歩く・見る・食べる・そして少し考える・・・

近所を歩く、遠くの町を歩く、見たこと食べたこと、感じたことを思いつくままに・・・。おじさんのひとりごと

映画『セントラル・ステーション』で万引き犯へためらい無き銃弾の日常と通貨危機を考える

2015年01月20日 | 映画の話し
先日、いつものように録画しておいた『セントラルステーション』を観ました。

まず、驚いたのは、冒頭での“銃撃シーン”です。

エッ!ホントに撃つの?脅し?威嚇?と、思っていたら、殺さないでくれ!と命乞いをした瞬間、躊躇いもなく至近距離から銃弾が発射されました。

撃たれたのは、露天商から雑貨品?を盗んで逃走した、窃盗犯と云うか、万引き犯と云うか、たぶん貧しい青年。

撃ったのは、露天商から所場代を徴収し、露天商の商売を、それなりに守るマフィヤ?の男。たぶん撃たれた青年は死亡したようです。

無抵抗の万引き犯を、警察に引き渡すことなく、撃ち殺しても特に問題は無し、これが、この国の日常風景?

この惨劇は、坦々と、日常の一コマとして描かれています。作品のストーリーとは直接的に関わりは有りませんでした。“この国”の、“この街”の、このドラマの背景としてのワンシーンでした。

舞台のこの国は“ブラジル”で、この街は首都の“リオデジャネイロ”です。

ブラジル映画は初めて観ました。ホントに驚きです。ブラジルってそう云う国だったの?でした。いつ頃の作品と思ったら1998年制作でした。

ワールド杯が半年前の6月でした。16年前のブラジルが描かれているのです。ワールド杯の時も治安が悪いと云われていましたが、16年前のブラジルには驚きました。今でも、そんなに変わらないの?

兎に角、未だ、貧しいのです。何か、終戦後の貧しい時代を描いた、あのイタリア映画の、モノクロームの、あの『自転車泥棒』的な世界でした。

主人公は六十代と思われる独身女性で、文字の書けない人を相手に、駅頭で手紙など綴る代書屋をして暮らしているのです。

訪れる客は、自分の想いを伝えるために、いろいろな人生の断片を語り、その想いを手紙にしたためるのですが、その手紙、ほとんどが投函されないのです。

代書料金が1レアル、郵送代が1レアル、でも、彼女の勝手な判断で破り捨てられ、ゴミ箱に投げ捨てられるのです。主人公は、それほどの善人でもなく、それほどの悪人でもなく、かなり、平均的なブラジル人?

それで、対円1レアルの本日午前の為替相場は『44円30数銭』です。98年当時を調べてみたら、112円90銭でした。“98年”を境にしてブラジル経済は混乱していったのです。

作品は“98年制作”と冒頭に書きましたが、ちょっとだけ詳しく調べたら、ブラジル公開が1998年4月3日でした。

それで、通貨危機ですが、1997年7月からの“アジア通貨危機”98年8月からのロシア通貨危機、そして、“1999年1月”からのブラジル通貨危機とつながるのでした。

と、云う事で、この作品はブラジルの経済危機直前に制作されたのでした。と、云う事は、庶民の暮らしは、映画で描かれていたよりも、公開後は、もっと、もっと、厳しくなった?

と、云うことで、本日は社会科のお勉強でした。

でも、映画をキッカケとして、世界を、ちょっとだけ覗くのも、それは、それで、映画の楽しみ方なのです。

作品の話しは、次回とします。

たぶん、もう少し、社会科のお勉強は、続くかもね。


それでは、また。





コメント (2)
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