キュヴェ タカ/cuvee taka 「酔哲湘南日記」

新鮮な山海の恵みを肴に酒を吞み、読書、映画・音楽鑑賞、散歩と湘南スローライフを愉しんでいる。 

京都にて

2010年09月30日 | Weblog
広島から京都へ昼に到着して佐和さんと落ち逢い、甲賀の瀬古酒造に向かい、輸出の話をさせていただきました。約二時間の滞在で、その他の話とタンクから汲んでいただいた原酒二種を味わいました。試飲の感じではなく、四合瓶二本が三人で空になりましたから、品質を体に染み込ませた感じでした。お陰でこの蔵の酒質は奥行のある濃厚なもので、高い酸が酒を鈍重にさせず、堂々たるものにしていると了解されました。

嘗て帝国海軍は呉の千福を艦船に乗せて世界の海を駆け巡っておりましたが、赤道を何度越えても品質が劣化しなかったために正式採用されたと聞いております。果たして酒質のどの部分が熱と振動に耐えるのでしょうか、海外へ輸出するとすればヨーロッパですと一ヶ月以上船上でローリングとピッチングに、さらには高温にさらされるわけですから、繊細な酒よりは酒体の堂々としたものが向いているんだろうと考えます。その点ではこの蔵の酒はまさに長旅に耐えて彼の地で真価を発揮する可能性が大きいんだろうなと思います。

夜、鮨割烹とイタリアンバーでワインのお仕事をして、酒とワインをさらに可也の量いただきました。この仕事は何と言っても体力、特に強靭な肝臓を持っていることが何より大切だなあと、雨の京都の街を眺めながら考えております。


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広島にて

2010年09月29日 | Weblog
昨日は雨の湘南から西へ向かい、名古屋は曇り、神戸辺りからは青空で晴れでした。今朝の広島も早朝から秋の日が部屋に眩しく差し込んでおります。

昨夜は久しぶりに広島の名店゛山人゛で広島の銘酒を賞味しながら、親方山平さんの作る料理を堪能しました。ワインは勿論和食店用のソリテルを持ち込ませていただきました。焼き野菜と合わせたときの美味さと云ったら無かったですね。野菜の甘味とワインの甘味が重層的な甘味の世界を作り出し、はてしもなく広がりました。新しい味わいの世界を垣間見ました。

最後にいただいた、生醤油で食べるうどんが素晴らしかった。ポーチドエッグ、とろろ昆布、茗荷、葱等がトッピングされているのをオーダーされた同行のお取引先の方が豪快に掻き混ぜ、そいつを一寸ちょうだいいたしましたが、絶品。ついつい箸が延び、瞬く間に喰い切りました。

ちなみに、昨夜いただいた広島の地酒五種類の白眉は、龍勢純米原酒ひやおろしでした。果たして地元の食材と地酒に、輸入ワインが食い込む余地は残されているのか、うーんと考え込まされた広島の夜でした。
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秋の長雨

2010年09月28日 | Weblog
秋の長雨が降りしきっている湘南の朝です。昨夜は久し振りにお客様と宇多がわへ出かけ、紅葉鯛というんですかねえもう、実に味わい深い鯛をいただきました。味も透明感のある身もよかったですねえ、急流の根に着いたやつでしょう。環八、赤貝。戻り鰹、これも脂があまり乗っておらず良かったです。鰹は血の酸っぱさに旨味があるさっぱりしたところが好きですが、普通の戻り鰹は脂がいっぱいなのに初夏を思わせる肉質でした。一体何処で獲れたやつだったのでしょうか、親方に聞くのを忘れました。

酒は前菜に合わせ磯自慢、乾坤一を冷でいただき、男山を燗につけて刺身と合わせ、雉はたを焼いたものと野菜の煮たものには、ポールレッツのシャルム・シャンベルタン96を合わせました。14年が経っている落ち着いた味わいがよかったです。この頃ブルゴーニュを飲むようになっているのは秋のせいでしょうかね。

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二年振りにブルゴーニュへ

2010年09月27日 | Weblog
今朝の湘南は雨模様です。秋雨前線による雨ですから普段の秋と変わらぬお天気になってきてるといえます。しかし実に過ごしやすいですねえ、このくらいの陽気になって来ますと、何でも出来そうな万能感が漲って来ます。実に良い季節に入りました。

過日、久し振りにJPマルシャンのジュブレ・シャンベルタン96を飲みました。随分ドライだなあとの印象もありましたが、香りが発展していて美味しいなあと感じました。最近イタリアワインの果実味が甘く感じるスタイルの赤を好んで飲んでいたために、古典的なブルゴーニュのスタイルのマルシャンがドライに感じたのだと思います。ワイン単独で飲むときにはもう少し果実味とその甘さが欲しいなと感じますが、料理といただくには、特にブルゴーニュの料地とはこのスタイルだなあと思いながらいただきました。

来月マルシャンの所に伺うことになっておりますが、近頃どうも加齢によるのかフレンチが口に合わなくなり、10日間のフランス滞在が耐えられそうもなく、昨年は佐和さんに任せて私はパスしてしまいました。従いまして来月のフフラン行きは二年振りとなります。世界的に観てもフレンチのかつてのスタイルは衰退しておりますし、ガッツリとか満腹料理といわれていたものは、単価の安いもので対応されており、高収入のインテリの層の間では、和食が大きなブームであることはこの先も変わず、低カロリー嗜好はますます続くと思われます。

コンテンポラリーキュイジーヌといわれているものは、引き算の和食の発想であり、足し算のフレンチとは対極ですから、これを推し進めてゆくと伝統的なフレンチは無くなります。とはいっても物事はいつの時代を輪切りにして見せるかによって議論はまったく変わってしまうものですから、400年前のフレンチはまさにコンテンポラリーキュイジーヌに近いと考えられ、飽食の時代の料理のお手本は飢餓の時代にあるのかもしれません。

来月二年ぶりのブルゴーニュでいただく料理は短期間のうちに変わっているのか、あるいは保守のど真ん中のブルゴーニュでは相変わらずの料理が供されているのか、大変興味があるところです。





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文学・居酒屋・落語

2010年09月26日 | Weblog
さて何時ものように、「文学フシギ帖」と「月の下のカウンター」と、その後に購入した栗田彰さんの「落語地誌 江戸東京<落語場所>集成」を三冊同時に読んでおりますが、この組み合わせは中々いいですね。

「文学フシギ帖」は今までとは一寸切り口をかえた作家のゴシップで、最近読んだ川本三郎さんと大村彦次郎さんのものと似ていて一寸異なり楽しいですし、「月の下のカウンター」は新宿ゴールデン街についてのところで、“一流のスーツに身を包み、三ッ星レストランへ入るのは簡単だが、ゴールデン街へ一人でふらっと入るには、知性と度胸と心意気がないと受け入れられない”という件がじつに何とも一流のスーツも三ツ星レストランにも縁のないオッサンの心を掴んで放しません。「落語地誌 江戸東京<落語場所>集成」は落語の本の出版で名高い青蛙房から出ていて、この版元の本は初めてでしたが、噂どおりとてもいい本です。著者の栗田さんは元水道局員で、30年前に雑誌に連載されたときと、今回本に纏めるに当たって、二度実際にその場所へ足を運んでおられるので、昔と今のその場所が眼前に見えてくるようです。実際に歩き回っている人のものは、簡潔でも奥行きのある文章になり味わい深いものです。

今朝の湘南は目の覚めるような秋晴れで、気温も暑くなく寒くなく快適です。秋の夜長の読書とともに、日中の街歩きには最適な季節がやっとやってきました。今日の午後は、大磯から平塚の秋の風情をゆっくりと眺めながら散策をしたいと思います。





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有隣堂から芳林堂へ

2010年09月25日 | Weblog
今日は朝から強い風が吹いています。台風が太平洋を北上するようで、つい数日前の酷暑がどこへ消えたのかといぶかるぐらいの荒涼たるお天気です。

さて、手術後酒を喰らったのも久し振りの感じがいたしましたが、伊勢佐木町の有隣堂本店を覗いたのも久し振りでした。しかもその足で関内駅前の芳林堂も覗いたのは、一種の本屋中毒にかかっている証拠ですかね。そんな中毒患者に好ましい惹句が芳林堂にありました。正確ではありませんが“一週間に一度本屋を覗く人は何者かになれる”というような内容で、本屋にしてみりゃあしょっちゅう人が来てくれれば売上が期待できるわけですから、こんなことを書いておくのが好都合でしょう。

芳林堂では、先月発売された岩波新書で、買おうかなと思って買わずに置いた池内紀さんの「文学フシギ帖」を発見して、あわてて買い求めました。といいますのも、最近になってやはり買っておこうと思い直して、色々な書店で捜したのですが、売り切れていて見つける事が出来ませんでした。売上好調であるならば増刷されるので、少し待っていれば出回る筈なんですが、探しているものが無いとなると慌てますね。

太田和彦さんの「月の下のカウンター」がレジ前の平台に並べられておりましたが、とにかく色々な本を買いすぎで消化不良になっているので「止めておこう」と一瞬は思ったのですが、ワイン業者がこの本を買わなくてどうするんだとの囁きが、何処からともなくやって来て、買い求める事にいたしました。

本を買い求めるだけでは、何か身になるわけではありませんが、有隣堂から芳林堂へ久し振りに本屋の梯子をして楽しかったですね。少なくとも、鳥伊勢から利休庵への身の毒になる飲み屋の梯子より数段良いかもしれません。

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湘南に嵐が吹き荒れて

2010年09月24日 | Weblog
ダンテの神曲は岩波から山川丙三郎、集英社から寿岳文章、河出から平川祐弘の三つの翻訳書が出されており、私なんぞその三つとも持っておりますが、何方のものも読了したことがありません。何にも自慢にはなりませんが、持っているだけで気持ちが豊かになりますから、あながち無駄ではないのです。

昨日嵐が湘南を襲い、一日ベッドで読書をしておりましたが、ボージョレ・ヌーボーの件で緊急なメールが佐和さんかありました。ついでのところに、ドレの神曲を卒読いたしましたとの一文があり、たいしたもんだと恐れ入りました。先週ドレの版画の挿絵入りの神曲と、平川祐弘さんの神曲講義を買い求めたと聞いておりましたから、嵐を利用してその片方を読了なさったわけです。神曲講義を読了するのも時間の問題でしょう。彼女は平川ファンで、私が紹介した河出の神曲をずっと前に読了しており、平川さんが書かれた他のものも随分買い集めて読んでいるはずです。

私のほうはといえば、何れの神曲も端の50ページまでは行くのですが、あまりの単調さについつい放り投げてしまい、ダイジェスト版はないのかと捜し求めたところ、二年前に阿刀田高さんが書かれた『やさしいダンテ「神曲」』があり、それを読んでよしとしている次第です。

しかしこのような勉強熱心な部下が手元にいてくれると、イタリアワインをやってゆくのに心強いですねえ。ベッペなんかダンテ狂いですから、現在セラーを三層にして神曲の世界を再現しようとしてます。地獄、煉獄、天国から造られるワインは一体どのような味わいを持つのでしょうか、楽しみですねえ。


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中秋の名月

2010年09月23日 | Weblog
昨日はとても暑く、真夏がぶり返したような天気でしたが、その中を東京国際展示場で行われている有機製品の展示会に行ってきました。掛け声とは裏腹に年々会が縮小されているようで、一回りしたら見終わってしまいました。この調子では来年の開催が危ぶまれるような気がいたしました。今回の特色といわれれば、商品原価率の低い化粧品の展示が多かった点ですね、ワインは原価率が高い商品ですので、こういった販売促進の費用の捻出が厳しいものですから、同業者で出展費用を自分で支払って出ているところは見当たりませんでした。来年は「化粧品&健康食品展」と名称を変えたほうが良さそうです。

それでも今回興味を惹き面白かったのは、有機酒を作っている酒蔵のブースで、毎年数千万の赤字を出しながら道楽で造り続けているとのことでした。酒は酸が綺麗に最後まで味わいを支配し、かといって口に含んで抵抗はなく、清らかな酒質の印象でした。透明感のあるとてもいい酒で、これならいくら飲んでも飲み飽きず、悪酔いせずに何時までも飲んでいられるのではないかと思いましたが、実際普通の酒が酔い覚めに8時間かかるところ有機酒は6時間とのデータもあるようです。

夜、友人に誘われて松茸で酒を飲みながら月見をいたしました。東の空に大きく出る仲秋の名月も良いですが、夜も更けて南天に煌々と輝く望月が絶品でした。十六夜は生憎の天気で楽しめそうにありませんが、この時期はただ空を見上げているだけで楽しめるのですから、有難いというほかありません。








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待宵の月

2010年09月22日 | Weblog
お薬を飲んでいたのでお酒が飲めませんでしたが、昨日昼に最後のお薬を飲み、夜はお酒をいただくことにいたしました。夕刻からお取引先の望月さんが一日早くお見えになり、一緒にバレンシアワインの試飲をしておりましたら、19:00になってしまい、慌ててて外へ飛び出し鳥伊勢へ向かいました。ヤゲン、つくね、皮をいただきながら大関の樽酒を燗で茶碗に三杯いただきましたが、秋が深まると酒も体の芯まで届いてくるようです。あるいは、四日ぶりの酒であったのでそう感じたのかもしれません。何れにしろいい酒でした。

鳥伊勢から歩いて30メートルのところに利休庵があり、片方によって片方には寄らないというような薄情は持ち合わせておりませんから、利休庵で赤エンドウ肴をに白磁の徳利に入った菊正宗辛口の燗を二本ほどいただき、谷中、胡瓜、人参に金山寺味噌がついた肴を追加し、いい気分になったところでもりを手繰り、蕎麦湯で猪口の底に沈んだ蕎麦を浚って仕舞いといたしました。

南天には、小望月が煌々と輝いておりましたねえ。
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観そこなった映画と食い残したチーズ

2010年09月21日 | Weblog
今朝の湘南は随分と冷え込んで外気は可也冷たく、これで日中真夏日になるのだろうかといぶかっておりましたが、日の光というものは大変なもので、朝日が差し込んで来たら一気に暑くなりました。

昨日は、二宮から平塚まで東海道本線の駅二区間を久し振りに歩きましたらひどく疲れ、夜ベッドに横になって十三夜の見事な月を眺めてるうちに眠ってしまったようです。三連休の間に計画した読書はあえなく不首尾に終わり、チーズを食い残し、映画を観そこなう羽目になりました。

小津安二郎は中国戦線で軍曹として働き、帰ってきて「晩春」「麦秋」「東京物語」の三つの傑作を撮ったのですが、戦争体験が映画に反映されていることは間違いなさそうで、この先「絢爛たる影絵 小津安二郎」にそのあたりのことが書かれているのかどうか、とても気になるところです。

元々映画は観ないたちですが、テレヴィで観た「東京物語」に大いに感銘を受け、小津安二郎という人に興味を持って来ましたが、積極的に資料を集めることもせず長年が経過して、今回のこの本に出会いました。

この「絢爛たる影絵 小津安二郎」は四度目の出版で、82年に文春から出て、85年に文春文庫で文庫化され、2003年に講談社、今回岩波で出されたわけですから、幸せな本でもあります。その四回目に遭遇したわけですが、私にとって機が熟したと考えるのが妥当でしょう。何があっても卒読しないといけませんね。
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