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元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「アリ」

2011-08-06 06:51:47 | 映画の感想(あ行)
 (原題:ALI )2001年作品。ヘビー級王座に君臨した伝説のボクサー、モハメド・アリの生涯を追った実録ドラマだが、出来としてはつまらない。マイケル・マン監督がこの素材を取り上げたという事実だけですでに「終わって」いる映画である。

 寒色系の画面をバックにドキュメンタリー・タッチに物語を展開させるという彼の作風はハリウッドでは異色なのだろう。しかし逆に言えばそれは“素材への肉迫を回避して観客にすべて振ってしまう”といった責任逃れの態度とも言える。



 映画は64年に主人公が世界チャンピオンになるところから始まり、ブラック・ムスリムへの入信や懲役拒否等を経て、キンシャサでのフォアマンとの試合まで描いているが、その間にアリの内面についてほとんど何も語られず、事実を淡々と追うだけだ。これは“観客が素材について深く考えれば何らかのテーマが浮かび上がる”といったものではなく、単に作者がテーマを把握していないから映像的ケレンと“観客に考えてほしい”というポーズでお茶を濁してみたというだけのことだろう。

 そもそもこのネタでは過去に「モハメド・アリ/かけがえのない日々」というドキュメンタリーの秀作があり、今さら同じ題材をこういうタッチで取り上げる必要があるのかホントに疑問である。ボクシング場面の迫力は凄いし、ウィル・スミスも好演なのだが、映画の中ではそれらは完全に空回り。

 そもそもアリの人生はキンシャサで終わりではない。アトランタ五輪の開会式で久々に大衆の前に姿を現すまでにかなりの紆余曲折があったはずだが、なぜそれを描かないのだろう。個人的には、アントニオ猪木との試合を取り上げてほしかった(笑)。なお、ソウル・ミュージックを大々的にフィーチャーしたサントラ盤だけはオススメである。
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