楽しみにしていた東アジア選手権が開幕した。前回2003年に日本で開催された時はスタジアム観戦が出来なかっただけに今回はなるべく多くの試合を…と思っていた。開幕戦が行われた2月6日は天気予報が大当たりの晴れはしたものの寒さの上に強風の北風が吹き荒れる天候。おかげで武蔵野線のダイヤが大幅に乱れて新宿経由で味の素スタジアムのある飛田給に行かざるを得なくなり、競技場入りできた時はもう後半が始まっていた…… どうもここの競技場とは相性がよくないなぁ…. 愛するサンガの試合観戦で2度来た事があるが2度とも遅刻だった…. 会社の仲間とフットサルをしに来た時は間に合ったか..( 関係無いか?
FIFA ランク6位 ( 日本) と 13位 ( 中国 ) との対決は世界的に見ても屈指の好カードのはず。男子の FIFA ランクに合わせるとドイツ ( 6位 ) 対ロシア ( 13位 ) となるのだけれど…..しかしスタンドの入りはちょっと寂しいなぁ… マスコミもワールドカップを控えた男子ばかりに関心を寄せ過ぎている。これじゃぁ真のジャーナリズムは…. 俺みたいなサラリーマンが言っても仕方ないか?
かつて世界の女子サッカー界のトップを行った中国代表。アトランタ五輪銀メダル。ワールドカップは 1999 年大会が準優勝。1995年大会が3位。ワールドカップでは常にベスト8以上。日本はまだ1次リーグを突破した事が無い。しかしメダルの期待された北京五輪では準々決勝でなでしこに 0-2 で完敗。そして日中の立場は大逆転してしまった。来年のワールドカップを目指してと云うよりもまずはアジア王者の称号を目指して今大会を再スタートの機会ととらえていると思った。しかし北京五輪に続いて商瑞華監督が指揮を執る事に。
スタメンを見ると GK張艶茹, DF は左に高燕、右に劉華娜 CB は170cm の李丹陽と 173cm の袁帆 ボランチが龐豊月と畢妍 ワントップに 174cm のエース韓端をおき2列目は左が尤佳 真ん中に馬暁旭 右に徐媛。 時折馬暁旭が上がって来て2トップを形成していた。今回登録されたメンバーのうち北京五輪組は7人。GK張艶茹, 高燕、劉華娜、畢妍 韓端, 徐媛が北京五輪組で他の張娜、張頴 のMFはスタメンからは外れた。 ただ2007年ワールドカップ組経験者は張艶茹, 馬暁旭、畢妍そして韓端の4人。 馬暁旭は北京五輪には選ばれなかったがこの大会から代表に復帰した。
一方のなでしこは安藤、永里の Bundesliga 組は所属先の都合で今大会に出場出来なかったがエース澤穂希は健在。そして DF 熊谷紗希、MF菅澤優衣香 FW 高瀬愛実そして岩渕真奈の10代選手が4人メンバー入りを果たした。岩渕はまだ16歳。 2008年 ニュージーランドで開催されたFIFA U-17 ( 観に行きたかったなぁ….) の大会MVP。準決勝に進出した北京五輪メンバーから池田、新川らの常連が抜けたがGK福元や澤、宮間ら9人が北京五輪組。この日のスタメンはGK が海堀、DFは左サイドが鮫島、右サイドが矢野。CBに熊谷と石清水。澤と組むボランチは宮間でなくて宇津木。宮間は2列目の右に入り近賀が左に。そして Atlanta Beat 所属の山口と大野の2トップ。山口と鮫島以外は全て北京五輪組。
専門誌によればメンバーは大きく変わったはずなんだけど…..
1月にチリで開催された Bicentenial Woman’s Cup で優勝し、まさに万全の態勢で今大会に臨んできているという感じがした。
競技場に着いたのが後半開始直後だったので既に日本が宮間のFKで1点を先制した後だった。競技場内は中国人サポーター達の“中国隊!加油”の声援が響くが、ピッチ上ではなでしこが後半開始から中国を圧倒。 中国DF陣が敷いた比較的高い最終ラインの裏にどんどんスルーパスが通った。
そしてやはりさすがと思わされたのは澤穂希だった。ボールキープ、最前列への飛び出し、そしてポジショニング。どれをとっても違いを見せていた。
一方の中国は代表復帰を果たした馬暁旭のボールキープ頼み。しかし中盤が分断されてしまい中々日本ゴールに近付けない。よしんばPA付近まで上がって来てもCBの熊谷、近賀が落ち着いて対応。51分には澤が左サイドを上がる宮間にロングフィード。更に中央から走り込んだ大野にボールが渡り後ろに戻したところを宇津木がミドルを放つがGK張艶茹の正面。
中国は韓端がサイドからのドリブル突破を見せたり徐媛がミドルシュートを放ったりと挽回の兆しを少し見せるが 61分、試合を決める日本の追加点が決まった。
宇津木が前線にロングボールを入れると李丹陽がヘッドでクリアーをするも小さく龐豊月がヘッドでGK張艶茹に戻そうとするがこれも中途半端に張のはるか前に落ちるミスパスとなりそれを長躯走り込んできた近賀が拾ってそのままドリブルシュートを放つと GK 張艶茹 を破りゴールネットを揺らした。
北京五輪同様に日本が主導権を握り続ける展開が続くが試合内容は今回の方がもっと圧倒していた。 64分には澤が倒されてFKを得るがここはGK正面に。 その直後に大歓声に迎えられ16歳の岩渕が山口に替って投入された。 これで前線が大野と岩渕の2トップに。 そしてCBの岩清水、熊谷もどんどん上がって来るようになった。66分宮間とのパス交換で相手DFを振りきり右サイドに切れ込み最後はGK張艶茹をもかわした大野がシュートを放つが必死に戻った李丹陽がスライディングで追加点を阻んだ。
劣勢の中国はその直後に尤佳を下げて汪怜怜をいれる。 そしてボールキープの出来る馬暁旭を中盤に下げて龐豊月と韓端の2トップに。その効果があったか70分を過ぎて中国が日本ゴール前に迫るシーンが見られる様になった。 71分には馬暁旭のスルーパスが徐媛につながり汪怜怜のシュートに持ち込む。 76分には馬暁旭のポストプレーから徐媛がシュートを放つがこれはGK海堀の正面に。 日本の左サイドを突いてくる様になった。
しかし中国が攻勢を見せた時間はここまで。 日本の最終ラインというよりもボランチの澤、宇津木の守備がよく効いており日本は常に数的優位が保たれる。それでなくても1対1になれば日本側の方に軍配が上がる。
72分、大野が宇津木とのパス交換で抜け出し左サイドからシュートを放つがここは GK 張艶茹 が右に倒れ込んで防ぐ。 中国は83分にCB高燕に替えて MF 孫凌, 85分には龐豊月を下げて劉州を入れて攻撃選手を増やすがゴールと言うよりもシュートになかなか持ち込めずタイムアップ。 なえでしこは危なげない試合内容で開幕戦を飾った。
翌日の報道はどれも男子の中国戦の事ばかり。なでしこの事を詳しく伝えるものは皆無に等しかった。
そこで中国のスポーツ新聞が伝えた報道の一部を下記の通りにまとめてみた。
敗戦にショックだった女国足達
試合に敗れた直後の中国女子代表チームの選手達は大変落ち込んでおり夕食もそこそこにみな部屋に戻ってしまった。 ある選手は WEB SITE ニュースを見て、ある選手は男子の中国対日本戦をテレビ観戦していた。 そしてその試合が引き分けに終わると自分達の試合結果と比較し失望感がより増してきたらしい。試合翌日7日の朝食時に選手達の雰囲気を察した選手達は午前練習の後、選手達が部屋に引きこもる事を避けるためにホテル周辺への外出を促すこととした。連盟役員達もこれ以上彼女達の失望感を増長させない為に
“ ワールドカップ予選を兼ねた Asian Cup で敗れるよりもこの日本戦でやぶれた方がまだまし。”と選手達に声をかけた。
また選手達に余分なプレッシャーをかけない様にとも促すシーンがあったらしい。
試合翌日たまたま商用で選手達の宿泊している京王プラザホテルに行った。そして男女の中国代表選手達、関係者や報道陣がいたけど彼女達はそんなに落ち込んだ様子は無かったなぁ…もちろん日本と引き分けた男子の選手達の方が足取りは軽かったけど。 韓端は他の女子選手達と違い髪にウェーブをあてるなど垢ぬけていている感じだった。報道陣とのやり取りを見ていても都会的な雰囲気を出していた。( 表現古いか….) 北朝鮮の棄権によりこの試合が事実上の決勝戦ともいえた。その試合で完敗したのでやはりショックはあったのだろうなぁ…
代表復帰の馬暁旭
代表に復帰した馬暁旭はこの日の自分の出来に就いて“思った様にプレーできなかった”とインタビューで応えた。商瑞華政権の中心選手として代表に復帰した馬暁旭は2列目左と言うよりもウィングのポジションでスタメン起用されたが後半にはいると右のポジションに替った。これはこの日の出来がいまいちだった為らしい。そして慣れないポジデョンだった事も。馬は試合を振り返り今の日本代表とは埋め難いギャップが存在する事を認めていた。
北京五輪はけがの為に最後に登録メンバーから外れてしまった馬暁旭。 再起の東アジア選手権の開幕戦は試合終盤になって能力の高さの片りんを見せた。もし彼女が五輪に出て日本戦に出場していたらどうだっただろう….
厳しいが詳細な論評。
試合全体を見てみるとボール支配率では日本が 59.7, 中国が 40.3 。シュート数は日本の12に対して中国が6.CKは日本が10.そして中国は何と0であったらしい。
日本はあらゆるところで組織的にボールを奪ったり支配をしたりするのに対して中国は個人の能力頼り。 FK数は中国15に対して日本は13だったが 中国は相手ゴールから30m 内でFKを得られなかった。韓端、馬暁旭への対応は中盤を制圧し彼女達をなるべくゴール前のヴァイタルエリアでボールを持たさない事。また攻撃陣へのマークもタイトであった。 韓端は4度のパスミスがあったがパス成功率が 87% 。ポストプレーでも彼女の能力を発揮したが彼女の上背を生かしてチャンスに結びつけたのは1度だけであった。韓端は良いパフォーマンスを見せたが馬暁旭のポス成功率は 71.4% 徐媛に至っては13回もボールをとられ 65.6% であった。韓端 174cm, 馬暁旭 172cm そして 176cm の徐媛と言った中国攻撃陣の高さを生かした攻撃は見られなかった。彼女達へのフォローが少なかっただけでなく、彼女達自身、日本DF陣に抑えられるシーンが少なくなかった。その点がこの日の日本の勝因となったと思われる。
この2チームが対戦した時に選手個々の能力よりも戦術とその戦術にあった選手を選ぶ事が勝因に大きく影響すると思われる。 England やドイツがスペインスタイルの football を採用しスペインと戦っても結果はわかっている。商瑞華監督が日本に勝とうとするなら日本スタイルの football を起用しても意味がない。 それは日本の選手は個々に秀でた能力を持っているからではない。個々の能力なら中国の韓端、馬暁旭が秀でている。 韓は女性版 Gomez で馬は女性版の Rooney である。彼女達2人をなるべく相手ゴール前でプレーさせねばならない。
また戦術だけでなく選手のここのレベルも違いがあった。 中国の左サイドバックの高燕は何度もミスを繰り返し、日本の澤はセカンドボールへの対応など日本の重要な役割をこなした。この試合で少し目を引いたのはCBの李丹陽であった。彼女のヘッドは攻守に武器になる。袁帆と彼女のヘッドだけが相手チームに脅威であった。
5月19日に中国成都で開催される AFC Women’s Asian Cup で中国女子代表は1次リーグオーストラリア、韓国、ベトナムと同じグループである今の中国代表は更にレベルアップしないとオーストラリアや韓国と対戦するに値しないチームである。 なでしこ達のフィールド選手で170cm以上あるのは DF 熊谷( 171cm )のみ。2007年のワールドカップでも欧州の選手 ( ドイツ、イングランド ) との体格差を見せつけられるシーンが多く見られた。 たとえば欧州の選手達は1発のロングキックでサイドチェンジや前線に放り込む事が出来るがなでしこ達はどうしても….. そしてCKのチャンス時でも制空権を握られてしまっていたので相手はピンチでも容易にコーナーに逃げる事が出来た。しかし今はそれを補って余るほどの戦術と個人能力を兼ね備えている….. と信じているのだが.
2010年の女子代表チームの開幕戦となった東アジア選手権の日本戦は敗戦に終わったが2000年代に入り中国女子代表の Year Beak Match で初黒星を喫したこととなった。これまでの対戦戦績は下記の通り。
January 11, 2001: China 1-0 United States
January 23, 2002: China 2-1 Germany
January 23, 2003: China 0-0 Germany
January 30, 2004: China 2-1 Canada
January 28, 2005: China 3-1 Russia
January 18, 2006: China 1-1 France
January 26, 2007: China 2-0 England
January 16, 2008: China 2-0 Finland
January 10, 2009: China 6-0 New Zealand
商瑞穂監督の試合後のコメントから : 日本はアジア最強のチームになった。
この試合で日本女子代表は素晴らしいゲームコントロールとテンポの良さを示し中国女子代表チームは多くの問題を露呈した。この日両チームの戦いはまさにアジアのチームの特徴を出したものであった。 日本代表の動きは我々よりは早かたった。60分を過ぎた後の試合内容に就いて我々は満足をしているがチャンスを掴めず日本が勝利を収めた。 私は将来的に日中の両国がお互いに影響しあう事が両国の進歩を大いに助けるのものと信じている。
商瑞穂監督はアジアの女子の特徴についても言及した。“攻撃とボールの動きそしてショートパスを使っての相手陣内への侵入。これらに就いて言えば最初の20分間中国代表は押しこまれて攻撃に移ってもスピードがなくサイド攻撃がほとんどなかった。日本女子はここ数年で目覚ましい発展を遂げ、中国がそのレベルに達するにはまだ時間がかかる。しかし Asian Cup は期待できそうだ。”
この日の中国は後半から2トップにした。これまで中国チームは 4-2-3-1 のワントップで試合に臨んでいた。我々は 4-4-2 ではなく 4-2-3-1 を採用することが多かったが 2 トップは効果的だ。かつての AFC of the Year 選手 馬暁旭が代表に復帰した。この日の馬の出来には商瑞穂監督は満足をした。 “馬暁旭は肉体的には回復を見せたがまだ精神的に万全になる為には少し時間が掛かる様だ、しかし万全なフィジカルコンディションにある限り彼女は能力を発揮できる。 この日の彼女の動きは問題が無かった。
最後に商瑞穂監督は“日本は最高の技術を持っており大変強い精神的なものをもっている。そして他の面でもアジアでベストだ。中国代表も素晴らしいものをもっている。 Asian Cup はよりエキサイトな試合を披露できるだろう。“ と結んだ。
日中共に監督は五輪に続いて指揮を執っている。女子サッカーの日中定期戦が実現すれば面白い。
出来れば北朝鮮とも定期戦が行えないか?でもそれは南北統一後か? いや統一されたら南も北もないか。
実際に試合は70分を過ぎたあたりに中国が2トップにしてから挽回をした様に見えた。ただ得点は生まれなかったが… 中国女子代表は10日韓国女子代表を 2-1 で降した。 これで Asian Cup に向けて少し光明が差してきたかもしれない。
だけど日本のマスコミはなぜなでしこ達にスポットライトを当てないのだろう?世界ランク6位の種目なんて他に何がある?女子のソフトボールと、野球と、あと女子バレーボールは何位だったっけ….. これだけは言う事が出来る。 なでしここそ世界4強の射程距離内にあるという事実を。
FIFA ランク6位 ( 日本) と 13位 ( 中国 ) との対決は世界的に見ても屈指の好カードのはず。男子の FIFA ランクに合わせるとドイツ ( 6位 ) 対ロシア ( 13位 ) となるのだけれど…..しかしスタンドの入りはちょっと寂しいなぁ… マスコミもワールドカップを控えた男子ばかりに関心を寄せ過ぎている。これじゃぁ真のジャーナリズムは…. 俺みたいなサラリーマンが言っても仕方ないか?
かつて世界の女子サッカー界のトップを行った中国代表。アトランタ五輪銀メダル。ワールドカップは 1999 年大会が準優勝。1995年大会が3位。ワールドカップでは常にベスト8以上。日本はまだ1次リーグを突破した事が無い。しかしメダルの期待された北京五輪では準々決勝でなでしこに 0-2 で完敗。そして日中の立場は大逆転してしまった。来年のワールドカップを目指してと云うよりもまずはアジア王者の称号を目指して今大会を再スタートの機会ととらえていると思った。しかし北京五輪に続いて商瑞華監督が指揮を執る事に。
スタメンを見ると GK張艶茹, DF は左に高燕、右に劉華娜 CB は170cm の李丹陽と 173cm の袁帆 ボランチが龐豊月と畢妍 ワントップに 174cm のエース韓端をおき2列目は左が尤佳 真ん中に馬暁旭 右に徐媛。 時折馬暁旭が上がって来て2トップを形成していた。今回登録されたメンバーのうち北京五輪組は7人。GK張艶茹, 高燕、劉華娜、畢妍 韓端, 徐媛が北京五輪組で他の張娜、張頴 のMFはスタメンからは外れた。 ただ2007年ワールドカップ組経験者は張艶茹, 馬暁旭、畢妍そして韓端の4人。 馬暁旭は北京五輪には選ばれなかったがこの大会から代表に復帰した。
一方のなでしこは安藤、永里の Bundesliga 組は所属先の都合で今大会に出場出来なかったがエース澤穂希は健在。そして DF 熊谷紗希、MF菅澤優衣香 FW 高瀬愛実そして岩渕真奈の10代選手が4人メンバー入りを果たした。岩渕はまだ16歳。 2008年 ニュージーランドで開催されたFIFA U-17 ( 観に行きたかったなぁ….) の大会MVP。準決勝に進出した北京五輪メンバーから池田、新川らの常連が抜けたがGK福元や澤、宮間ら9人が北京五輪組。この日のスタメンはGK が海堀、DFは左サイドが鮫島、右サイドが矢野。CBに熊谷と石清水。澤と組むボランチは宮間でなくて宇津木。宮間は2列目の右に入り近賀が左に。そして Atlanta Beat 所属の山口と大野の2トップ。山口と鮫島以外は全て北京五輪組。
専門誌によればメンバーは大きく変わったはずなんだけど…..
1月にチリで開催された Bicentenial Woman’s Cup で優勝し、まさに万全の態勢で今大会に臨んできているという感じがした。
競技場に着いたのが後半開始直後だったので既に日本が宮間のFKで1点を先制した後だった。競技場内は中国人サポーター達の“中国隊!加油”の声援が響くが、ピッチ上ではなでしこが後半開始から中国を圧倒。 中国DF陣が敷いた比較的高い最終ラインの裏にどんどんスルーパスが通った。
そしてやはりさすがと思わされたのは澤穂希だった。ボールキープ、最前列への飛び出し、そしてポジショニング。どれをとっても違いを見せていた。
一方の中国は代表復帰を果たした馬暁旭のボールキープ頼み。しかし中盤が分断されてしまい中々日本ゴールに近付けない。よしんばPA付近まで上がって来てもCBの熊谷、近賀が落ち着いて対応。51分には澤が左サイドを上がる宮間にロングフィード。更に中央から走り込んだ大野にボールが渡り後ろに戻したところを宇津木がミドルを放つがGK張艶茹の正面。
中国は韓端がサイドからのドリブル突破を見せたり徐媛がミドルシュートを放ったりと挽回の兆しを少し見せるが 61分、試合を決める日本の追加点が決まった。
宇津木が前線にロングボールを入れると李丹陽がヘッドでクリアーをするも小さく龐豊月がヘッドでGK張艶茹に戻そうとするがこれも中途半端に張のはるか前に落ちるミスパスとなりそれを長躯走り込んできた近賀が拾ってそのままドリブルシュートを放つと GK 張艶茹 を破りゴールネットを揺らした。
北京五輪同様に日本が主導権を握り続ける展開が続くが試合内容は今回の方がもっと圧倒していた。 64分には澤が倒されてFKを得るがここはGK正面に。 その直後に大歓声に迎えられ16歳の岩渕が山口に替って投入された。 これで前線が大野と岩渕の2トップに。 そしてCBの岩清水、熊谷もどんどん上がって来るようになった。66分宮間とのパス交換で相手DFを振りきり右サイドに切れ込み最後はGK張艶茹をもかわした大野がシュートを放つが必死に戻った李丹陽がスライディングで追加点を阻んだ。
劣勢の中国はその直後に尤佳を下げて汪怜怜をいれる。 そしてボールキープの出来る馬暁旭を中盤に下げて龐豊月と韓端の2トップに。その効果があったか70分を過ぎて中国が日本ゴール前に迫るシーンが見られる様になった。 71分には馬暁旭のスルーパスが徐媛につながり汪怜怜のシュートに持ち込む。 76分には馬暁旭のポストプレーから徐媛がシュートを放つがこれはGK海堀の正面に。 日本の左サイドを突いてくる様になった。
しかし中国が攻勢を見せた時間はここまで。 日本の最終ラインというよりもボランチの澤、宇津木の守備がよく効いており日本は常に数的優位が保たれる。それでなくても1対1になれば日本側の方に軍配が上がる。
72分、大野が宇津木とのパス交換で抜け出し左サイドからシュートを放つがここは GK 張艶茹 が右に倒れ込んで防ぐ。 中国は83分にCB高燕に替えて MF 孫凌, 85分には龐豊月を下げて劉州を入れて攻撃選手を増やすがゴールと言うよりもシュートになかなか持ち込めずタイムアップ。 なえでしこは危なげない試合内容で開幕戦を飾った。
翌日の報道はどれも男子の中国戦の事ばかり。なでしこの事を詳しく伝えるものは皆無に等しかった。
そこで中国のスポーツ新聞が伝えた報道の一部を下記の通りにまとめてみた。
敗戦にショックだった女国足達
試合に敗れた直後の中国女子代表チームの選手達は大変落ち込んでおり夕食もそこそこにみな部屋に戻ってしまった。 ある選手は WEB SITE ニュースを見て、ある選手は男子の中国対日本戦をテレビ観戦していた。 そしてその試合が引き分けに終わると自分達の試合結果と比較し失望感がより増してきたらしい。試合翌日7日の朝食時に選手達の雰囲気を察した選手達は午前練習の後、選手達が部屋に引きこもる事を避けるためにホテル周辺への外出を促すこととした。連盟役員達もこれ以上彼女達の失望感を増長させない為に
“ ワールドカップ予選を兼ねた Asian Cup で敗れるよりもこの日本戦でやぶれた方がまだまし。”と選手達に声をかけた。
また選手達に余分なプレッシャーをかけない様にとも促すシーンがあったらしい。
試合翌日たまたま商用で選手達の宿泊している京王プラザホテルに行った。そして男女の中国代表選手達、関係者や報道陣がいたけど彼女達はそんなに落ち込んだ様子は無かったなぁ…もちろん日本と引き分けた男子の選手達の方が足取りは軽かったけど。 韓端は他の女子選手達と違い髪にウェーブをあてるなど垢ぬけていている感じだった。報道陣とのやり取りを見ていても都会的な雰囲気を出していた。( 表現古いか….) 北朝鮮の棄権によりこの試合が事実上の決勝戦ともいえた。その試合で完敗したのでやはりショックはあったのだろうなぁ…
代表復帰の馬暁旭
代表に復帰した馬暁旭はこの日の自分の出来に就いて“思った様にプレーできなかった”とインタビューで応えた。商瑞華政権の中心選手として代表に復帰した馬暁旭は2列目左と言うよりもウィングのポジションでスタメン起用されたが後半にはいると右のポジションに替った。これはこの日の出来がいまいちだった為らしい。そして慣れないポジデョンだった事も。馬は試合を振り返り今の日本代表とは埋め難いギャップが存在する事を認めていた。
北京五輪はけがの為に最後に登録メンバーから外れてしまった馬暁旭。 再起の東アジア選手権の開幕戦は試合終盤になって能力の高さの片りんを見せた。もし彼女が五輪に出て日本戦に出場していたらどうだっただろう….
厳しいが詳細な論評。
試合全体を見てみるとボール支配率では日本が 59.7, 中国が 40.3 。シュート数は日本の12に対して中国が6.CKは日本が10.そして中国は何と0であったらしい。
日本はあらゆるところで組織的にボールを奪ったり支配をしたりするのに対して中国は個人の能力頼り。 FK数は中国15に対して日本は13だったが 中国は相手ゴールから30m 内でFKを得られなかった。韓端、馬暁旭への対応は中盤を制圧し彼女達をなるべくゴール前のヴァイタルエリアでボールを持たさない事。また攻撃陣へのマークもタイトであった。 韓端は4度のパスミスがあったがパス成功率が 87% 。ポストプレーでも彼女の能力を発揮したが彼女の上背を生かしてチャンスに結びつけたのは1度だけであった。韓端は良いパフォーマンスを見せたが馬暁旭のポス成功率は 71.4% 徐媛に至っては13回もボールをとられ 65.6% であった。韓端 174cm, 馬暁旭 172cm そして 176cm の徐媛と言った中国攻撃陣の高さを生かした攻撃は見られなかった。彼女達へのフォローが少なかっただけでなく、彼女達自身、日本DF陣に抑えられるシーンが少なくなかった。その点がこの日の日本の勝因となったと思われる。
この2チームが対戦した時に選手個々の能力よりも戦術とその戦術にあった選手を選ぶ事が勝因に大きく影響すると思われる。 England やドイツがスペインスタイルの football を採用しスペインと戦っても結果はわかっている。商瑞華監督が日本に勝とうとするなら日本スタイルの football を起用しても意味がない。 それは日本の選手は個々に秀でた能力を持っているからではない。個々の能力なら中国の韓端、馬暁旭が秀でている。 韓は女性版 Gomez で馬は女性版の Rooney である。彼女達2人をなるべく相手ゴール前でプレーさせねばならない。
また戦術だけでなく選手のここのレベルも違いがあった。 中国の左サイドバックの高燕は何度もミスを繰り返し、日本の澤はセカンドボールへの対応など日本の重要な役割をこなした。この試合で少し目を引いたのはCBの李丹陽であった。彼女のヘッドは攻守に武器になる。袁帆と彼女のヘッドだけが相手チームに脅威であった。
5月19日に中国成都で開催される AFC Women’s Asian Cup で中国女子代表は1次リーグオーストラリア、韓国、ベトナムと同じグループである今の中国代表は更にレベルアップしないとオーストラリアや韓国と対戦するに値しないチームである。 なでしこ達のフィールド選手で170cm以上あるのは DF 熊谷( 171cm )のみ。2007年のワールドカップでも欧州の選手 ( ドイツ、イングランド ) との体格差を見せつけられるシーンが多く見られた。 たとえば欧州の選手達は1発のロングキックでサイドチェンジや前線に放り込む事が出来るがなでしこ達はどうしても….. そしてCKのチャンス時でも制空権を握られてしまっていたので相手はピンチでも容易にコーナーに逃げる事が出来た。しかし今はそれを補って余るほどの戦術と個人能力を兼ね備えている….. と信じているのだが.
2010年の女子代表チームの開幕戦となった東アジア選手権の日本戦は敗戦に終わったが2000年代に入り中国女子代表の Year Beak Match で初黒星を喫したこととなった。これまでの対戦戦績は下記の通り。
January 11, 2001: China 1-0 United States
January 23, 2002: China 2-1 Germany
January 23, 2003: China 0-0 Germany
January 30, 2004: China 2-1 Canada
January 28, 2005: China 3-1 Russia
January 18, 2006: China 1-1 France
January 26, 2007: China 2-0 England
January 16, 2008: China 2-0 Finland
January 10, 2009: China 6-0 New Zealand
商瑞穂監督の試合後のコメントから : 日本はアジア最強のチームになった。
この試合で日本女子代表は素晴らしいゲームコントロールとテンポの良さを示し中国女子代表チームは多くの問題を露呈した。この日両チームの戦いはまさにアジアのチームの特徴を出したものであった。 日本代表の動きは我々よりは早かたった。60分を過ぎた後の試合内容に就いて我々は満足をしているがチャンスを掴めず日本が勝利を収めた。 私は将来的に日中の両国がお互いに影響しあう事が両国の進歩を大いに助けるのものと信じている。
商瑞穂監督はアジアの女子の特徴についても言及した。“攻撃とボールの動きそしてショートパスを使っての相手陣内への侵入。これらに就いて言えば最初の20分間中国代表は押しこまれて攻撃に移ってもスピードがなくサイド攻撃がほとんどなかった。日本女子はここ数年で目覚ましい発展を遂げ、中国がそのレベルに達するにはまだ時間がかかる。しかし Asian Cup は期待できそうだ。”
この日の中国は後半から2トップにした。これまで中国チームは 4-2-3-1 のワントップで試合に臨んでいた。我々は 4-4-2 ではなく 4-2-3-1 を採用することが多かったが 2 トップは効果的だ。かつての AFC of the Year 選手 馬暁旭が代表に復帰した。この日の馬の出来には商瑞穂監督は満足をした。 “馬暁旭は肉体的には回復を見せたがまだ精神的に万全になる為には少し時間が掛かる様だ、しかし万全なフィジカルコンディションにある限り彼女は能力を発揮できる。 この日の彼女の動きは問題が無かった。
最後に商瑞穂監督は“日本は最高の技術を持っており大変強い精神的なものをもっている。そして他の面でもアジアでベストだ。中国代表も素晴らしいものをもっている。 Asian Cup はよりエキサイトな試合を披露できるだろう。“ と結んだ。
日中共に監督は五輪に続いて指揮を執っている。女子サッカーの日中定期戦が実現すれば面白い。
出来れば北朝鮮とも定期戦が行えないか?でもそれは南北統一後か? いや統一されたら南も北もないか。
実際に試合は70分を過ぎたあたりに中国が2トップにしてから挽回をした様に見えた。ただ得点は生まれなかったが… 中国女子代表は10日韓国女子代表を 2-1 で降した。 これで Asian Cup に向けて少し光明が差してきたかもしれない。
だけど日本のマスコミはなぜなでしこ達にスポットライトを当てないのだろう?世界ランク6位の種目なんて他に何がある?女子のソフトボールと、野球と、あと女子バレーボールは何位だったっけ….. これだけは言う事が出来る。 なでしここそ世界4強の射程距離内にあるという事実を。
返事が遅くなり申し訳ございません。
FXS81 様
東アジア選手権で優勝したのは女子。それも2連覇。なのにクローズアップされるのは男子の報道ばかり。それが不思議でたまりません。せめて我々だけでもしっかりサポートしましょう。
通りすがり様
感謝だなんてお恥ずかしい。世界ランクでも女子は列強に肩を並べる順位。それをアピールすることこそ真のジャーナリズムと思います。
尋ね人様
御無沙汰しております。やはり北朝鮮の棄権は残念でした。こことの真剣勝負の現場観戦を楽しみにしていたのですが。 女子はあとオーストラリアもいれれば大いに盛り上がりそうです。
(男子も Socceroos を入れてもいいと思う。その方が私個人的に楽しい。)
男子の東アジア選手権は存在意義が問われてますが、女子に関しては毎年開催すればいいのにと思います。
昨年の女子は、世界とアジアの公式戦が無かったので、なでしこの強化を考えても、実にもったいないと思いましたので。
今年はアジア杯の他に、7月にはドイツでU20W杯があります。
岩渕が中心となってアジアを制したこの世代は期待がもてるので、大いに注目したいです。
書いていただいたことに感謝します。
(別に関係者ではありません。)
大いに同意します。
もちろん男子サッカーも応援していますが、女子サッカーの報道は少なすぎですよね。
若くて見た目が良い選手が入れば、マスコミも注目するんでしょう。
スポーツ報道のレベルってなかなかあがらないですね。