キュヴェ タカ/cuvee taka 「酔哲湘南日記」

新鮮な山海の恵みを肴に酒を吞み、読書、映画・音楽鑑賞、散歩と湘南スローライフを愉しんでいる。 

「センセイの鞄」の仕掛け

2024年05月22日 | Weblog
11時を過ぎて、やっぱり何か飲みたくなって、奥の納戸の酒庫からロイヤルを出してきて水割りにした。
音楽は西島三重子と柴田淳を聴いていて、これが3時間のリストになっている。
西島三重子は「池上線」が有名で、確かに若い感受性ゆえの名曲だが、30代になって作った楽曲に素晴らしく、その頃のアルバム3枚くらいをよく聴く。
柴田淳は2枚のカヴァーアルバムがあるが、どちらもいい。

さて、日記も読み終わり、何か読むものは無いかと机の上に積んだ本を眺めていて、川上弘美「センセイの鞄」を手に取った。
僕が持っているのは2004年の20刷だが、初版は2001年の6月に出ている。
あるいはこの本は何冊も買っているので、実際の購入は2004年より早く谷崎賞を受賞するかしたかの頃だったような気がする。
買った場所はっきりしていて、関内駅前ビルの芳林堂で、何故か気になって手に取り購入した。
少なくとももう20年前の事なんだけど、昨日のことのように情景まで覚えている。
そして、この何ともとぼけたセンセイと時代遅れのツキコさんの不識な関係に惹かれ、川上弘美の他の本を漁ったが、これ以上のものには出会わなかった。

当時、会社の近くにイタリア狂いのオニイサンがやっていたBarに、愛子ちゃんという湯河原出身で妻と同じ高校を出た可愛い子がいて、毎日のように友人の変な老人と一緒に「愛子の珈琲」を飲みに昼下がりに通っていた。
彼女に何かいい本はないかと聞かれ、これを推薦したら、会うたびにツキコさんがああしたこうしたと話してくれた。
思えば僕と変な老人のコンビも、愛子ちゃんにとっては現実離れした不思議な客だったと思う。

ここのところ歴史経済社会政治の本を読んでいたので、「センセイの鞄」を読んだ瞬間、ああ、これが小説の文体だと心の全く違うところが震えた。
この本は版元が平凡社だが、わら半紙のような紙を使っているので、早い時期から変色が始まり、今ではかなり茶色になって他の20年前の本と比べると如何にも古色蒼然としている。
当時も時代錯誤甚だしい感じがしたが、今、本を手に取るとセンセイとツキコさんの恋物語は100年前の出来事だったような気がする。
この本の内容を鑑みて、この紙を当時の編集者が使ったとしたら、天才編集者だね。
デジタル本じゃこんな仕掛け出来ないよね。




コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 大学時代の日記を読む | トップ | 何時もの朝 »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

Weblog」カテゴリの最新記事