世界をスケッチ旅行してまわりたい絵描きの卵の備忘録と雑記
魔法の絨毯 -美術館めぐりとスケッチ旅行-
スケーエンの青
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映画「ヒトラーの忘れもの」を観て以来、ナチスの埋めた地雷が残っているかもしれないから、デンマークの海岸には一切近づかない、と宣言した相棒。じゃあ、スケーエンへ行くって約束は、どうなるんだよッ!
スケーエン(Skagen)は、デンマーク、ユトランド半島最北端の芸術家村。バルト海と北海に挟まれた漁村で、その茫漠とした空と砂丘、希薄な光と大気、村の独特の風土と文化、などの格好のモチーフに引き寄せられて、19世紀終わりから20世紀初めにかけて、北欧の芸術家たちが続々と集まった。
アカデミーの旧弊で硬直した伝統から脱却し、パリの印象派やバルビゾン派に見られる自然主義のトレンドを追う若い画家たちは、素朴なスケーエンに住まい、その自然や生活を主題に選んで、戸外制作を行なった。その流れはデンマーク画壇に転機をもたらしてゆく。
そんなスケーエン派の代表的な画家が、ペーダー・セヴェリン・クロヤー(Peder Severin Krøyer)。仲間うちのリーダー格でもあった。
以下、受け売りだが、アカデミーで絵を学んだ後、ヨーロッパを広く旅行。彼は生涯を通じて旅を続け、技術を磨きつつ、見聞を広め、異国文化から創作上の閃きを頂戴した。
一方、彼が描いたテーマは、当時、辺鄙な漁村だったスケーエンの光。パリを訪れ、印象派の洗礼を受けて帰国した彼は、夏のあいだスケーエンに滞在。制作しつつ、他の芸術家たちと交流を深める。
以来、夏になると、スケーエンの借家に住まって制作し、冬はコペンハーゲンのアパートで、依頼された肖像画を仕上げたり、外国を旅行したりした。
同じく画家だったマリーと、大恋愛の末に結婚。彼女はしばしば彼の絵に登場する。そんな関係も、長引く別居生活の後に敢えなく離婚。
この頃にはもう、彼の眼は徐々に見えなくなっていたらしい。晩年は眼は悪くなる一方で、ついに完全に失明する。精神疾患の発作を起こして、入退院も繰り返す。それでもなぜか楽天的で、最後まで絵を描き続けた。
クロヤーの絵のうち、最も有名で、最も人気があり、最も印象深いのは、黄昏の「青の時間(Blue Hour)」の光に青く染め上げられた、空と海の情景。万国共通の光学上の魔法なのだが、北欧の白夜の光のせいで、青は独特の青となって舞い降りる。濃いというよりは、淡い。瑠璃をミルクで溶いたような色。
この青のなかに幻想的に浮かび上がる、白い砂と白いドレス。こんな青のなかでは、人はもう、佇むなり漂うなり、とにかく青にひたるしかない。
こんなクロヤーの青に会いに、スケーエンの海辺と美術館まで行きたいわけ。
画像は、クロヤー「スケーエン南浜の夏の宵」。
ペーダー・セヴェリン・クロヤー
(Peder Severin Krøyer, 1851-1909, Danish)
他、左から、
「スケーエンの浜辺の漁師たち」
「夏の宵」
「スケーエン南浜の夏の日」
「薔薇」
「冬のオーンエーク」
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