元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「カルテット」

2010-11-19 06:29:34 | 映画の感想(か行)
 2001年作品。作曲家の久石譲が映画監督に初挑戦した映画。音楽を通じて人生を切り開こうと奮闘する4人の若者を描く。正直言って、久石譲の監督としての腕は大したことがない。ドラマが未整理の上に上映時間が長く、クライマックスに至るくだりも段取りが悪く盛り上がらない。

 ただし、村上龍だの石井竜也だのといった過去に異業種の者が映画に手を出した例と比べるとかなりマシ。少なくとも“映画”にはなっている。また、音楽関係者だけに演奏シーンの処理は抜かりがない。

 音大出身の主役4人を演じるのは袴田吉彦、桜井幸子、大森南朋、久木田薫だが、久木田を除く3人がまったくの素人。しかし特訓の成果か、本人達が実際に演奏しているかのように見せているのはさすがである。

 個人的には彼等が練習もかねて日本中のイベント会場や公共施設をドサ回りするシークエンスが好きである。そこで「キッズ・リターン」や「HANA-BI」といった久石の代表作が弦楽四重奏バージョンで演奏されるが、これがなかなかの聴き所である(特に「となりのトトロ」のテーマが流れる場面は素晴らしい)。

 異業種監督としてのハンデを、愚直なまでに自分の“得意分野”に専念することにより何とかカバーした作品ということになろうか。映像も美しく、まあ観て損のない映画ではある。
コメント
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