元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「グッド・バッド・ウィアード」

2009-09-10 06:21:36 | 映画の感想(か行)

 (原題:The Good, the Bad, the Weird)主役3人のキャスティング以外は、見るべきものがない映画だ。本作の元ネタである「続・夕陽のガンマン」(66年)は未見なので、それと比べて作劇面でどうアレンジされているのかは知らないが、随分と雑な作りなのは間違いない。

 1930年代の満州を舞台に、朝鮮半島から来たスゴ腕の賞金稼ぎと凶悪なギャングのボス、そして抜け目のない泥棒とが宝(?)の地図をめぐって組んずほぐれつの争奪戦を展開。それに地元の暴力団や支配者であるところの日本軍も絡んできて、ワケの分からないバトルに突入するという設定だけ聞けばとても面白そうだ。しかし、作り手はそのシチュエーションだけで満足してしまったフシがある。バタバタと活劇が場当たり的に続くだけで、大向こうを唸らせる骨太のドラマは最後まで生まれなかった。

 満州は表向きは“独立国”だったが、実は日本(関東軍)の傀儡である。同じように日本領であった朝鮮から流れてきた3人にとって、何らかの屈託や民族に対する思いなどを抱いて当然のはずだが、そんなのは完全に切り捨てられている。抗日戦線やその指導者などを絡めても物語に奥行きが出来たと思うのだが、それも無し。

 もちろん、これらの歴史的背景をしつこく描けと言っているのではない。そんなことをするとストーリーが鈍重なものになる。ただ、スパイスとして良い匙加減で挿入することも可能だったはずであり、それを怠ったのは作者の手落ちとしか言いようがない。

 ただし、主演の3人は実に良い。賞金稼ぎに扮するチョン・ウソンは今回もしつこいほどカッコつけている。ただしそれがサマになっているのはサスガだ。ライフル銃をクルクル回しながら日本軍めがけて単身突撃していくシーンは“そんなことしてたらスグに撃たれるだろ”との突っ込みをものともせず(笑)、見事に女性層(ウチの嫁御も含める ^^;)にアピールしたようだ。

 先日観た「G.I.ジョー」に引き続き悪役で登場のイ・ビョンホンも切れ味抜群だ。今後はこの路線を極めて欲しい。コソ泥役のソン・ガンホは、冒頭タイトルで一番先に名前が出ることからも分かるように、この映画の“主演”なのである(爆)。いつもながらの剽軽な存在感で場を盛り上げていた。ただし今回の日本の興行宣伝ではイ・ビョンホンばかり強調されていたのは、やはり三枚目キャラの悲しさか。

 監督は「反則王」などのキム・ジウンだが、展開は大雑把で一つ一つのシークエンスが必要以上に長い。アクション場面に目新しいアイデアが網羅されているわけでもなく、凡庸さを印象付けるだけに終わった。要するに、主役3人に特別の思い入れがある観客以外には、わざわざ劇場で鑑賞する意義は見出しにくいシャシンだ。

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