元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「バトルシップ」

2012-04-28 06:29:17 | 映画の感想(は行)

 (原題:Battleship)ハワイ沖で異星人軍団と日米連合艦隊が激突。突っ込みどころは多数あるが、大事なポイントでは筋が通っていて、結果的に面白く観られるという、独特の(笑)スタイルを持つSF活劇編だ。

 辻褄の合っていない点としては、まず主人公の若造が軍に入る前は実にいい加減な野郎で、入隊してからも生活態度はあまり変わらず、でも早々に将校になって艦長代理まで務めてしまうという噴飯物の設定が挙げられる。さらに、飛来するエイリアンの宇宙船団のうち通信用艦船だけが大気圏突入直前に人工衛星と衝突して(爆笑)、地球上に破片が飛散するというトンデモなモチーフが提示される。

 エイリアンは強力な広域バリアを張れるほどの科学力を持つが、各メカにはバリア装置は搭載されておらず、まさにノーガード状態。広域バリア内ではこちら側のレーダーが使えなくなるが、エイリアンも相手をあまり上手く探査出来ないという体たらくで、戦いは基本的に目視による砲弾の撃ち合いに終始する。まさに冗談みたいなシチュエーションだ。

 しかし、意外なところで背景への丁寧な言及が見られ、話自体は決して空中分解しない。まず、今回の敵は単なる“先遣隊”であり、長居出来るだけの装備も弾薬も持っていないという設定は出色だ。「インデペンデンス・デイ」のようにいきなり“本隊”が来てしまっては、よほどの“裏技”でも見つけない限り勝ち目はない。

 そして、時あたかも多国籍の海軍による合同演習の真っ最中であり、軍用艦はほんど外洋に出払っていて、バリア内に存在していたのはたまたま陸地近くにいた主人公の乗る艦船ほか2隻の護衛艦だけという御膳立てもよろしい。おかげでコンパクトな作劇が可能になった。陸上における“別働隊”の扱いも、戦いに加わるハメになった経緯が過不足無く描かれている。さらにはエイリアンは人間に近い格好をしているのだが、これは“彼らの星は地球と似た環境である”という前振りによって上手く説明されている。

 ピーター・バーグの演出はテンポが良く、SFXも実によく練られている。主演のテイラー・キッチュは脳天気を絵に描いたようなパフォーマンスだが(笑)、こういう類のドラマにはピッタリだ。それより注目されるのは、海自の護衛艦の艦長を演じる浅野忠信である。単なる“顔見せ出演”ではなく、堂々たる“準主役”。

 英語のセリフも難なくこなし、ハリウッド名物“えせ日本”が付け入る隙もない。特にレーダーが使えない艦内で、独自のアイデアにより索敵方法を編み出して皆の注目を浴びるシークエンスは見ものである。これからも仕事の幅を広げて欲しいものだ。女性兵士役でリアーナが出ていたが、こちらもけっこうサマになっている。一曲でも歌ってくれたらもっと良かったが(笑)。

 実を言えば、本作の真の“主人公”は軍人達ではない。タイトル通りの「バトルシップ」だ。しかし「バトルシップ」の意味は戦艦であり、今は世界中探しても現役の戦艦なんか存在しない。多くがイージス艦のような軽量級ばかり。しかし、この題名の意味が明らかになる終盤近くの展開は、大いに盛り上がる。まさに“野郎限定”の映画だが、こういうシャシンは好きだ。エピローグでは続編の製作も暗示されるが、次回作が作られるとしたら、今度はヨーロッパ戦線になるのであろうか(笑)。
コメント
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