大福 りす の 隠れ家

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みち  ~道~  第183回

2015年03月10日 15時07分57秒 | 小説
『みち』 目次



『みち』 第1回から第180回までの目次は以下の 『みち』リンクページ からお願いいたします。

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『みち』 ~道~  第183回



「違います、違います。 あー・・・ごめんなさいね」 そう言いながら息を整え

「琴音さんは意外とたくましいんですなぁー。 それとも金縛りの経験に慣れていらっしゃるのですかな?」

「慣れるだなんてとんでもないです。 毎回動かない身体を必死で動かそうとしているんですが恐怖ばかりが先走りますし、やっと金縛りが解けた後も体が重くてとても疲れてしまっています。 それに完全に意識を戻して重い身体を立ち上がらせないと、何度も金縛りを繰り返しますし・・・」

「ほほぅー・・・。 それでは今話されたお話は?」

「初めて立ち向かったんです」

「おお、そうでしたか。 そんな初めて立ち向かった話の途中で笑ってしまって申し訳ありませんでしたな」

「いえ、とんでもないです。 ただ、他の人にはこんな話は出来ませんが 正道さんや更紗さんなら分かって下さると思って・・・」

「はい。 充分に分かりますよ。 それで押し退けた後はどうでしたか?」

「それが不思議にいつものような疲れた感覚や、体が重いという事もなかったんです」

「それは良かったですな。 その毅然とした態度が何より良かったのでしょう」

「あ、それでお聞きしたいのは私が念で作ったつもりの手なんですけど、それってもしかしたら念で作ったものなんかじゃなくて、もしかしてそのアストラル体やエーテル体という物なんでしょうか?」

「うーん、どうなんでしょうかなぁ・・・でも琴音さんなら念でも作れそうですな・・・」 そう言ってまたクスクス笑い出した。

「せ・・・正道さん・・・」 

「いや、いや、何度もすみません・・・。 こんなに楽しく話していけるとは思ってもいませんでしたし、琴音さんの未開の力は面白い物がありそうですな」 そして琴音のほうを見て

「和尚が教えてくださった言葉で充分ですが・・・そうですな、こんな言葉もありますよ。 『惟神霊幸倍坐世(かんながらたまちはえませ)』 と言うのですが 祝詞の最後に唱えたりする言葉なんですね」

「祝詞・・・ですか?」 一瞬にして愛宕山で聞いた祝詞の事を思い出した。

「そうです。 意味は色々と言われておりますが そうですな、簡単に神様にお任せすると覚えておいて充分ですよ。 『南無阿弥陀仏』 みたいなものですな」

「南無阿弥陀仏・・・って・・・え? あの意味がよく分からないんですが」

「仏教という物は中国では無くてインド発祥ですから インドの言葉を漢字にしたのが 日本人の知っているお経なんですね。 それを音写と言いますが。 南無阿弥陀仏と言う 『ナム』 と言うのはサンスクリット語で『屈する』 等という意味がありまして 中国語で訳しますと帰依しますと言う意味なんです。 帰依と言うのはこれも色んな訳し方をされておりますが これもお任せすると考えておいて宜しいかと思いますよ。 阿弥陀仏・・・阿弥陀仏にお任せするですね。 ですから意味としては南無阿弥陀仏でも宜しいかとは思いますが 私は惟神霊幸倍坐世、こちらの方が琴音さんに合っている様な気がします」

「カンガナラ・・・タチマエ・・・?」

「初めて聞くと覚えにくいですよね。 カンナガラタマチハエマセ です」

「それって、漢字で書けるんですか?」 どうしても覚えたいと心が逸る。

「はい」

「漢字で覚えたほうが早いでしょうか?」

「漢字の方が難しいと思いますよ。 漢字自身も色んな漢字が当てはめられたりしておりますしな。 これは何かに書いておきましょうか?」 何か書くものはないかと辺りを見回そうとした時、琴音がすぐに鞄からメモを出し

「書いて頂けますか?」 正道にメモを渡すとサラサラと達筆で『惟神霊幸倍坐世』 と書き出し

「私はこの漢字を使っておりますが他にも書かれている漢字を書きましょうか?」 続いてカタカナで『カンナガラタマチハエマセ』 と書きながら正道が尋ねると

「いえ、正道さんと同じで充分です」

「それではこれで」 メモを受け取った琴音はじっと見て

「カンナガラタマチハエマセ・・・」 言葉が心に響く。

「そうです」

「・・・とてもいい響きです」 心のどこかが心地よく触られているような気がする。

「そうですか。 お教えした甲斐があります。 万が一、金縛りにあったときでも何か良くない物を感じたときにでも唱えるといいですよ」

「はい」 まだメモをじっと見ている。

「出来れば金縛りにはあわない方がいいですから ちょっとでもおかしな物を感じたら注意しておくように。 良いですな」

「はい」 やっと正道の目を見た。

「えっと・・・それで・・・そうですなぁ、琴音さんのどちらの手でもいいですが片手の掌上にもう一方の掌をかざしてみてください」

「こうですか?」 胸より少し下で右掌を左掌の上に置いた。

「右手をもっと上に上げて」 言われるままに右掌を20センチほど上に上げた。

「もう少し・・・」 また少し手を上に上げた。

「それくらいでいいです。 その掌をそっと左腕に近づけていってみてください。 ゆっくりとですよ」 ゆっくりと右掌を左の腕に近づけていき 左腕の上に右掌が密着した。

「なにか撥ね返るものは感じませんでしたか?」

「あ・・・何も感じませんでした」

「そうですか・・・そうですね。 もっと分かりやすくしましょうか。 両掌を合わせて下さい」
言われるままに胸の辺りで自分の掌を合わせた。

「少し離して・・・段々と離していって」 そして肩幅くらいに離れた時

「はい、いいですよ。 今度はそのまま掌をゆっくりと近づけてください」 ゆっくりと掌を動かす琴音。 その手が段々と近づき掌が合わさった。

「どうですか?」

「うーん・・・なにも・・・」

「焦らなくていいですよ。 毎日これをやってみてください。 跳ね返るものを感じた所が琴音さんのエーテル体の端です。 まずはご自身を知ってから動物にいきましょう」

「はい」

「さて、宿題はこれとして今日はこのくらいにしましょうか」

「はい」

「それでは次の日ですが・・・ちょっと予定が立て込んでおりましてな・・・」 椅子から立ち上がり、少し離れた所においてあった鞄から予定がびっしりと書かれた手帳を取り出し

「・・・うーん。 また後日ご連絡でも宜しいですかな?」

「はい。 お時間のあるときにお願いします」

「では予定が立ち次第ご連絡を入れます」


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