元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「行きずりの街」

2010-11-23 07:10:15 | 映画の感想(や行)

 呆れるほどつまらない。阪本順治監督は出来不出来の幅が大きい作家だが、本作は明らかに出来が悪い部類だ。原作は志水辰夫の同名小説ながら、私は読んでいないのでこの映画が小説を正確にトレースしているのかは知らない。だが、この映画版を観て原作をチェックしようと思う観客は少ないだろう。それほど本作のヴォルテージは低い。

 かつて教え子との結婚が原因で都内の名門女子高を追われた元教師の主人公は、その妻と別れた後、現在は故郷の丹波篠山で塾の講師として働いている。そんな中、以前教え子だった女生徒の祖母が危篤になり、上京したまま行方不明になっている彼女を探すため、12年ぶりに東京へと向かう。やがて彼はこの失踪事件が、自分を教職から追放した勢力が絡んでいることを突き止める。

 とにかく、始まってから話の全貌が見えてくるまでが無茶苦茶に長い。だいたい、上京してから頻繁に会うクラブのママが元の妻であることが明らかになるのが中盤近くになってからだ。引っ張る必然性もなく、それまでの思わせぶりな態度は何だったのかと言いたくなる。

 そしてようやく見えてくる事件のあらましも、全然大したことがない。単なる学校運営に関する利権争いだ。主人公自身があまり利口ではなく、犯罪に荷担している連中にも知恵が回るような奴は見当たらない。程度の低い奴らが勝手にバタバタやっているとしか思えないのだ。

 しかもこんなに派手にやり合っていながら、警察の影すらない(呆)。結末なんか尻切れトンボでしかなく、明らかに映画を作ることを放棄したような体たらくである。丸山昇一の脚本とも思えない。

 主役の仲村トオルをはじめ、小西真奈美、窪塚洋介、石橋蓮司、菅田俊、谷村美月、江波杏子と多彩な面々を揃えているにもかかわらず、どれもこれもテレビの2時間サスペンスのようなクサくて表面的な演技ばかりだ。ひょっとしてギャグでやっているのかとも思ったが、それにしては笑いが少ない(爆)。元教え子役の南沢奈央はヒドい大根だし、佐藤江梨子に至ってはヴァラエティ番組のノリで演技をさせている。

 良かったのは仙元誠三による撮影ぐらいか。ラストに流れる下らないエンディング・テーマ曲も相まって、めでたく本年度のワーストテン入り決定である。観る価値はない。
コメント
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