元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「電人ザボーガー」

2011-11-16 06:44:45 | 映画の感想(た行)

 中途半端な内容で、まったく評価できない。元ネタは74年~75年に放送されたTV特撮ドラマだが、私自身は何回か放映を目にした記憶はあるものの、思い入れは一切ない。だから劇場に詰めかけた“往年の特撮ヒーロー物のファン”とは違って一歩も二歩も引いた立場から観ることになるのだが、もしも私が原作をよく見ていたとしても、たぶん本作を面白いとは思わないだろう。とにかく作りがヘタ過ぎる。

 悪の組織シグマと警視庁に所属する秘密刑事の大門豊(および彼のパートナーのロボット・電人ザボーガー)との死闘を描くこの映画、何より製作コンセプトが煮詰められていない点が気になる。こういう荒唐無稽なヒーロー物を映像化する場合、方向性としてはキッチリと正攻法でやるか、あるいはイロモノに徹するか、その二つしかない(と、個人的には思う)。ところが本作はどうも往生際が悪いのだ。

 設定は何となくシリアス調なのに、筋書きとキャストの演技は“おちゃらけ”そのものである。しかも、おそらく作者が“絶対に面白いはずだ!”と信じてデッチあげたギャグの数々は、一つとして笑えない。その寒々しさはある意味完璧だろう(爆)。

 これはたぶん、送り手の笑いのセンスが不足しているだけではないと思う。前身で大門の生い立ちや思想信条などを力任せに描き、後半には中年になった彼の悲哀と開き直りをマジメにドラマツルギーの中心に置くという、不必要なシリアス度が笑いのリズムの足を引っ張っている。

 ハジケた展開を望んでいるならば、たとえばアメリカ映画の「ホット・ショット」とか「裸の銃を持つ男」のような、演芸番組調に徹すれば良かったのだ。あるいは大向こうを唸らせるようなウェルメイドなドラマにしたかったのならば、主人公側はもちろんのこと、空中に浮かぶシグマ城の造型やメカニズムをはじめ、敵役のディテールをとことん詰めるべきである。

 全体的に、子供の頃に原作のTVシリーズにハマり込んでいた層(今はオッサン ^^;)のオタク的興味だけを満足させるために作られたようなシャシンという印象を受ける。オリジナルからの流用と思われるテーマ曲や敵キャラのデザインを見るにつけ、出るのはタメ息だけだ。

 青年期の大門を演じる古原靖久と、中年になった主人公に扮する板尾創路は悪くない。なかなかの力演だ。しかし竹中直人や柄本明、渡辺裕之、木下ほうかといったベテラン勢の悪ノリは、見ていて辛い。山崎真実と佐津川愛美の女性サイボーグも頑張ってはいるのだが、いまひとつ存在感が足りない。

 井口昇監督の作品を観るのは初めてだが、CGの扱い方に手慣れているらしく、アクション場面はそれなりに盛り上がる。しかしながら“映画の外見”だけを取り繕うだけでは、良質なエンタテインメントを提示することは出来ない。個人的には“観なくても良い映画”であった。
コメント
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