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近所を歩く、遠くの町を歩く、見たこと食べたこと、感じたことを思いつくままに・・・。おじさんのひとりごと

下山事件謀略論はエンタメですか?

2010年01月22日 | 下山事件
昨日の続きです。

今日で、下山事件はお終いです。

自殺説で書かれた佐藤一氏の“「下山事件」謀略論の歴史”を読んで、他殺説から自殺説に傾いたのですが、自殺説に傾くと、下山事件に対する興味は半減するのです。

自殺説に傾くと、他殺説の主張の根拠をもひとつ、ひとつ、潰していく作業に感心が向いていくのです。他殺説潰しも、やり始めると、結構、これは、これで、面白いのかも知れません。

それで、何ですが、自殺説の決定的な証拠となった、轢断現場付近を下山総裁がウロツキ歩いたとする目撃証言の数々と、なかでも決定的なのが、下山総裁が休憩した「末広旅館の女将」の証言です。

他殺説としては、ウロツキ歩いていたのは「替え玉」だとしています。目撃証言は警察の誘導質問と証言の改竄と主張し、特に、「旅館の女将」の亭主は、元特高警察官であり、謀略の一端を担っていたと主張しているのです。

でも、しかし、下山総裁の死が謀略であるならば、何故、自殺と見せかける工作をしたのか、わざわざそんな面倒なことをする必要はない筈です。

自殺、他殺、両方を匂わせ、曖昧なまま、謎を残し事件を終結することが、謀略側にとってで、どんな利益を生むのか、この点こそ、曖昧なのです。

他殺説あっての自殺説、自殺説あっての他殺説、お互いに、それなりに、同じ思いで、相互補間関係では、と思ったりすもるのです。

謀略説の方達の本は、確かに面白く、謎が、謎を産み、とどまることなく、何処までも広がっていくのです。歴史の真実を追究することより、謎を解く過程を楽しんでいる傾向が見られるのです。

また、他殺説を主張する方達には、暗黙の了解を感じるのです。兎に角、複雑怪奇な歴史的謀略事件の謎解きを、謎のまま、いつまでも楽しみ続けること。自殺説に有利な証拠にはなるべく、関わらないこと、近づかないこと、無視すること、そのように感じるのです。

矢田喜美雄の「謀殺 下山事件」(1973年)にも、そんな傾向を感じます。彼は、リアルタイムで事件を経験し、実質的に捜査にも参加された方ですから、当初は、それなりに、真実を追求されたのでしょう。

しかし、歳月の流れとともに、真実を追求するよりも、謎を解く過程を楽しんでいるように思えるのです。彼は、当初より他殺説でしたが、犯行主体が、当初の「左翼勢力」から、途中で「占領軍情報機関説」に変わりました。

「占領軍キャノン機関説」を追いかけるうちに、段々と、謎解きが、謎を呼び、その過程を楽しんでいる傾向に変化していったように感じるのです。

謀殺説を一冊の本にまとめたのが1973年です。事件が起きたのが1949年ですから、24年後、四半世紀の時の流れを経ている分けです。事件当時の緊張感も生々しさも消え、遠い過去の、想い出となり、物語となっていった、そんな気がします。

最近の、“下山事件平成三部作” 諸永祐司の「葬られた夏-追跡下山事件」、森達也の「シモヤマケース」、柴田哲孝の「下山事件最後の証言」は、事件後に生まれた世代が、「矢田喜美雄」の説をほぼそのまま引き継いでいます。

事件当時の、緊張感も、生々しさも、無縁な方達ですから、彼らの著作は、明らかに、大衆娯楽読み物になっています。たぶん、これが、“下山本”の最後だと思うのです。

もう、見たとか、聞いたとか、手伝ったとか、指示したとか、俺がやったとか、そんな生証人も、そろそろ、ほとんど、いなくなりました。

それにしても、佐藤一氏の“「下山事件」謀略論の歴史”は、読まなければヨカッタと後悔しているます。老後の楽しみを一つ無くしたようで、勿体ないことをしてしまって、、とても残念な気が・・・・・・・。

兎に角、死後轢断で、他殺説で、謀略説で、占領軍説で、キャノン機関犯行説の方々は、一度、佐藤一氏の“「下山事件」謀略論の歴史”をお手にとって下さい。


それでは、また、来週。

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1 コメント

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Unknown (さかいのぶよし)
2015-04-21 07:57:05
「下山事件」16回、労作。歴史に陰謀、謀略はでますが、生き証人は精神疾病や亡くなったが多い。満州事変、盧溝橋事件、ロッキード事件など騒いでも後のまつり。その時に浮かれたのは庶民、大衆です。角さん「逮捕」で小生も喜んだ記憶があります。仕組んだ、嵌めた連中は成功でした。
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