

閑吟集岩波文庫

122

[現代語訳]宇津保物語講談社学術文庫

123
井原西鶴西鶴諸国咄岩波文庫

124
鶴屋南北東海道四谷怪談岩波文庫
125
江戸の戯作絵本教養文庫
126興津要(編)古典落語講談社文庫
127なだいなだ江戸狂歌岩波同時代ライブラリー
128芳賀徹與謝蕪村の小さな世界中公文庫


 父親の蔵書だった「日本故事物語」を読み耽ったのは高校生の時だったかな? 「いすかのはしの食い違い」「洞ヶ峠」等々の言葉を知ったり、「のどが鳴る早や死にかかる松右衛門(「のどかなる林にかかる松右衛門」のもじり)、「ながきよの とをのねぶりの みなめざめ なみのりぶねの をとのよきかな」(回文)のような言葉遊びのおもしろさに目覚めたりと、とくに印象に残っている本です。そういえば、「閑吟集」にある「むらあやでこもひよこたま」という歌も載っていたなー。(彼氏を待ち焦がれる女性の歌。逆に読む。)

 116の「一月一話 読書こぼればなし」の淮陰生が中野好夫であることは後に知りました。

 明治時代以降、近代化が進展するにつれて、それまで音読がふつうだった読書が黙読に変わっていったそうです。
 ここにあげた古典作品も、「声に出して読みたい」と言われなくても、声に出して読みたくなる本がそろっています。

高校生にすすめる本360冊(1998年版&増補) [4]

2013-08-23 23:21:48 | 高校生にすすめる本360冊

 今回は詩集・歌集と、日記・自伝あるいは自伝的小説です。
 純文学作品と比べると、自伝関係では迷うことなく「これはぜひ読んでみて!」と言える本が並んでいて、ここにあげた以外にもたくさんあります。

☆印はとくに推奨。×印は品切れまたは絶版中の本(多すぎる!) △は絶版・品切れでも単行本なら出ている本。
76三好達治三好達治詩集新潮文庫76=この詩人の戦争協力はさておき、日本的叙情溢れる作品は音感的にも、美しく懐かしく心に沁みる。萩原葉子「天上の花」(新潮)は萩原朔太郎の妹と達治とのすさまじい愛憎を記す。
77=現代の代表詩人の選集。できれば単行本(327・328)で。
78~81=国語教科書的短歌から離れて。78は、短歌のいろんな<ワク>をとっぱらったベストセラー。短歌が年配者だけのものではないという証拠は78以前にも79がある。「海を知らぬ少女の前に麦藁帽のわれは両手をひろげていたり」-コチラには青春の衒(てら)いがある。80は、貧苦のため高卒で家業の豆腐屋をついだ青年の、生活の闘いと鬱屈した心情を、短歌を軸に日記風に綴ったもの。81も同じく、あの60年代後半。当時特有の感性と<問題意識>をなお持続するこの歌集を、今の若い世代はどう受けとめるのだろう?
82=暗い時代、苦しい生活の中にあって、閉ざされた情熱は読む身につらい。日記や詩、評論も読んでほしい。
83=明治初期、群馬のフランス式製糸工場に率先して働きに出た氏族の少女の日記。溌剌とした気持ちが時代を越えて伝わってくる。
84~104=自伝もしくは自伝的小説。どれも感動的な本だ。みんな夢を抱き、強い意志を持ち、困難にめげず努力を積んだ人ばかり。読んでる自分が恥ずかしくなる。そしてどれも歴史の勉強にもなる。84~86は人気作家それぞれの青春。87・88は戦中の朝鮮で過ごした学生時代を内省的に(87)、あるいは感傷的に(88)描く。89は戦時中の東京帝大生の日々。自由が窒息させられていく恐ろしさ。著者は今も歳を感じさせないリベラリスト。90は著名な山岳写真家の修行時代。91は旧石器文化研究の端緒をつくった民間考古学者。305「かもしかみち」同様信州白樺教育の一端が垣間見られる。92・93は在日朝鮮人作家。(高さんの息子は「ぼくは12歳」(ちくま)という衝撃的な詩集を残して自殺した岡真史君。) 93はこの題が決して大げさではないほどの強烈な人生に圧倒される。94は戦前の封建的な地方の風土と不遇な境遇にめげず向学心を燃やす少女。95はプロ棋士(将棋)。96は卓球世界チャンピオン。昔の選手は逆境の中よく練習した。97は明治人の生活と心情を知る優れた史料。98の著者は5.15事件で暗殺された犬養毅首相の孫。99は横浜生まれで類似から戦後まで長く活動した社会主義者の自伝。<主義者>以前にヒューマニストなのだ。現在の<平和>に安住してる人たち、社会主義への先入観を捨てて読むべし。100・101は作家の自伝的小説。100は大正末の小樽を舞台に、恋愛や文学を通して文学青年の夢、悩み、野心を描く。純粋で悩み多き、これぞ典型的青春像だったんだなあ、昔は。101は明治青年の意気と情熱に富んだ健全な上昇志向。(いつ頃から<出世するのは悪いヤツ>という見方が定着したのだろう?) 読む方も熱くなる。それにしても、<小さな幸せ>という大敵に八方取り囲まれた現代青年にとって、語るに足る人生を生きることはもう不可能に近いのだろうか? でも102は相当ドラマチック。現在の人気俳優がボクサーとしてまず有名になる以前のツッパリ少年の頃からを語る。103は対極的なフツーの少年だった推理作家の中高生時代。しかし舞台は102と同じ大阪。それもとりわけ濃ユイところ。
104=幸福にはほど遠かった作家の少年時代。ともに生きた32冊の名作を痛切な思い出とともに案内する。
77谷川俊太郎これが私の優しさです
(谷川俊太郎詩集)
集英社文庫
78俵満智サラダ記念日河出文庫
79寺山修司寺山修司青春歌集角川文庫
80松下竜一豆腐屋の四季講談社文庫
81道浦母都子無援の抒情岩波同時代ライブラリー

82
石川啄木啄木日記角川文庫

83
和田英富岡日記中公文庫
84北杜夫どくとるマンボウ青春記中公文庫
85井上ひさしモッキンポット師の後始末講談社文庫
86松本清張半生の記新潮文庫
87日野啓三台風の眼新潮文庫
88富島健夫生命の山河集英社文庫
89加藤周一羊の歌岩波新書
☆×
90
白簱史朗山と写真 わが青春岩波ジュニア新書

91
相沢忠洋「岩宿」の発見講談社文庫

92
高史明生きることの意味ちくま文庫
93梁石日修羅を生きる講談社現代新書

94
丸岡秀子ひとすじの道偕成社文庫

95
大内延介決断するときちくま文庫
×
96
荻村伊智朗卓球・勉強・卓球岩波ジュニア新書
97石光真清城下の人中公文庫
98犬養道子花々と星々と中公文庫
99荒畑寒村寒村自伝岩波文庫

100
伊藤整若い詩人の肖像新潮文庫
☆×
101
徳富蘆花思出の記岩波文庫
102赤井英和赤井英和のごんたくれ青春文庫
103東野圭吾あの頃ぼくらはアホでした集英社文庫
104宮本輝本をつんだ小舟文春文庫


 あら!? 矢沢永吉「成りあがり」(角川文庫)は入れたつもりだったが、何度目かと改定の時に落としちゃったかな? ※この本の取材構成は糸井重里とのこと。

 自伝に関連して。
 以前にもどこかで書きましたが、戦後生まれが大半となった今、身の上話がそのままドラマチック!という人はずいぶん少なくなったのでは、と思います。学校を出て就職して、約40年サラリーマン暮らしで、定年を迎えて、では身世打鈴(シンセタリョン)になりようもありません。もちろん私ヌルボもその1人。それはたしかに相対的に「幸せな人生」とも言えるのですが・・・。

 さて、今回のリストを自分自身見直してみて、これは絶対再読しなければと思ったのが富島健夫「生命の山河」。富島健夫(1931~98)の父母は1911年東洋拓殖の小作農に応募して朝鮮に渡ったとのことで、彼が生まれたのも京畿道華城市(現在)。この「生命の山河」も「朝鮮の自然の中で恋やケンカに明けくれた少年時代を詩情豊かに描く自伝的青春小説」なのですが、そのディテールはほとんど記憶に残ってなくて・・・。五木寛之の1つ年上で、引揚げてきた後早稲田大学文学部に進んだのも同じですが、38度線の北か南かの違いは大きかったかも。
 なお、日野啓三(1929~2002)は彼等より少し年上。生まれは東京で、小中学校時代を朝鮮で過ごしました。

 しかし、「啄木」の「啄」は中に点のある字が正字のはずですが、今の教科書等ではどうなってるのかな? パソコン入力ではどうしようもない。→コチラにいろいろ書かれていましたが・・・。そういえば、戸塚・平塚の塚も以前は点がついてましたね。多くの人が間違って使っていれば、それがいつか正しいものになるということで、ムキになって反論したり嘆いたりはしませんけど。
 森鷗外は朝日新聞等の鴎外でなく、ちゃんと鷗外と変換されます。

高校生にすすめる本360冊(1998年版&増補) [3]

2013-08-17 19:13:33 | 高校生にすすめる本360冊

 他に予定している記事はあるんだけどなー、 うーむ・・・。まとめるのがちょっとメンドーなので、とりあえずは逃避みたいな感じで前回の続きをアップします。

 日本の小説の続きですが、書棚でいうと、最上段から下の段に移ってきて、いろんな「雑多な」本が並んでいるという感じですかねー。
 「なんでこんな本が?」というよりも、「それなら、自分が読んだ「××」という本は絶対オススメだぞ!」という読み方を期待します、ってところでしょうか。(当時も今も。)

☆印はとくに推奨。×印は品切れまたは絶版中の本(多すぎる!) △は絶版・品切れでも単行本なら出ている本。
×
51
井上ひさししみじみ日本 乃木大将新潮文庫51=井上ひさしの芝居はどれもユーモアに満ち、なおかつ反骨精神に溢れている。ぜひ舞台を観てほしい。
52=1960年代を知ってるオジサンたちには懐かしく、そして当時の熱気が甦ってくる。たしかに、大変動の時代であった。
53~58=1949年生まれの私とほぼ同世代の作家による現代小説。53は、純文学でありSFであり音楽小説であり社会小説であり冒険小説であり風俗小説であり、そして失敗作なのだそうだが、とにかくおもしろいからいい。54は大ベストセラー「ノルウェイの森」の作家の代表的作品。把握しがたい現代とその気分を、洒落た(キザな)警句を散りばめつつ、さめた筆致で描く。社会科教師としての推薦作が55。変貌する現代農村社会で情況を切り拓く展望を追求・・・うーむ、60年代的発想&表現だなあ。56は楽しく読めるというめずらしい純文学。60年代後半は四国の小都市の高校生もエレキに熱中。私も四国(徳島だけど)、懐かしいなあ、うるうる。女子との<距離感>などよく捉えている。純情だったもんだ、ウン。57は高校3年だった著者自身の1969年のシゲキ的日々が下敷き。バリケード封鎖に無期謹慎等、エネルギッシュでカゲキで、かつナイーブな青春小説。小林信彦「背中あわせのハート・ブレイク」(「世間知らず」から改題)(新潮)、松村雄策「苺畑の午前五時」(ちくま)等の自伝的小説の高校時代と比べてみて。58、まだ代表作といえる作品のない作家だが、どれも楽しく、けっこう鋭い。
59・60=現代の女性作家の小説。59は女子高校生の性を描き頽廃的にみえるかもしれないが、決してそうではない。先入観はよくないと反省。60、すべてが陳腐で、目的も価値も見出しえない現代、感性は白日の下にさらされる。軽く哀しく優しく、そして不確かながらも少し元気がもらえる小説。
61=ジュニア小説も馬鹿にはできない。「さようならアルルカン」(コバルト)にも心うたれた。「クララ白書」(コバルト)もおもしろい。
62・63=優れた時代小説、大衆小説は、並みの純文学よりよっぽど感動が大きい。62はホントに泣ける! 63、悲運に耐えながら成長してゆく少年藩士の清々しさ。精緻な文章もいい。
64~67=ケッタイなものばかり。64は明治、65は戦後のシタタカ男を描く。ジメッと暗いばかりが日本の小説じゃないんだッ! 66はマカフシギな純文学。茶碗が主人公だって!? ペィーッ! 67は65以上に、高校生にこんなのすすめていいのかしら??というヤツ。
68~70=高校生用文学史年表上の作品中で例外的に感動した作品。68はほとんど幻想SF物語。69には啄木も涙にむせんだとか。<牛肉>は<都会・現実・安楽・妥協>、一方<馬鈴薯>は<北海道・理想・清貧・刻苦>のシンボル。君ならどちらを選ぶ?(って聞くまでもないか・・・・。) 70、キリスト的(?)親鸞像。高校時代友人に薦められた。そんな書友もいた時代ではあった。
71=岩波文庫の人気ベスト1。ムカシの子供の心はこんなにも素朴だったんだなあ・・・・。
72=いっとき映画化(「野ゆき山ゆき海べゆき」)されて文庫になったが・・・・。ムカシの子供はこんなにも元気だったんだなあ・・・・。
73~75=戦争の惨禍は戦後にも及んだ。野坂には「1945・夏・神戸」(中公)という自伝もあり、<焼け跡闇市派>の原点がうかがわれる。74は被爆者や被差別部落民を扱った暗く重い小説。社会を考えるためにもぜひ読んでほしい。75は中国残留孤児を生んだ歴史的背景とその後を感動的に描く。このネタ本の1つ遠藤誉「卡子(チャーズ)」という記録(幼時の体験記)は衝撃的。
×
52
小林信彦夢の砦新潮文庫
×
53
村上龍コインロッカー・ベイビーズ講談社文庫
54村上春樹世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド新潮文庫
55立松和平遠雷河出文庫

56
芦原すなお青春デンデケデケデケ河出文庫
57村上龍69 sixty nine集英社文庫
58清水義範永遠のジャック&ベティ講談社文庫
59山田詠美蝶々の纏足新潮文庫
河出文庫
60吉本ばななキッチン角川文庫
福武文庫
61氷室冴子なぎさボーイ集英社コバルト文庫

62
山本周五郎さぶ新潮文庫
63藤沢周平蝉しぐれ文春文庫
64夢野久作犬神博士
(夢野久作全集 5)
ちくま文庫
65野坂昭如エロ事師たち新潮文庫
66藤枝静男田紳有楽講談社文芸文庫

67
沼正三家畜人ヤプー角川文庫
68泉鏡花高野聖岩波文庫
角川文庫
×
69
国木田独歩牛肉と馬鈴薯岩波文庫
70倉田百三出家とその弟子岩波文庫
新潮文庫
71中勘助銀の匙岩波文庫
×
72
佐藤春夫わんぱく時代岩波文庫
73野坂昭如火垂るの墓新潮文庫
74井上光晴地の群れ河出文庫
75山崎豊子大地の子文春文庫


  1つ前の記事で日本の小説の最初に挙げた高橋和巳の死は、当時三島由紀夫の死より衝撃的でした。あの「異形の」作家がもし今も健在であったら・・・と思うことがあります。
 今回のリスト中の作家の中で、「同世代」ではなくても「同時代」の作家と思っていた井上光晴・藤枝静男・藤沢周平は90年代に世を去り、1990年代には井上ひさしのほかに、私ヌルボとほぼ同世代の立松和平までが亡くなったのは他人事とは思えませんでした。
 (はるかに若い氷室冴子が51歳で他界してしまったのは、ファンとしても残念でした。)

 いつの間にか、私ヌルボもそんな年、そんな時代の直中に入ってしまっているんだなー、ということを痛感せざるをえません。あーあ。

 こんどこそはいつもの韓国ネタに戻らなければ・・・。

高校生にすすめる本360冊(1998年版&増補) [2]

2013-08-16 09:51:01 | 高校生にすすめる本360冊

 外国文学の次は日本文学。今回は現代小説の前編です。
 外国文学の方と比べると、はるかに(よく言えば)ユニークで、いきなり「何だ、これは?」の連続かも・・・。(笑)

26高橋和巳邪宗門朝日文芸文庫26・27=崇高な理念をもって圧倒的な権力と闘い、苦悩と挫折の辛酸を嘗め・・・ということとはおよそ無縁にみえる現代の青少年はこれらの壮大な作品をどう読むだろう? 26は戦前の国家と対決する教団(モデルは大本教)を描く。例の<オウム事件>で再注目。27はベトナム戦争頃の日本の世相をよく描写している。
28~31=大河小説は長期休暇の読書に最適。28・29は、日中戦争の時代(昭和前期)を全体的に把握するための必読書。自由が封じられた困難な時代状況の中で、誠実に生きることがいかに可能だったか? 29は映画も観てほしい。30は沼津の漁村に生まれた著者の自伝的小説。31も著者の祖父だった病院長を中心とした一族を昭和前期の東京を舞台に描く。
32~39=歴史の勉強になるが、何よりも泣ける作品ばかり。32はキリシタンへの厳しい弾圧に対しなぜ神は<沈黙>したままなのかを問う。33は応仁の乱当時の戦乱と飢餓の極限状況に生きる男。ジョージ秋山の漫画「アシュラ」のタネ本。34はチンギスハンの一生。とにかくスケールが大きい。井上靖にはロシアへの漂流民大黒屋光太夫を描いた「おろしや国酔夢譚」(文春)、留学僧が鑑真を日本に招く物語「天平の甍」(新潮)等々、感動的な歴史小説が多い。35~39は史実としての重みが感動をよぶ。35と36を読んでプロレタリア文学=<薄っぺらなプロパガンダ>という先入観が消えた。35は北海道開拓にあたった伊達支藩主従の辛苦。37も江戸時代の農民のエネルギーにうたれる。38は脱獄した高野長英の必死の逃亡劇。39は江戸初期薩摩藩が請け負った長良川の治水工事をめぐる物語。
40・41=司馬文学はトッテモ勉強になるが、40が一番血沸き肉躍る! やっぱり僕は、信長はすごいと思うヨ。41も全8巻あっという間に読める。それにしても、生き残ったのは悪い奴ばかりだ。
42・43=昔と今の健康的青春スポーツ小説。42が柔道、43がテニスという点はやはり時代の違いか? 舞台は42が金沢の四高、43は大阪の新設私大で、どちらも作者の出身校。42はとくに自伝的。「しろばんば」「夏草冬涛」(新潮)に続く作品。
44=戦後すぐの青春は、こんなにも清潔でプラトニックなものだた。いま若い世代に問う-懐かしい父の青春、父の恋。以上宣伝文そのまま。(主人公の少年は都立西高の生徒。)
45=これも学園恋愛モノだが、主人公は女子学生。1960年代である。<プラトニック>とはいえなくとも、まだ恋愛にみずみずしさ、純粋さ、真摯な悩み等々はたしかにあった。同じ作者の「光抱く友よ」(新潮)は女子高生が主人公。読んでみて。
46=冬の北海道である。美貌の天才少女画家、そして夭折(服毒自殺)である。オジサンはこのテのものには弱いのである。
47・48=香り高い文学とはこのようなものをいうんだろうな。とくに47に感動の涙を流した女性は多い。(3人はいたなあ。キョービの若い女の子は知らん。) 福永作品では「草の花」(新潮)もどうぞ。
49=これを書き終えて三島は例の事件を起こし自らの生にピリオドを打った。ロマネスクな輪廻転生の物語。代表作の「金閣寺」等と比べると失敗作なのだそうだが、とにかくおもしろいからいいのだ。
50=斬新な表現に目を見張る現代小説。意表を突く語り手が次々と現われ、物語を紡ぎだす。1ページでも立ち読みして。
×
27
小田実現代史角川文庫
×
28
野上弥生子迷路岩波文庫

29
五味川純平戦争と人間光文社文庫
×
30
芹沢光治朗人間の運命新潮文庫
31加賀乙彦永遠の都新潮文庫

32
遠藤周作沈黙新潮文庫
☆×
33
真継伸彦河出文庫

34
井上靖蒼き狼新潮文庫

35
本庄陸男石狩川新日本文庫

36
西野辰吉秩父困民党講談社文庫
37藤沢周平義民が駆ける中公文庫

38
吉村昭長英逃亡新潮文庫
39杉本苑子孤愁の岸講談社文庫

40
司馬遼太郎国盗り物語新潮文庫

41
司馬遼太郎竜馬がゆく文春文庫

42
井上靖北の海新潮文庫

43
宮本輝青が散る文春文庫
44黒井千次春の道標新潮文庫
45高樹のぶ子その細き道文春文庫
46渡辺淳一阿寒に果つ角川文庫

47
福永武彦忘却の河岩波文庫
×
48
辻邦生廻廊にて新潮文庫
49三島由紀夫豊饒の海新潮文庫
50丸山健二千日の瑠璃文春文庫


 「文学作品そのもの」としてではなく、作品を通じて歴史を学ぶ、というフンイキが強いですが、職業柄と言えばまさにその通り。国語の先生の推薦本だと全然違ってくるでしょう。そういうわけで歴史大河小説が多く、それも権力に抗した人物を描いた作品が多いのは「いかにも」団塊の世代か。高橋和巳・小田実を最初に(臆面もなく)並べたところはまさに「正体顕現」と見られるも・・・。
 しかし、こうしたスケールの大きな小説と比べると、90年代以降の日本の小説(純文学)はホントにせせこましい世界に閉じこもった作品ばかりが目につきます。そうじゃない芥川賞作家で思いつくのは、阿部和重と奥泉光と、・・・あ、辻原登は読んでなかったな。 
 
 歴史がらみに加えて、もう1つ多いのが「青春」モノですね。これまた職業柄というか、そもそも「高校生のための」リストなので当然すぎるほど当然。

 しかし、なんのかんの申しましても、前の記事のコメントでも書きましたが、まず「読んでおもしろい本」!ということが選定の第一条件ではあります。

高校生にすすめる本360冊(1998年版&増補) [1]

2013-08-15 13:40:19 | 高校生にすすめる本360冊
 今年4月19日の記事のコメントで少し予告しましたが、これからは韓国関係以外でも、以前高校生たちに配ったりしたお薦め本や映画のリスト等を時折アップしていくことにします。
 まずは「高校生にすすめる本360冊」。最初は30年ほど前50冊からスタートしたものを、その後冊数を増やしながら改定を重ね、今回紹介するのは1998年に出した最終版です。
 以後15年経っているので、品切れ・絶版等の状況は現在かなり変わっていますが、説明文等とともにそのままの形で載せることにしました。
 すでに90年代の時点で職場の同僚等からは推薦書目が「ちょっと古いな~」との声も出ていましたが、それは重々承知の上です。ヌルボ自身の少年時代からの読書記録といった意味合いもあるし、今の高校生向けの読書ガイドというよりも、ひとつの時代の記録として見ていただいた方がいいかもしれません。
 大体、教養主義の時代なんてのは何十年も前に終わって、こんな推薦本リストに興味を示す生徒がクラスに5人以上もいるような高校はほんの一握りしかないのが現状でしょう。
 草色・ピンク等の色がついている部分はすべて1998年の原文のままです。
 約20冊ずつ分野ごとに分けてアップしていく予定なので、全部で20回くらいになりそうです。途中で<読書家のためのクロスワード>というのが2つ入っています。パズル好きの方は乞御期待!

 このブログで、どうすれば表を入れることができるのか、悪戦苦闘。ネット内をいろいろ見て試行錯誤の末やっとここまでこぎつけました。ふう~。

          《高校生にすすめる本360冊》              1998年7月 ヌルボ(凸凹高校社会科)
 そりゃあね、本がなくても生きてはいける。本を買わなけりゃ金もたまるし部屋も広く使える。しかし、本を読んで涙が溢れるほど、体が熱くなるほど感動したことがないとすれば、他人事だが残念。「読書!」といえば「感想文」を連想してしまうアナタはジツに不幸な人です。ぜひとも魅惑的な本の世界に案内したい一心で、自分の読書体験をさらけ出すという恥を忍んで作成したリストです。だまされたつもりで読んでみて下さい。
 ☆印はとくに推奨。×印は品切れまたは絶版中の本(多すぎる!) △は絶版・品切れでも単行本なら出ている本。
     [文庫・新書]  
1マルタン・デュ・ガールチボー家の人々白水Uブックス1・2=大作は、情熱に富み、感性のみずみずしい十代のうちに読むことをすすめる。1は第1次大戦前後のヨーロッパの大状況がわかる。忙しい人には少年向きのダイジェスト版で「チボー家のジャック」がある。2、何という作家!(=執行寸前で死刑を中止された体験もあるとか・・・)、何という小説!(=何かすごいものと大格闘してる、わけがわからん大小説。)
3・4=いわゆるヤング・アダルト文学の代表作。学校や世間にちょっと反抗心をもっている人に。
5=少年向きの文庫だが高校生以上の人にも読んでほしい。第1次大戦当時のイギリスの農場が舞台。賢く強く美しいヒロインが魅力的。作者も女性。道具立ては馬と飛行機という新旧の素敵な乗り物。とくに揺籃期の飛行機は興味深い。
6・7=ムムッ、これこそ文学! しかし、これらを愛読して自らの内面を凝視し、およそ解きえぬ問いに対峙するような青少年など、今どきどこを探せば見つかるのか・・・。(ワタシは就職試験で「愛読書は『デミアン』です!」と答えようと思い、前夜徹夜して読破した。が、尋ねてくれなかった。)
8=ヒューマニズムと理想主義を基調としたこの作品の価値は永遠に不滅、と思いたい。ベートーヴェンをモデルに、一ピアニストの精神の遍歴を描いた大河小説。
9=19世紀的大ロマン。中3の時、国語の先生が「君たちが読むのはまだ早い」と言ったので皆読んだ。あれは策略だったのかなあ?
10~12=女性向き感動的名作の定番だが、男子諸君にもまず薦めたい外国文学。10が気に入ったら姉C.ブロンテの「ジェーン・エア」(新潮)もどうぞ。11は南北戦争、12は清朝末期の中国社会が背景で、世界史の勉強になる。11は映画も有名だが、それでもやはり原作が上。
13=第2次大戦下、連合軍側の空襲によるドレスデンの惨禍をふまえた、一種フカシギなSF。軽くて深く、ユーモアと虚無がないまぜの、これが現代の純文学か・・・。
14~16=古い時代の物語(小説に非ず!)は理屈抜きで楽しめるものがいくつもある。昔の人はたいしたものだ、とつくづく感嘆。しかし、国語の教科書はなぜ近現代の難解な小説や評論ばかりなのだ???? 16中の作品に拠る「ふしぎなやどや」(ささきせつこ.福音館)という絵本もある。中国物では「聊斎志異」(角川)もお薦め。
17=牧歌的・幻想的・官能的な愛の物語。美少年+美少女、そして+未亡人となると、筋書きの見当はつくね? ムヒョヒョ。
18・19=18世紀の奇抜な空想冒険物語にして、風刺文学の傑作。18は波乱万丈。ハチャメチャなSFの感があって楽しい。
20=有名な復讐の物語だが、陰湿どころか痛快そのもの! やっぱり正義が勝ち、悪は成敗される。物語の世界ではね。
21=浪人中読み、わけはわからなかったが衝撃を受けた。同じ作者の「ペスト」(新潮)はずっと読みやすい。これもお薦め。(高校時代、カミュかサルトルかで友人と議論したものだ。何といっても、ジ、ツ、ゾ、ン主義の時代だったからねえ。)
22・23=政治に翻弄される個人の運命。22はフランス革命、23は第2次大戦直後のルーマニアが舞台。
24=動物文学の傑作。この犬ほど気高い動物がいるかね?ネコ好き諸君。人間にだってザラにはいないぞ。
25=豪傑武将縦横活躍仙人道士秘術駆使奇想天外荒唐無稽痛快無比殷末舞台空想科学通俗歴史冒険活劇大大驚愕中國奇書。
2ドストエフスキーカラマーゾフの兄弟新潮文庫
3サリンジャーライ麦畑でつかまえて白水Uブックス

4
ヘントフジャズ・カントリー講談社文庫
5ペイトンフランバース屋敷の人々岩波少年文庫
6ヘッセデミアン新潮文庫
7マントニオ・クレーゲル新潮文庫
8ロランジャン・クリストフ新潮文庫
9スタンダール赤と黒新潮文庫

10
E.ブロンテ嵐が丘新潮文庫

11
ミッチェル風と共に去りぬ新潮文庫

12
バック大地岩波少年文庫
13ヴォネガットスローターハウス5ハヤカワ文庫
14ラムシェイクスピア物語新潮文庫
×
15
ボッカチオデカメロンちくま文庫
16
唐宋伝奇集岩波文庫
17ロンゴスダフニスとクロエー岩波少年文庫
×
18
ヴォルテールカンディード岩波文庫
19スウィフトガリヴァー旅行記新潮文庫
岩波文庫

20
デュマモンテ・クリスト伯岩波文庫
21カミュ異邦人新潮文庫
22フランス神々は渇く岩波文庫
×
23
ゲオルギウ二十五時角川文庫
24ロンドン野性の呼び声新潮文庫
25
封神演義講談社文庫


 360冊の最初に世界文学の名作を並べるのは、本棚の最上段にカクチョー高そうな本を置くのと同じかも・・・。あれこれ自己分析するとちょっと恥ずかしいですね。(ゴマカシ笑) とはいうものの、高1の時読んだ「チボー家の人々」と「カラマーゾフの兄弟」(米川正夫訳.岩波文庫)の2つは私ヌルボにとって特別。まさにその時期なればこその決定的な出会いでした。
 さて、この25冊は近代以降の小説と近代以前の物語に大別されますが、おもしろさでは何と言っても後者ですね。洋の東西を問わず、多くの庶民に親しまれ受け継がれてきた物語は今も色褪せない魅力があります。しかし学校の国語では圧倒的に近現代の小説に比重がおかれています。そのことも本を読まない子どもを量産してしまっている一因ではないでしょうか? それ以前に文学偏重の国語教育というのも大きな問題ですが、その件についてはいずれまた。