元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「死霊の罠」

2012-04-29 06:57:55 | 映画の感想(さ行)
 88年作品。「魔性の香り」などの日活映画で秀作をいくつかモノにしている池田敏春によるホラー編。小野みゆき扮するニュースキャスターが司会を担当しているワイドショー「眠れぬ夜のために」は視聴者から送られてきたちょっときわどいビデオを紹介するという深夜番組。今夜も彼女は送られたビデオを事前チェックしている。

 その中に差し出し人の名前のないビデオがあった。それには若い女性を誘拐して山奥の廃屋に連れ込み殺害する場面が映っていた。作り物というにはあまりにもリアルなシーンの連続に不安を覚えた彼女は、テレビ局のスタッフ数人とその廃屋を捜し出して調査することになる。その途中、不審な男(本間優二)と出会い、彼女たちは怪しいとにらむのだが、犯人の魔の手は次々と彼女の仲間を血祭りに上げていく・・・・。

 なかなか勢いのあるグロい描写の連続で頑張ってはいるのだが、いかんせんオリジナリティに欠ける。廃虚の中で登場人物が惨殺されていく設定は「13日の金曜日」のサルまねだし、4回の殺人場面のうち2回が手口まで「13日」と一緒という芸のなさ。

 冒頭のナイフ切りつけるシーンは「センチネル」の、ドアと連動したボウガンが被害者の頭部を狙うという趣向は「オーメン/最後の闘争」の、それぞれコピーであることは論を待たない。さらに言うなら物語が半分もいかないうちにわかってしまう犯人は「サイコ」と同じだし、脈絡も無く出てくるモンスターは「エイリアン」からのいただきだ。

 ローアングルで走り回るカメラは「死霊のはらわた」のモノマネ、VTRとテレビ画面を小道具に使うあたりは「ハウリング」そっくり、そしてバックの音楽が「サスペリア」の類似品ときては、開いた口がふさがらない。

 脚本がなんと石井隆で、ヒロインの名前も「名美」なんだけど、いつもの石井脚本とは思えぬお祖末さ。加えて出演者のモタモタ演技で完全にシラけてしまう。当時は日本映画では珍しいホラー映画を狙ったのは良いが、もうちょっとしっかり作らないとね。
コメント
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