チエちゃんの昭和めもりーず

 昭和40年代 少女だったあの頃の物語
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第90話 貸した35円

2007年07月16日 | チエちゃん
 夏休みも間近に迫ったある朝、一緒に登校した由美ちゃんが校門を入った途端に
 
 あっ、夏友代、忘っちゃ!

と言いました。

「夏友」というのは、正しくは「夏休みの友」といい、全ての教科が網羅された夏休み限定の宿題問題集のことです。この「夏友」代金の集金締切りが今日だったのです。チエちゃんは2・3日前に代金を持ってきました。

由美ちゃんがひどく困っている様子なので、

 お金、貸してあげっから

そう言って、チエちゃんは由美ちゃんに夏友代金35円を渡しました。
その日、たまたま少女マンガの発売日だったので、チエちゃんはお金を持っていたのでした。

 助かった、ありがと、明日 絶対に返すから

 うん、いつでもいいよ 
(心の声:明日絶対返してよ!マーガレット買うんだからサ)

次の朝、顔を合わせた由美ちゃんは

 あっ、チエちゃんごめん、夏友代忘っちゃ、明日必ず返すから

 うん、明日でいいよ 
(心の声:ああ、よかったあ。やっぱり、おこづかい持ってきて。マーガレット買えないところだった)

昨日一日我慢して、今日は絶対にマンガ本を買いたいチエちゃんは、由美ちゃんがお金を忘れた場合に備えて、貯金箱の中からお金を持ってきたのでした。


 ところが、その翌日由美ちゃんから何の言葉もありません。しびれを切らしたチエちゃんは

 由美ちゃん、あのサァ・・・・・、夏友代・・・・・

 ごめん、明日は絶対!

そうこうするうちに、とうとう夏休みに入ってしまいました。
夏休みの間、チエちゃんも35円のことは忘れて過ごしました。


 第2学期の始業式の日、宿題の夏友を提出した時、チエちゃんは貸した35円のことを思い出しました。きっと、由美ちゃんも思い出したに違いないと思っていたのですが、由美ちゃんは何も言いません。忘れてしまったみたいです。

もう1ヶ月以上経ってしまい、なんとなく催促できないチエちゃんがいました。


 あのサ、チエちゃんサ、大人になってもいつまでもこんなこと覚えてて、イジイジしてるくらいだったらサァ、どうしてあの時、2学期が始まった日に35円返してって言わなかったんだよ!


 あの、どなたか、チエちゃんにお金を貸して、まだ返してもらっていない方はいませんか? 利子をつけてお返ししますので、今すぐに申し出てください。