(原題:Efter brylluppet)けっこう評判になっている映画だが、私は評価しない。監督はデンマークの女流スザンネ・ビアで、私は彼女が過去に撮った「しあわせな孤独」を観ているが、これが愚にも付かない作品。とにかく“あり得ない登場人物たち”が“あり得ない筋書き”の中で勝手に動き回るという、まるで話にならない出来だった。本作は物語自体はまあ“あり得るかもしれないストーリー”には仕上がっているが、語り口や描写力がまるでなっていない。落第だ。
主人公はインドの孤児院で働くデンマーク人。ある日、彼のもとに本国の実業家から“寄付金をやるから、一度会いに来い”との申し出が届く。不審に思った彼だが、運営面で苦しい孤児院のためならば背に腹は替えられず、やむなく帰国。実業家に会うやいなや娘の結婚式に出席させられると、実業家の妻は主人公が若い頃に付き合っていた女性であり、当日の新婦は彼女との間に出来た娘だということを知らされる。その裏には実業家が抱える重大な問題があって・・・・といった、一種の因縁話が滔々と語られるが、なるほど筋書きだけを追うとシビアな話で、登場人物の内面を上手く捉えれば傑作にもなりそうなネタである。
しかし、物語は見事なほど盛り上がらない。何よりこの監督は各キャラクターの心理を描出することが出来ないのだ。説明的なセリフを吐かせ、深刻ぶった表情のアップを長回しで映し出し、あとは心象風景みたいな自然や静物のショットを延々と流す・・・・このパターンの繰り返しである。
困ったことにこの女流監督は、こういうルーティンワークみたいな“やっつけ仕事”で内面描写が完了すると思い込んでいるらしい。そして足りない部分は俳優の存在感に丸投げ・・・・と、まるでテレビ屋出身のディレクターが適当にカメラを回しただけの最近の邦画みたいではないか。一番大事なはずの、劇中の実業家の心境というものにも全然説得力がない。
そもそも作者はこのストーリーに思い入れもないのだろう。何か辛口の題材を扱えばそれで評価されると勘違いしている。深刻なはずのインドの孤児院の状況も、通り一遍の描き方しかしていない。主演のマッツ・ミケルセンはじめキャストは熱演だが、監督がいい加減なのでみんな上滑りしている。
それにしても、実業家の“秘密”を堂々と開示した予告編にはびっくりしたものだ(爆)。