セカンド・ライフ(続)

 
 それを我慢するのが普通なのだろうけど、無理に我慢せずに、これまでの進路とはきっぱりと縁を切ってしまった。そうできたのは、相棒の理解があったことに加えて、進学を志すにあたって自らに課した研究課題を、自分はもうなし終えたのだという未練のなさが、あったのだと思う。分かりやすく言えば、もうそこに魅力を感じることができなくなったのだ。

 で、しばらくふらふらしていたのだけれど、ようやくやりたいことが見つかった。絵を描いてみようと思ったのだった。
 
 最初はいろいろと手間取ったり、怠けたり、寄り道したりしたけれど、今では、少しずつコンスタントに絵の勉強を続けている。まだまだ下手糞で、自分でも呆れてしまうほどだが、真摯に地道に続けている。
 が、人生を画業に賭けるとか、絵をライフワークに据えるとかいった、切迫した画家意識のようなものは、私はすでに持つことができない。どんなに真剣に絵に取り組んでも、どんなに多くの時間を絵に費やしても、どんなに自分の生活を絵を中心に回しても、私はきっと、これからも、あのときのような切迫した気持ちを、絵に対して持つことはできないような気がする。
 
 ただ混じりけのない気持ちで絵を愛し、名もなく絵を描いて、余生を送りたいと思っている。

 画像は、ネステロフ「隠者」。
  ミハイル・ネステロフ(Mikhail Nesterov, 1862-1942, Russian)

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