先日、久々にクラシックのコンサートに出掛けてみた。ピアノのリサイタルで、演奏者は昨今意欲的な活動を続けている河村尚子だ。演目はバッハのコラールとベートーヴェンのピアノソナタ第18番、ブラームスの4つの小品、そして今年生誕200年を迎えたショパンのピアノソナタ第2番およびマズルカとスケルツォからの選曲である。
最初は“音色は明るいがタッチが軽いかな”と思っていたのだが、このピアニストは演奏が続くにつれて徐々にエンジンが掛かってくるタイプらしく、ベートーヴェンの後半の楽章あたりから安定感が出てきてピラミッド・バランスに落ち着いてくる。
コンサートのハイライトはショパンの2番だと思うが、私が感心したのはブラームスだ。陰影に満ち、ノスタルジックな雰囲気に溢れるこの曲を実に滑らかに弾きこなしている。この作曲家の真骨頂はオーケストラ物よりも室内楽曲や器楽曲にあると思っているが、決して重たくならずに哀愁に満ちた旋律を浮き彫りにしており、曲想の奥深さを伝える良好なパフォーマンスであった。
ただし、もうちょっと一般にアピール出来るような明るい曲を持ってきた方が楽しめたと思う。ショパンの2番は有名なナンバーだが、葬送行進曲で知られるように沈んだ曲だ。ベートーヴェンにしても、18番は地味である。同じ時期のベートーヴェンの作品ならば17番とか21番のようなポピュラーな楽曲を取り上げて欲しかった。
それにしても、会場になった福岡銀行本店大ホールは客席の階段が急勾配である。高年齢層の観客にとっては辛いのではないかと、いらぬ心配をしてしまった。
なお、河村は色白のファニーフェイス。オジサン層にウケそうなルックスではある(笑)。技巧面では確かなので、もしも彼女の新譜が出たらチェックしておきたい。