(原題:Aku Ingin Menciummu Sekali Saja )2002年作品。一般公開はされておらず、私は2004年のアジアフォーカス福岡映画祭で観ている。70年代にインドネシアで起こった独立運動リーダーの暗殺事件を扱ったガリン・ヌグロホ監督作。
開巻してフィルム撮りではなくビデオ作品であることが分かってガッカリしたが、中身は濃い。年上の女性(暗殺された運動家の娘)に対して淡い想いを抱く15歳の少年のエピソードを中心にストーリーが進むため、題材のわりには映画自体が重くならない。また、それによってテーマの重大性(市民生活のすぐ隣に権力による抑圧が存在すること)をスムーズに伝えることに成功している。
伝統芸能の指導をしている少年の父が登場する寓話的なシークエンスと、実際のニュース映像とを組み合わせることにより、舞台になったパプア州の現状をより具体的に提示するテクニックもかなりのものだ。それと興味深いのはその土地の風習。主な出演者を実際のパプアの人々が演じていることは、ここでは効果的である。民族音楽をフィーチャーしたサウンドも素晴らしい。