元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「海は見ていた」

2007-12-18 06:51:33 | 映画の感想(あ行)
 2002年作品。江戸・深川の岡場所を舞台に、遊女たちの群像を描く、黒澤明の遺稿を映画化した人間ドラマ。原作が山本周五郎で脚本が黒澤だから、話自体はもちろん面白い。ただし映画全体としては凡作。何より熊井啓の演出がダメ。

 ドラマ運びが平板極まりなく、ここ一番の馬力がない。そして映像に全然深みがない。腰高なカメラワークと凡庸そのもののカット割り。舞台になる深川の岡場所の猥雑さもまったく出ていない。大々的に導入されたCG合成もすべて空振りで、画面の安っぽさを助長する(本格時代劇にCGは不要だと思う)。元よりこの監督は当時すでに完全に“終わっていた”と思うのだが、それにわざわざメガホンを担当させたプロデューサーの意図がさっぱり見えない(もっと他に人材がいただろうに)。

 それでもキャスト面は悪くなく、姐さん格の遊女を演じる清水美砂の気っぷの良さ、御隠居役の石橋漣司や女衒役の奥田瑛二など手堅い仕事ぶりだ。特に若い遊女に扮する遠野凪子の頑張りには目を見張らされる(脱いでるしー ^^;)。まあ、最近はあまりスクリーン上で彼女の姿を見ないのは残念だが。

 しかし、彼女をめぐってドラマが盛り上がりそうになると意味もなく鳴り響く松村禎三の音楽が雰囲気をぶち壊す。この昼メロみたいな扇情的でクサい旋律はどうにかしてほしい。特に見せ場となるべき遠野と永瀬正敏のからみのシーンは、BGMのせいで感銘度が80%は低下していると思われる。ホントに製作者は何をやってたんだろうか。
コメント
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